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遊戯王MD:「純覇王」を語る

こんにちは。沙里葉(Sariha)です。
今回は遊戯王MDの「純覇王」についてお話していこうと思います。
全文無料ですので、よろしければぜひお付き合いください。


はじめに

目的と範囲

本記事の目的は、遊戯王MDのデッキ「純覇王」について解説することです。特に、BO1形式における純覇王の選択理由と利点について詳細に解説します。
具体的には、以下のような内容について説明します。

  • 覇王魔術師との違い(戦略のバリエーション、カードの選択、プレイスタイル、長所短所など)

  • MDの環境(メタ概要、要注意デッキ)

  • 実践的なヒントと推奨事項(構築、プレイング)

  • OCGにおける純覇王の不在について

ここで注意いただきたいのが、「各カードのテキスト内容と役割」は今回解説対象外とする、ということです。
というのも、純覇王は構築のベースは覇王魔術師と同様であり、共用カードが多い(と言うよりほぼ覇王魔術師で使っているカードしか入らない)上に、基本的な考え方は覇王魔術師と同様であるためそれらを一から全部解説するのは冗長であるためです。
可能な限り本記事だけでお読みいただけるようにはしますが、途中覇王魔術師の展開パターンおよび、覇王魔術師の構築とプレイの基礎の記事が参考になると思うので、必要な方は適宜そちらを参照ください。特に、覇王系統のカードについて1から知りたい方は後者のnoteが参考になると思います。

純覇王の概要

純覇王とはその名の通り、覇王魔術師から魔術師ネームドを覇王門と軌跡以外不採用として最小限の覇王ギミックのみでまとめ上げたデッキです。
以下は、本記事で参照する構築です。私がwcs24の1stを突破したときの構築です。

覇王魔術師との違い

先ほども言いましたが、純覇王は基本的には覇王魔術師とほぼ同じコンセプトのデッキと考えていただいていいと思います。ただ、差別化されている点も複数あるため、それについて説明します。

戦略のバリエーション

覇王魔術師は、その名の如く一般的には魔術師ネームドカードを多用し、対応力の高さとミッドレンジ性能を重視しています。
これに対し純覇王は、あまり初動に寄与しない虹彩や慧眼、時空を不採用とすることで(後発の覇王幻奏には負けますが)初動の安定感および展開の貫通力を手に入れました。

この違いにより、純覇王はよりオールイン・コンボに近いデッキとなり、

  • 妨害数とリソースをカサマシする

というよりも

  • 展開が成立しやすくする

方向に舵を切ったデッキとなっています。

カードの選択

覇王魔術師には虹彩、慧眼、時空が基本的に採用されており、人によっては調弦、賤竜、紫毒、あるいは黒牙、星刻、天空、クロノ、星霜をはじめとした魔術師ネームドが数多く含まれています。魔術師ネームドは初動にあまり寄与しない代わりに、展開を伸ばしたり除去力を上げたりなど1枚1枚が複数の役割を持つことが多いのが特徴です。
これに対し純覇王では、ダーク、ライト、光翼、レボをはじめとした「覇王ギミック」の枠を厚くとっており、とにかく初動の安定感を追及しているデッキです。上の構築をご覧いただければわかる通り、虹彩や慧眼、時空を不採用にした代わりに光翼とレボを3積みしています。覇王は、(MDでは)いまだに1枚初動が存在しないため、初動を安定させるためにレボや光翼をフル採用するのは至極道理です。これにより、初動の安定感が手に入りましたが、一方で魔術師の強みであった対応力の高さとリソース確保がやや犠牲になっています。

プレイスタイル

先ほどから申し上げている通り、覇王魔術師は魔術師ネームドの持つ役割が多岐にわたるため、展開もテクニカルなものになる傾向があります(スターヴが制限なのがつらいですが)。魔術師ネームドの効果をうまいこと組み合わせて、先手後手問わず状況に応じて多様な選択肢がとれるのが魔術師ネームドの強みであり、魅力であると考えます。

