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narukuni
新手の営業
スーパーでレジ待ちしていた時のこと。
列の最後尾に並んでいると、背後から自信なさげなか細い声が聞える。
途切れ途切れにしか聞えてこないが、どうやらビールの実飲販売をしているようだ。
(そんな、蚊の鳴くような声で営業しても、お客さんには届かないよぉ。ビールはもう少し威勢良く、声を張らなきゃ駄目なんじゃないかなぁ。)
と、心の中で思いつつそのモスキート営業を聞いていた。
レジの列は一向に進まない。私の背後からは相変わらずのモスキート営業の声。
(ああ、だから、もっとしっかり声を出さなきゃ誰も気づいてくれないよ…。)
と、心配が勝って声のする方をつい振り返ってしまった。
しまった…、目が合ってしまったのだ、小声の売り子さんと。
か細い声を発しつつ、しっかりこっちを「子犬のような目で」見てくる。
タスケテ…と言わんばかりの視線で。
(あ~。分かりました。私の負けです。)
と、心の中で呟き、その売り子さんの元へ。
「一箱頂きます。」
見事、営業に引っかってしまった。
もしかして、これは新手の営業なのではないかと思った出来事でした。