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嫌いだった先輩が、好きになるまでの毎日  嫌悪から好意へと変わる心理のメカニズム

先日、相談された事例です。

職場の先輩は、とにかく厳しい人。毎日、些細なことまでダメ出しされて、正直ムカつくし怖い。それでも仕事だから無視もできず、仕方なく飲みに誘われたら断れない日々が続く。最初は嫌々付き合っていたけれど、飲みの席で見せる先輩の姿は、仕事中とはまるで別人だった。

仕事では完璧主義に見えた先輩が、実は自分も失敗を恐れて努力していること、厳しくするのは自分を成長させるためだということをぽつりと語る。意外と気さくで、後輩思いな一面を知るたびに、「この人、ただ怖いだけじゃない」と感じ始める。

毎日少しずつ打ち解けていく中で、先輩の厳しさに隠れていた優しさに気づき、気づけばその人をもっと知りたい、もっと一緒にいたいと思うようになる。


心理学的にいくつかの要素が絡み合っています

  1. 認知的不協和と感情の変化

最初は「嫌い」という感情が強い状況ですが、毎日の飲み会などで接触を重ねることで、相手に対する認知が変わります。自分の中で「嫌い」という感情と「飲みに行く」という行動が矛盾し、脳がその不協和を解消しようとする結果、「実は悪い人ではないかもしれない」と感じ始めます。

2.単純接触効果

心理学では、頻繁に接触する相手に対して好意を抱きやすくなる現象を「単純接触効果」と言います。毎日顔を合わせ、さらに飲みに行くなどでプライベートな時間を共有することで、相手の存在が馴染み深くなり、好意を持ちやすくなるのです。

3.ギャップ効果

職場で厳しく接する先輩が、飲み会などのリラックスした場面で優しさや気遣いを見せると、ギャップが強調され、その魅力に惹かれやすくなります。このギャップが「普段は怖いけど、本当はいい人かも」という特別な感情を呼び起こします。

4.助けたい・認められたい欲求

相手が厳しい分、その先輩に認められると「努力が報われた」と感じ、達成感や安心感が得られます。これは、人間が持つ「他者から承認されたい」という基本的な欲求が満たされるため、好意に変わる可能性が高くなります。

5.共感と弱さの共有

飲み会などでは、お互いの弱みや悩みを共有する場面が増えます。これにより、先輩が厳しい理由や人間味を理解し、共感が生まれます。共感は相手への信頼や安心感につながり、好意を強めます。

最初の「怖い」「ムカつく」といった強い感情は、相手に対して無関心ではなく、むしろ強い興味の表れでもあります。その中で、接触やギャップ、共感が積み重なることで、相手への評価がポジティブに変わり、恋愛感情が芽生えるのです。このような心理的プロセスは、いわゆる「ツンデレ」的な関係性や物語に多く見られる、共感しやすいテーマでもあります。

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