これに対し純覇王は、よりシンプルで直線的な傾向にあります。プレイヤーは先手の場合、覇王ネームドを駆使してお決まりの「P前エレク」「P前ウーサ」を目指し、その圧倒的な布陣で相手を圧倒することを目指します。後手であれば、その大量の誘発によって相手の展開を弱体化させたうえで、軌跡、覇王クリア、アクセス、レボのような後手巻き返しに資するカードを使って巻き返していきます。

長所短所など

  • 長所

    • 覇王魔術師:リソースの残りやすさによるミッドレンジ性能の高さ、多様性と柔軟性、最大妨害数

    • 純覇王:初動の安定感、自由枠(誘発枠)の多さ、シンプルな展開

  • 短所

    • 覇王魔術師:初動の安定感の欠如、複雑さ

    • 純覇王:柔軟性の欠如、最大妨害数

このように、覇王魔術師と純覇王は同じテーマに基づきながらも、異なる戦略とプレイスタイルを持っています。
それぞれの特徴を理解するのが重要です。

なぜ今純覇王なのか?

私は、OCGでそこそこ覇王魔術師を使っているつもりですが、WCS1stに挑む際に覇王魔術師ではなく純覇王を選択しました。
もちろんいくつか理由はありますが、最大の理由は

  • MDがBO1だから

です。これに全てが集約されています。

MDでは、OCGのマッチ戦(BO3)とは異なり一回の対戦で勝敗が決まるため、

  • 事故=敗北に直結するので事故を可能な限り減らした方がよい(BO3と違って事故った場合のリカバリーが難しい)

という特徴を持ちます。

BO3であれば、一度事故で落とす試合があってもリカバリーのチャンスがあるため多少の事故は許容できますが、BO1ではその一度の事故が即座に敗北を意味します。

よって、より事故が起きづらい純覇王がこの時点で候補に挙がります。

「いやいや、そうはいっても多少の事故は許容して詰み対面少なくした方がいいんじゃないのか、メタビとか神碑とか相手には覇王魔術師の方が強いんじゃないのか?」

と思われた方もいらっしゃると思います。確かにそういう考え方もあります。

客観的事実として、覇王魔術師は初動に寄与しない札を抱えている関係で事故率が高い代わりに、詰み対面が少ないです。というのも、時空によるフリチェ除去がある関係でメタビや神碑のような他の多くのデッキが苦戦する相手でも比較的有利に立ち回れるからですね。

がしかし、私は「より多くの対面に勝ち切れるかどうか」よりも「事故らないかどうか」を重視することにしました。

私の主観では、「純覇王で詰み対面(ただし覇王魔術師なら打開できるものとする)に当たって勝ち切れずに負ける試合」よりも「覇王魔術師で事故って負ける試合」の方が多いと感じています。これにはカラクリがあり、「そもそも純覇王で詰み対面になるデッキ(ないしカード)とマッチングすることが少ない」というのが挙げられます。

純覇王にとって明確な詰み対面となるのはおそらく神碑やメタビが筆頭でしょうが、これらのデッキはメインウェポンであるドロソや永続がかなり厳しい規制を受けているため、現実に大きく数を減らしています。しかも、しつこいようですがMDはBO1なので、仮に永続を採用しようと考えたとしてもそれらは先攻でしか使えなかったりすることが多くMDのルールと噛み合いが悪いのです。よって、明確な「詰み」となる対面ないしカードとのマッチアップはそもそも意外と少ないと私は考えます。詰み対面を回避する対策を練った結果他の対面での事故に繋がるとしたら、本末転倒ですよね。

また、BO1であること以外にも、MDならではの要素があります。昇格のシステムです。

以前私は、「試行回数さえ重ねればマス1に到達できるとみなせる」といえる勝率の閾値についてシミュレーションを実施しました。

このシミュレーションによれば、「(計算上は)勝率5割5分を超えた段階でマスター5→マスター1への要求対戦回数が激減する」という結果が出ています。そう、「意外と低めの勝率でも昇格は可能」なのです。

