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glue【2】

作られる洋服には一つ一つストーリーがある。

この場では簡単にはなってしまうがそのストーリーのプロローグ的な部分をお話しできればいいのかなと思っています。

今回は個人的にも大好きなアイテムのお話し。

普段ニットを着ることが殆どない自分に、衝撃と言ったら大袈裟かもしれないが、そのくらいのものを与えてくれたアイテムが今回の主役。

一見、2トーンのシンプルなニット。デザインとして特筆する部分は袖付けの違いくらいだろうか。(右はセットイン、左はラグラン)

最初見た時にはすごくシンプルなものを作ったのだなと。オーセンティックでありながらエッジの効いたアイテムが多いブランドだけに意外な感じだなと思っていた。

初めてそのものを見た時、触ってみなと言われたのを覚えている。それが何と聞く前に、とりあえず触ってどう思うかと。

実際に触ってみると、半分に分かれた編みの上部分はしっかりと硬く、逆にした部分はふわっと柔らかな触り心地だった。

どう?と聞かれた彼の問いに、僕は素材が違うというのには気付いていたので、『上がウールで下がカシミア』と答えた。が正解は思いっきり逆だった。

このニット、カシミアをギュンギュンの度詰めに編み、逆にウール度甘に編んでいる。通常は逆。カシミアは本来の柔らかさを活かすためにふわっと度甘に編むことで肌触りの良さを最大限に出すもの。

それを敢えて逆の編み方にして触らせた彼は『ね?わかんないでしょ?』と言わんばかりの顔をしていた。僕は彼の洋服に込めたアイロニーを感じた様な気がした。

何をもって質がいいとか、着心地が良いとなるのか。それは使われている素材がどうこうというだけではなく、それをどんな方法でかたちにしていったら気持ちの良いものが作れるかということ。

きっと料理もそう。高い食材を使えば美味いと言うわけではなく、それをどんな風に調理するかによって味は変わってくる。

作り手としてあらゆる引き出しを持っているからこそできること。僕の中で彼の魅力が更に一段階アップした、そんな一着。

もちろんそれ以来、こちらは僕の秋冬のユニフォーム。(定番化を目論んでいます。)

他にも語れることは沢山ありますが、気になる方は是非ギャラリーの方まで。

作られた物に詰まったストーリーが、誰かの手に届き、使っていく中で、また新しいストーリーができていく事は凄く素敵な事。そのストーリーを作るお手伝いができたらなと。

そんな体験を皆様に是非この空間でして頂けます様に。

East End Gallery

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