SKETDANCE 「カイメイ・ロック・フェスティバル」が好きという話
今さらながらアニメを全て見たうえで、一番心に残った話をどうしても言語化したかった
漫画は途中まで読んでいたけど実は最終巻まで読めていない。。それでも漫画もアニメもこの話がとても好き。この好きという気持ちを、なぜ好きなのか、どういうところが好きなのか。どうしても言語化したくて、完全に自己満足の世界ですけど、自分なりの解釈とこのお話の魅力を書き連ねたいと思います。語尾の乱れは大目に見てください。
簡単なあらすじ
「SKETDANCE」とは
2007年から2013年までジャンプで連載されていた漫画。スケット団という学校のお助け団のような部活でボッスン、ヒメコ、スイッチの3人が人助けや捜し物といった依頼をこなしながら学園生活を送るという学園漫画。
今回ピックするのは漫画6巻の49~51話、アニメでは16.17話に収録されている「カイメイ・ロック・フェスティバル」というお話し。
あらすじとしては校長先生による熱い想いで学校内行事として開催されることになったロックフェスティバル。有志の団体を募り、スケット団もそれぞれ別のバンド団体として参加することが決まり練習に励む。
そんな中ベースを1人音楽室で練習していたボッスンに1人の女子生徒が訪れる。
「チューニング!」と後ろから声をかけたのはヴァイオリ二ストの杉崎綾乃。
彼女は音楽の道を志しドイツ留学することを考えているが、自分に自信が持てず踏みとどまっている。
今回の話はそんな杉崎綾乃とボッスンの、少し1歩前に踏み出す話。
[主題歌]について
様々なアーティストにもカバーされたthe pillowsの楽曲。
2019年にはアクエリアスのCMソングにも使用されている。
私自身この曲に出会ったのが、ジャンプ本誌でこの回が掲載されたときのこと。漫画の中で楽曲フルの掲載なんて初めてのことで、
YouTubeで検索して聞いたときに思わず3分間一心に聴いていたのを覚えている。
そのころから受験や部活や辛い時の局面には必ず心の中で流れている大切な楽曲。
[本題]
10年以上の前の作品であるし1からこの回を話そうとすると冗長になってしまうので、見た上での感想になります。
このエピソードは読者が選ぶ人気エピソードNo.1にもなっているが個人的にも他の話とはまた違った魅力がある...。
アニメ版ではまるで映画のように構成と見せ方になっている。
序盤は楽器も音楽も全く知らないボッスンがベースを触り、杉崎と話しているうちに音楽の魅力に触れていく。
実力が足りないと足踏みし、どうしても自分に自信が持てないという彼女をボッスンがひと押しするもその想いはまだ本心には伝えられていない様子。
起承転結のいわゆる「転」ではスケット団のそれぞれが参加する予定だったバンドが解散/欠席することになってしまうが、
ボッスンの一声によりスケット団のバンド、「The Sketchbook」が結成され出演することになる。
ここで普段のスケット団とは違うのが、ボッスンではなく「藤崎佑助」として杉崎を助けたいと動いたところ。
この作品は学園のお助け団として依頼を受け、依頼人のために動く、というのがベースだが、今回の話は依頼や悩みを受けたという訳ではない。
杉崎もプロの「杉崎綾乃」ではなく高校生としての「杉崎彩乃」、ボッスンもスケット団のリーダーではなく「藤崎佑助」として音楽室で対面するのは、
等身大の高校生が悩みながら、でもどうしたらいいのか分からずもがくリアルな姿を描いている。
作中のBGMの使い方も細かく指定されており、局面が動くシーンには流れているが、基本的に会話のシーンではあまり流れていない。
というのも、楽器の音を聴かせる、という理由もあるだろうが、視聴者が場面によりのめり込めるように抑えているように捉えられる。
ボッスンと杉崎が音楽室で話すシーンは夕焼けのライティングが常にかかっており、留学を迷っている杉崎と彼女を応援する明確な手段を持ち合わせていないボッスンの迷いが、光と陰の対比で描かれているようだ。
迷う杉崎をボッスンは励ますが、その言葉の本意が届くにはどこか1歩足りていない。
そんな中ボッスンは杉崎のヴァイオリンを聴き、本物の「プロ」を前に心を奪われる。音楽の魅力に生で触れ、音楽は人に勇気を与えることを知る。
その後の励ますシーンで2人を舐めるようなカメラシーンは普段の作画ではあまり使われない見せ方で、2人の特別なシーンを演出している。
そして自身が元々組んでいたバンドが解散し自分にできることは...その答えを伝えるためステージに立つことを決める。
「下手っぴでもあたしらのリーダーはあんたしかおらへん。」
自分の未熟さに向き合い、そんなリーダーに何の迷いもなくついていくヒメコとスイッチの信頼関係はたったワンシーンでも十分に演出されている。
いつも対立しているスケット団と生徒会という構図も、今回は杉崎さんに聴かせたいという一心でバンドを結成したので、
藤崎佑助は正味立場とか関係なく、生徒会に興味をもっていないのもまた、本気感が伝わってくる。
本人は知らないだろうが、生徒会長の安形は音楽室での二人のやり取りをみているのできっといつものスケット団とは違う、
藤崎佑助がやりたい「本心」を見抜いているのだと思う。
「気づかせてくれたのはあの子だからさ、ありがとうって気持ちを返したいんだ。下手くそでも。」
その返しに「そうか。来ているといいな。」というのは温かいなと感じる。
ライブ場面を言葉で説明するのは蛇足なので省略。
以上のライブシーンまでの描写が丁寧で、日常では描かれていないボッスンの一面が見られる。
こういったいつものスケット団とは違う、ボッスンと杉崎を囲む空気感、夢を追いかけることの難しさ。きっと大人には分からない、あるいはもう忘れてしまっている小さな等身大の葛藤が、この回のテーマになっているのだとぽつぽつと考える。
きっとその背中を押してくれたのが「Funny Bunny」なんだなと、曲を聴くたびに口ずさみます。
[原曲pv]