つまり何が言いたいかと言うと、

メタビや神碑のような詰み対面を捨てたとしても他で事故らず勝てればマスター1への昇格は現実的に可能

であるといえます。
この事実を知って私は、覇王魔術師ではなく純覇王を使う方針を決めました。


MD対戦環境について(24.08現在)

メタ概要

2024年8月現在のtier表は以下のようになっていると仮定します。game8様のページより拝借しました。(私の考えに最も近いtier表はgame8様のものでした)多少の誤差はあるかもしれませんがおそらく致命的ではないのでこのtier表に則って話を勧めます。

遊戯王マスターデュエルtier表(2024-8月現在)

OCGで言うところの24.10環境に近いですね。
篝火と罪宝ギミックがフル採用でき、キリンが無制限である「蛇眼炎王」と、同様に篝火と罪宝ギミックがフル採用できる上にEMERGENCYが無制限の「R-ace」の二強です。

次いで、エクセルが制限になったとはいえギミック自体の安定感が高い「スネークアイ」、キトカロス制限レイノハート無制限により出力が比較的維持できている「ティアラ」、スリーピィが3枚使えリソース回復がしやすい「ピュアリィ」、サーキュラーが依然3枚使える「斬機」、ナイトメア・イドロックができなくなったとはいえあまり致命打を受けていない「烙印ビーステッド」、そして2枚初動としては最高峰の先攻盤面の硬さを誇る「覇王魔術師」が続く形です。「純覇王」は実質「覇王魔術師」とほぼ同じデッキとみなせるので、同じくtier2でいいと思います。

また、以下のデッキも追加ですね。

  • ユベル(破械幻魔ユベル)→tier2(ファンユベが同時実装により一気に環境へ)

  • 粛声→tier2(強金や天底くらいしかメインギミックの規制がないためだいぶ高出力)

正直、私がOCG始めたくらいの環境に追いついてきてくれたのでだいぶやりやすいです。今回これらのデッキについて考察してきます。

要注意デッキ

どのデッキも非常に強力ですが、個人的に脅威と思うデッキをいくつか。

  • 蛇眼炎王

聖炎王ガルドニクス

炎王はOCG24.01環境でも非常に存在感のあったデッキです。間違いなくトップメタの一角でしょう。
私の過去のnoteをご覧いただいた方はご存じとは思いますが、純粋な出力の高さもさることながら「相性が非常に悪い」相手です。

大きくは2つ。

1つは、純スネークアイでもそうですが炎龍によるスケール封鎖です。もちろんシングル戦で炎龍のスケール封鎖が飛んでくることは稀とはいえ、それは飽くまで対面が不明の場合の1ターン目だけであって、2,3ターン目以降は対面が割れているためスケール封鎖のリスクは常にあります。スケール封鎖されるとほぼ詰みます。

2つめに、「破壊されることで逆にアドを稼ぐカードが多い」ということです。
炎王は破壊をトリガとして効果を誘発するカードが非常に多いため、覇王の巻き返しで使うような軌跡や覇王クリア、アクセスコードの刺さりが悪いのも厳しいです。

間違いなく最も警戒すべき相手でしょう。

  • R-ace

R-ACEタービュランス

R-aceは、特別不利対面というわけではありませんが純粋に出力および継戦能力の高さから警戒すべき相手です。

私もOCGでR-aceを使っており、どのようなデッキかはおおよそ把握しています。篝火や罪宝ギミックが使えることによる初動の太さだけでなく、何よりタービュランスの4伏せが強力で実際通ったら捲るのは困難です。EMERGENCYが3枚使えるせいで、エスケープされやすいのも厳しい点です。

ただ、逆にEMERGENCY持たれてる場合以外は誘発が通るのと、4伏せしたとしても雑に開いて勝てるわけじゃなく適切にマスカンにぶつける必要があるので、ブラフを交えながら展開していけば4伏せされても巻き返せる可能性はあります。

マッチアップ分析

正直、時間が確保できないので具体的な各対面ごとの立ち回りは割愛します。
これを書くと、この記事を書いている間に覇王幻奏がMDに実装されてしまう気がします…
各自で探ってみてください。

