見えざるもの④
コラム「冒頭から暴投」で2024年7月から連載中の物語です。
最新話のみを読まれた方が「意味わかんねー」とならないように、バックナンバーを読めるようにしようかと・・・。
ちなみに・・・
この物語はフォクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
それではどうぞ^^
「それって、三浦がみなさんに言った言葉・・・」
「ええ、お返しね。私たちと仕事したいって言ってくれた時本当に嬉しかった。ちょっと泣きそうになったわ」
「海老塚さんってクールなイメージでしたけど?」
「何よ、私だって泣くわよ、寧ろ…」
「寧ろ?なんですか?」
「・・・どうだって良いでしょ!それより、会社辞めて今何をしているの?」
「自分で音楽事務所を立ち上げるため、準備をしているところです」
三浦さん曰く、退職金を開業資金に回せばすぐにでも事務所は立ち上げられるが、新しいバンドの発掘と自身のスキルアップも兼ねてライブハウス勤務を選んだのだと。
「でも、今働いているライブハウスも辞めようと思ってるんです」
「そうなの?」
「はい。ライブハウスの店長から、例の国家資格を取って店内で予防憑依の施術をしてくれないか・・・と頼まれてしまって・・・少し居づらくなってきているんです」
「ああ、あれね?今、国が推奨しているやつ」
「ハイ、三浦はそもそも予防憑依・・・というか、霊の憑依云々で、行動が制限されたりする事に納得できなくて会社を辞めたのです。それなのにライブハウスで予防憑依を施術する側になんてなりたくありません」
「そうよね、でも、そもそもアレってかなり稼げるって言うじゃない?誰でも出来るものなの?」
「適正さえあれば、資格取得はそれほど難しくはないみたいです。ライブハウスでの適正検査に三浦は合格しているので、あとは資格試験を受けるだけ。一日、数万円稼げるので、心が揺らぎましたが、店長からの要請は断り続けています」
「でも何で店長さんが三浦さんにそんな事をさせたがるの?」
「実は、除霊施術場としての許可が下りるには、ある程度の防音設備が必要らしいのです。なので、ライブハウスやカラオケボックスが適しているとの事でした」
「ああ、スタジオや、カラオケボックスなんかで「予防憑依やってます」って見かけるのはそのせいね?」
「はい、この制度のおかげで、経営を持ち直したライブハウスもかなりあるとか。店長が目の色を変えるのもわかります」
「そうなのね。実は、バンド内でもバイト的に資格を取ってやってみようかって話題になったもの。でもね、『そんなの間違ってる』って言うのよ、うちの正論モンスターが^ ^」
「言いそうですね彼女なら」
「冗談に決まってるじゃない!稼げればなんでも良いのか?って話よ。私達はただ音楽をやりたいだけ」
「みなさん不器用ですね」
「三浦さんも一緒じゃない^^」
「ですね・・ところで・・」三浦さんは続けた。
「みなさんは、予防憑依は受けていませんよね?」
「そんなの受ける訳ないじゃない!生きてれば良いことだって悪いことだってあるわよ、それを今更何よ?厄災原因を全部霊のせいにするなんてどうかしてる」
「毎日テレビで危機感煽ってますからね・・でも、本当によかったです、予防憑依受けてなくて…」
「それは、どういう意味?」
「予防想依の信憑性に疑問が残るという事です。疑問どころか危険な側面すらあると三浦は思っています」
「三浦さん、それってどういう…」