「文字が怖い」という感情に名前はあるのか

みなさんは人から理解が得られないけど何故か恐怖心を抱いてしまうというものはありますか。

高いところが怖いとか虫が怖いという感覚はわかりやすいかもしれませんが、片栗粉恐怖症とか電話恐怖症とか、世界には特定のモノや状況を怖がったり、不快に感じる人は多いみたいです。

私も思い返してみればそれを目にすると妙にドキドキしたり、視界に入れたくなくてその場から離れたくなるというものがあります。

それが「文字」です。

こう言ってしまうと「いや、note書いてるじゃん」とツッコみたくなりますよね。語弊がありました。より適切にいうならある特定の状況で見る文字に妙な恐怖心を抱いてしまうのです。しかし自分でもどうしてそれが怖いのがうまく説明できない。

別にそれが原因で生活に支障が出てるわけではないけれど、幼いときから時々湧き上がるこの感情はなんなのか向き合いたい。どこからどこまで恐怖心を抱くのか確認したい。セルフで暴露療法をやってみよう!ということですね。あと身近に共感してくれる人がいないのであわよくばそんな人を見つけたい。

話は変わりますが、最近温泉に行きました。
温泉って良いですよね。やっぱり時々は忙しい現実を少し忘れて、広いお風呂で足を伸ばして入ってゆったり過ごしたい。

わくわくと脱衣所からドアを開ける。
シャワーを浴びて、まずはどのお風呂から入ろうか思案する。ジャグジー風呂もあるし、露天風呂もあるらしい。あそこにあるお風呂は何だろう、と目を凝らすと少し体がギクリとする。プレートにはゴシック体で「マグネシウム風呂」の文字。年季を感じる施設ではあるが、これ自体は何の変哲もない文字列である。けれど何故か目をそらしたくなり、そろそろとそのプレートが視界に入らないように湯につかる。

外に続くドアを開けようとすると、その上部には看板があり、赤く大きな丸ゴシック体で「露天風呂」の表記。背中にゾワゾワしたものを感じながら少し早足で進んでいく。

お風呂を出た後髪を乾かそうとすると、鏡の横には張り紙があり、創英角ポップ体で「ドライヤーは髪を乾かすために使いましょう!体には使わないでください!」みたいなことが書いてある。私は「分かった!分かったから!」と焦燥感に駆られながら髪を乾かす。

うーん。
最近感じた文字恐怖体験談を挙げてみたのですが、この文章では全然伝わりませんね。

ネットで「暴露療法」で調べると、程度が低いものから高いものに徐々に慣れさせていくらしいです。高所恐怖症だったら、まずは実際に高いところに登るのではなくて、映像で見るとか、低いものから試してみて少しずつ高さを上げるとかになるのでしょうか。いきなりスカイツリーは怖いからまずは近くの丘を登ってみよう!みたいな。

言い換えるなら、普通の人からすると先ほどの温泉経験談は近くの丘であり、スカイツリーに当たる表現があれば、もっと共感してもらえるかも?
私自身の暴露療法としては完全に逆行してる気がしますけどまあまあ。

想像してください。
あなたは山の中を歩いている。
鬱蒼とした薄暗い道を進んでいくとその先にぽつんと木の看板が立っている。相当の時間を外で放置されていたのだろう、板は黒ずみひび割れ、文字はかすれている。
そこにはこちらを睨みつけるような目のイラストと共に「この先キケン 入るな!」の文字が殴りつけるように書かれている。

これは大分怖いんじゃないでしょうか。
まず、入るな!って命令形が怖い。
あと何か想像させてしまうのも恐怖ポイント高めですね。この先崖があるのか、それとも熊でも出るのか。昔何か事故があったのかなとか。考えたい訳じゃないのにどんどん想像が広がってゾワゾワしてくる。
暗い森っていうシチュエーションがまず怖いだろうって?それはそう。

もう1つ考えました。
あなたは廃墟で肝試しをしようとしている。
懐中電灯を持って恐る恐る進んでいくと扉がある。軋むドアの音にビビりながら、足下を照らすとリビングだろうか、そこそこ広い空間に出たようだ。足下に向けていた懐中電灯を前に向けるとそこには…

た す け て

白い壁には褐色のかすれた線でそう書かれていた。


みたいな。
「こんなの特殊な恐怖症じゃなくてただのホラーじゃん。」
「『文字が怖い』じゃなくて『怖い文字』じゃね?」
て感じですが、要素を分解していくと私が何に恐怖を抱いているのかのヒントになりそうです。私の経験を振り返っていくと、

  • 初めて来た場所(未知、何があるかわからない)

  • 古い(場所が古い、書かれてる紙がボロボロ、文字がかすれている等)

  • 狭い場所(トイレ等ひとりで向き合わなくてはならない状況)

  • 「禁止」「危険」「○○するな」のような不安を煽る表現

ここら辺が合わさると恐怖度合いが上がる気がします。温泉の恐怖体験は上2つが当てはまりそう。服を脱いで無防備になるので、そういう意味で不安を感じるというのもあるかもしれません。このように分解していくと、私が抱いていた恐怖って人間が普遍的に抱くものが複合されたものなのかもしれない。それでも創英角ポップ体を怖がるのは自分でもどうかと思いますが。

#初投稿 #エッセイ #ホラー #高所恐怖症


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