SF小説 「月の影から」
2100年、月面基地アルテミス。地球の青い姿が地平線に沈もうとしていた。
「通信が途絶えて3日目だ」
基地長の山田美咲は、窓の外を見つめながらつぶやいた。突然の小惑星の衝突で、地球との通信システムが壊れたのだ。
「酸素の備蓄はあと2週間というところです」
副長の張明が報告する。30人の隊員たちの顔には不安の色が濃い。
美咲は決意を固めた。「脱出ポッドを使って地球に帰還する。全員は無理だ。くじ引きで10人を選ぶ」
抽選の結果、美咲は残る側となった。
出発の日、10人を見送った後、美咲は残りの隊員たちを集めた。
「私たちにはまだチャンスがある。月の南極の氷から水を作り、水耕栽培で食料を。そして壊れた通信機を修理する」
懐疑的な表情の隊員たちだったが、美咲の言葉に少しずつ希望の光が灯り始めた。
「人類は逆境を越えて月に来た。ここで諦めるわけにはいかない」
それから1ヶ月。極限の努力の末、彼らは通信機の修理に成功。地球からの救助隊を待つ間、自給自足の体制を整えていった。
救助隊が到着したとき、地球は驚愕した。月面基地アルテミスは、想像以上に進化していたのだ。
美咲は笑顔で言った。「これは終わりじゃない。新たな月面生活の始まりよ」
地球の青い光が、また昇ってきた。