【冒頭から暴投#009】サンタが消えた日
サンタクロースを信じていた頃の恥ずかしい思い出です。
この頃から、ネタに困ると僕の思い出や経験を切り売りする事を覚えた記念すべきコラムとも言える
子供の頃の事。
毎年、クリスマスイブの夜には、サンタクロースが我が家に来て僕達兄弟にプレゼントを届けてくれていた。
クリスマスの数日前から自分が欲しいものを紙に書いて、枕元に置いておくと、25日の朝にはその紙の代わりに枕元に欲しかったおもちゃが置いてあった。
小学2年、毎年サンタが来てくれてるとはいえ、さすがにそろそろその存在を疑い始める年頃である。サンタは本当にいるのだろうか・・・と。
そこで、僕はサンタの存在を確かめるために、ある作戦を思いついた。
これまでは、クリスマスの1週間くらい前から、欲しいものを紙に書いて、クリスマス当日に備えていたのだが、紙に書く事をイブの夜の寝る直前にする事で、親がプレゼントを買いに行けない状態を作れば、サンタの存在を確かめられるかもしれない・・・と考えたのだ。
寝る直前という事は、当然、町のおもちゃ屋さんは閉店している訳で、もしも親がサンタだとすれば、僕の望む物を用意する事は不可能だ。でも、サンタが本当に存在するのであれば、僕の欲しい物をちゃんとプレゼントしてくれるはず。これではっきりする・・・そう思った。
そして、僕は、作戦を決行した・・・小学2年のクリスマスイブの夜に。
当時欲しかったのは、おもちゃの「ビリヤードセット」(今思えばなかなか渋いセレクトw)。
イブの夜、寝る直前に僕は「ビリヤード・ビリヤード・ビリヤード・・・・」と紙に30回くらい書いて、枕元に置いて寝た。
さて、翌朝目が覚め、枕元のプレゼントを発見し、僕はあわてて飛び起き、包装紙を破り捨てた。
中から出て来たのは、なんと、僕が欲しかったビリヤードセットだった。
「やったー!ビリヤードきたー」と興奮状態のまま、僕は茶の間に行き、両親に「サンタさんきたー」と騒ぎまくったのを今でも鮮明に覚えている。
結局、僕の作戦の結果、出た答えは「サンタクロースは間違いなく存在する」というものだった。
その後も僕は誰がなんと言おうと、「サンタは存在する」とじて疑う事なく、2年の月日が流れた。
そして、僕の前からサンタクロースが消える日がやってきた。それは小学4年生の時のクリスマスだった。僕は、いつもの通り、紙に欲しい物を書いて、イブの夜に早めに寝た。
次の朝、目を覚ますと、枕元にプレゼントがあり、開封してみると「世界ナントカ文学全集」という本が数冊出て来た。もちろん僕が頼んだモノではなかった。その時頭の中を過ったのは、普段母によく言われていた「本を読みなさい」という言葉だった。
これまで、僕の望む物を届けてくれていたサンタさんが、突然、読みたくも無い本を持ってくるはずが無い=やっぱ、サンタは親だったんだ・・・と確信した瞬間だった。その時以来、僕の元にサンタクロースが来る事は無くなった。
大人になって、当時の事を両親に訊ねた事がある。「小学2年の時、どうしてビリヤードを買う事ができたのか?」と。
両親日く、「紙には書いていなかったけど、おもちゃ屋さんのチラシを見ているとき、ビリヤードの写真ばかりずーーっと見ていたので、ははーん、コレだな?と、確信した」ということだった(笑)。
やはり、子供の浅知恵では親には通用してなかったんだ・・・と苦笑い。
懐かしくも、恥ずかしいクリスマスの思い出である。
[2010年TARUPON FREE12月号 vol.76掲載]