『女の答えはリングにある』 はじめに/目次 先行公開!
「強くなりたい──」
だれしも一度はそう思ったことがあるのではないだろうか。しかし、「強さ」とはいったいなんなのだろう。
4月刊行『女の答えはリングにある』は、ライター尾崎ムギ子と女性編集者が、ひょんなことから女子プロレスラーにインタビューすることになり、「強さ」について考えた軌跡を描いた本だ。そんな、強くなりたい女のためのプロレスエッセイから、「はじめに」と目次を一足早く公開する。
はじめに
「本を1冊出せたら、死んだっていい」
26歳でライターになってから、ずっとそう思って生きてきた。無名のライターにとって自著を出版するということはそれだけハードルが高い。得意分野もない、書きたいテーマもない。なぜライターになったかと言えば、ただ「書くことが好き」という小学生みたいな理由だ。そんなわたしが本を出すなんて、夢のまた夢だった。
しかし、続けていればどうにかなるもので、グダグダと書き続けていたら36歳になってまさかの夢が叶った。本のタイトルは『最強レスラー数珠つなぎ』(イースト・プレス)。WEBで連載していたプロレスラーのインタビューをまとめたものだ。インタビューの間に綴ったわたしの独白が「ウザい」「気持ち悪い」と大不評だったが、中には「筆者がインタビューを通して強さを身に着けていく過程が面白い」と言ってくれる人もいた。わたし自身、強くなった気がした。
気がした……だけだった。
本を出した途端、筆が止まった。全部出し切ってしまった。もうなにも書きたいことがない。スピリチュアルの世界で「引き寄せの法則」というものがあるが、「本を1冊出せたら、死んだっていい」という思いが強すぎて引き寄せてしまったのかもしれない。本当にこのまま死んでいくような気がした。
なにも書けないまま1年半が経ったある日、黒田という女性編集者から一本の連絡が入り、会うことになった。
開口一番、「また文章を書いてください!」と言う。えっ……なんでいまさら。もうわたしには文章を書きたいとか、社会に向けてなにか意義深いことを発信したいとか、そういう気持ちはサラサラないんですよ。しかし彼女は食い下がる。「『最強レスラー数珠つなぎ』みたいな、プロレスが自分の人生に相渉る文章を読みたいんです!」──。「わたしの人生なら過去のブログに書いてありますよ」と言うと、彼女は苦虫を嚙み潰したような顔をして「わかりました」と帰って行った。
数日後、黒田さんからまた連絡がきた。「往復書簡をやりましょう! わたしも書きます!」。各々プロレスを観て、感想を手紙に書き、WEBで配信するのだという。「仕掛けてもいいし、受け止めてもいいし、反撃してもいい。反則もいいですよ、レフェリー見てないです」──。
プロレスに喩えられると、弱い。どうしたってやりたくなってしまう。わたしはまだプロレスに未練たらたらなんだから! おそらく文章を書くことに関しても……。
こうしてわたしたちは「プロレス往復書簡」を始めることになった。
☆書籍情報☆
【インタビューした女子プロレスラーたち ※登場順】
白川未奈、中野たむ、岩谷麻優、林下詩美、ジュリア、朱里、長与千種、彩羽匠、DASH・チサコ、橋本千紘
【目次】
はじめに 「本を1冊出せたら、死んだっていい」
■第一章 「女の幸せ」とプロレスと
・「女の花は短い」と言われるのがすごくイヤ──白川未奈(スターダム)
・これ、たぶん女の子だったらわかってくれるんだろうな──中野たむ(スターダム)
・自分が一番最強ですね──岩谷麻優(スターダム)
■第二章 どんなときだって、ずっと二人で
・結果を残しても、本当のわたしを見てもらえない──林下詩美(スターダム)
・でも、「わたし、負けない人間じゃん」って強く思った──ジュリア(スターダム)
・だれよりも実力があるのは、わたし。認められない悔しさ──朱里(スターダム)
■第三章 ロード・トゥー・かつて女を魅了した女
・引き込みます。世界に引き込みます──長与千種(マーベラス)
・あの時代に近づきたいという気持ちが強い──彩羽匠(マーベラス)
■第四章 仙台の強い女たち
・いま全力でいかないと、いつどうなるかわからない──DASH・チサコ(センダイガールズプロレスリング)
・一番大切なのは、素直になること──橋本千紘(センダイガールズプロレスリング)
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