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欲深な私(終わりが見えない…ので中編)

 ICUでの看護師さんの怖い言葉を聞いた後の私は従順。
 この時既に、絶対安静を言い渡されていた私は、
「動くな。一歩も歩くな。」
と、言われていたのでひたすら安静に務める。
 目だけキョロキョロさせても見えるのは色んな装置とディスプレイ。
 どれこもこれもピッピとかプーとか音を出している。

 この時思ったのが、何で気道だけは1本なの?という疑問。
 鼻の穴も、肺も2個あるのに、なんで途中の管だけ1本なの?大事な器官だから2個あるんじゃないの?1個駄目になっても大丈夫なようにサ。
 気管が2本あればな~などと考えていた。
 しかし、いつまでもこのスマホ無しTV無し、ただ寝てる(?正確には座っている)だけ状態を続けるわけには行かぬ。せめて一般病棟に移りたい。
 そう思って、様子を見に来たDrに、
「3日後には退院したい。」
と、宣う。
 Drは「ふふん」と鼻で笑うと、
「はいはい。治ったらね。」
と、いいつつも、顔には「無理だね。」と書いてあった。
 実際、発作がかなりの頻度で出ていたので、発作が起きる度に看護師さんを緊張状態に陥れていた。「ヤバいんじゃね?意識無くしたら即処置!」ぐらいの勢いで見守られていた。

 気管が塞がり気味なだけで、喉は痛くなかったのだが食事はほぼゼリー。
 お魚や、なすの煮浸しまでもがゼリーで再現されている。
 見た目とのギャップもあいまって、不思議な食事だった。

 頭の中はとにかく、このICUからの脱出を図らねばならない。ここに長居は不要という思いのみ。そして、誰かが見に来る度「一般病棟へ移りたい」と訴える作戦に出る。
「ねぇ、無理かな。一般へ移っても大人しくしてるからサ。」
「歩いたりしないからサ。」等々しつこく食い下がった。
 そしてようやく「絶対歩かないこと。トイレも看護師を呼んでポータブルで済ませること。とにかく動かないこと。」を条件に一般病棟へ移してもらえることになった。なんとかICU脱出成功。
 絶対歩いては駄目とのことで移動は看護師さん付きの車椅子。
 点滴スタンドと共に移動。手には何かのセンサーがはめられ、発信器らしきものが入っているポーチを首からぶら下げる。
 とにかくこれで、スマホとTVのある世界へ戻った。絶対安静だけど。

 ただ、発作回数は相変わらずで、発作が起きる度、同室の患者さん達を不安に陥れていた。本当に「○ぬんじゃないか?この人」レベルの状態に陥るので、「代わりにナースコールしてやるべきか否か」とカーテン越しだがビリビリとした緊張が伝わって来た。

 暫くすると、また私の次の要求が始まる。
「ポータブルトイレ嫌なんだけど。普通のトイレ使いたいんだけど。」
「だめ、絶対安静と言われてるでしょ?ポータブルで我慢して。」
という攻防を繰り返すこと数回。ついに、
「Drが良いって言ったらね。」
と言ってもらえた。
 Drに普通のトイレ使いたいと訴えるも「歩かないという約束だった」と言われるが、しつこく粘る。そうしたら、
「看護師を呼んで、車椅子で連れて行ってもらうのならOKしよう。」
と言ってもらえた。
 この時の私の目標は、一人でトイレに行くこと。まだまだ道のりは遠い。

 暫くは大人しくしていたが、トイレの度に看護師を呼ぶのは何だか申し訳無い。やはりトイレくらいは気兼ねなく一人で行きたい。
 車椅子でトイレ送迎してくれる看護師さんに囁く。
「いつも来てもらって申し訳無いから、そろそろ一人でも大丈夫なんじゃないかな。」
「別に大丈夫だよ、いつでも呼んで。」
とのお返事。
「いや~でもそろそろ一人でも…。」
「歩くなって言われてるでしょ?」
「そうなんだけど、コッソリだったら分からないよね?」
と言うと「う~ん」と唸った。絶対に、OKとは言えない立場だろうから、それ以上は私は何も言わなかった。もう許可を取ったも同然!ヨシヨシ。

 後編へ続く。ちゃんとタイトルに着地できるかな。
 あ、タイミング的に後編は来週になります。
 また来週~♪

 

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