実践的なヒントと推奨事項

構築

WCS2024予選の構築

基本的には上記の構築でほぼ完成されており、いじる点は少ないです。
強いて言うなら、覇王クリアの枠をリベリオンエクシーズあたりと入れ替えて覇王門SS回数を増やすことだと思いますが、覇王門が1回しかSSできなくても十分勝てるためドロールに対する受けを確保する意味でリベリオンエクシーズの枠は覇王クリアにしています。
逆に、リベリオンエクシーズを採用したくなる状況と言うのももちろんあって、3ターン目以降展開を剥がされたり消耗戦になったりしたときに覇王門の2回目のSSができると強いので、リベリオンエクシーズもアリです。覇王クリアかリベリオンエクシーズにするかは好みで選んでいただいて構わないと思います。
あとは、ヴェーラー2枚目の枠を三戦二枚目にしても面白いですね。誘発を喰らったときの貫通や後手の巻き返しに寄与する札なので、アリだと思います

プレイング

基本的には覇王魔術師と同様のプレイングになるので、私の過去記事を参考にしてみてください。

ただ、まったく覇王魔術と同じかと言うとそうでもありません。

例えば、虹彩を積んでいない関係でEXの虹彩を覇王門のコストで落として奇跡で吊り上げ…のようなプレイングはできないです。
ドクロのサーチ先にレボがいるので、レボ経由でライトをサーチすれば一応8スケールは手に入りますが、これをやるとドロールの餌食になる点にも注意が必要です。
逆に言えば、虹彩や慧眼が減った分ドクロや軌跡のサーチ先の選択肢が限られてくるので、よりシンプルなプレイングになっていると思います。

(余談)OCGにおける純覇王の不在について

私の知る限り、覇王幻奏が登場する24.01環境に至るまで「純覇王」というデッキが環境にいたという例はほぼ無いです。
理由は、先ほど述べた話の逆ですね。
OCGでは

  • BO3のマッチ戦がある→多少の事故なら2本目以降リカバリーできる

  • ドロソと永続の規制が緩めで神碑やメタビートにそこそこ当たる→時空が欲しくなる

といった理由で、純覇王というデッキは覇王魔術師に比べるとOCGでは好まれない傾向にあるのだと思います。またメタな話をすると、そもそも魔術師と言うデッキにかなりの愛好家がいるので、覇王と言うデッキに愛着を持つ人は存外の少ないのかもな、と感じています。

実際、いくら初動の安定感を高めたといっても、オスティナートやルフランのような一枚初動がMDにはまだないので、MDの純覇王も残りわずかな命だとは思います。
ただそれでも、時空のような初動に寄与しないカードが減ってレボや光翼が3積みされていると明らかに安定感は違うと思うので、興味のある方はぜひ手に取っていただければと思います。

おわりに

この記事を通して、BO1形式における「純覇王」デッキの強みについて解説してきました。現状、「純覇王」デッキはその事故率の低さから、安定した勝率を確保できる、十分に有力な選択肢と言えます。

しかし、近い将来MDに「覇王幻奏」の実装が控えているかもしれません。


オスティナート

この場合、環境に新たな要素が加わり、デッキの選択肢が広がることが期待されます。オスティナートやルフランで一枚初動になるのは間違いなく革命でしょう。ただし、その時が来ても、安心してください。「純覇王」や「覇王魔術師」で使用している多くのカードは「覇王幻奏」でも十分に流用可能です。つまり、今作り上げたデッキが無駄になることはありません。

「覇王幻奏」が加わることで、さらに強力で多彩な戦略が可能になるでしょう。ぜひ、今から「純覇王」や「覇王魔術師」を活用し、その強みを実感してください。そして、「覇王幻奏」の登場に備えて、デッキを進化させる楽しみを味わっていただければと思います。

今後の環境変化にも柔軟に対応できるデッキ構築を目指し、一歩先を行くプレイヤーを目指しましょう。この記事が、皆さんのデュエルライフをさらに充実させる一助となれば幸いです。

それではこの辺で。Good luck…!


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