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未だ語られる事の少ない超話題作「オッペンハイマー」を速攻レビューします。【ネタバレ】

オッペンハイマーは、絶対見るべき映画という事は断言できます。


長崎・広島の被爆シーンは出てこない。

長崎、広島のシーンは全く出て来ません。
しかし、間接的に触れるシーンは出て来ます。
尋問官が、長崎、広島の死亡者数を問い詰めるシーンやオッペンハイマーが被爆者の映像を見るシーンは出て来ています。
そこからオッペンハイマーの精神が動揺して行きます。

カール・ウェルヘナー・ハイゼンベルクとの出会い。

ドイツの科学者としてカール・ウェルヘナー・ハイゼンベルクが出て来ます。
オッペンハイマーが、ハイゼンベルクに出会った事で、物語が動いていきます。
ただドイツのハイゼンベルクは、ナチスの原爆には否定的でした。
つまりは、原爆の開発をサポタージュしていました。
しかしオッペンハイマーは、ハイゼンベルクがいる事でナチスの原爆開発が進んでいくと考えてしまいます。

オッペンハイマーと赤狩りのポリフォニー

1948年からアメリカで「赤狩り」が始まります。
赤狩りとは、政府が国内の共産党員およびそのシンパ(sympathizer:同調者、支持者)を、公職から追放することです。
戦後も米政府は、オッペンハイマーに水爆の開発を期待していました。
オッペンハイマーは、核兵器を通常爆弾のように使われる事を恐れ、水爆の開発に協力しない姿勢を示します。
水爆開発に後ろ向きだったオッペンハイマーは事実上の公職追放となります。
そして赤狩りの対象とされていったのです。

転機となったのは、J・F・ケネディの台頭と赤狩りの終焉

1954年、違法な手法で「赤狩り」を進めるマッカーシーに対する批判キャンペーンが起こった事を切っ掛けに、国民の間にもマッカーシーに対する批判が高まります。
政府、軍部内にもマッカーシーに対する批判が広がり、不信任を突きつけられ、マッカーシズム=アメリカによる赤狩りは終わりを迎えました。
その当時台頭してきたケネディが、オッペンハイマー支持に周わった事も大きな要因でした。

映画最高の見所は?

エミリー・ブラント演じるキティが、水爆問題で対立したエドワード・テラーに対し口を歪めるシーンがあります。
キティはオッペンハイマーに対して、常に赤狩りと戦えと言っていました。
彼女の勝気な性格が見えたシーンと言えます。
エミリー・ブラントの演技も見事です。

まとめ

映画の中では様々なポリフォニー(対立)が描かれています。
政府とオッペンハイマーとの対立、学者間での対立、夫と妻の対立。
幾重にも積み重なるポリフォニーが、作品に深みを与えています。
本来オッペンハイマーは、統一場理論や超弦理論の 研究に挑戦すべき科学者でした。
しかし、兵器開発に携わった事で精神を病み、研究者生命を絶たれてしまいました。
兵器の開発に関わった科学者が精神を病むというのは、普遍性のある事象なのかもしれませんね。


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