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memorandum【25】

East End Galleryがあるのは、東京の中でも最も東に位置する辺り。ファッション的な街、渋谷や原宿、高級ブランドの店が立ち並ぶ銀座などとは全く違った街並み。かといって、隣の浅草ともまた少し違う独特な雰囲気を持っている。時間はゆったりとしていて、都会の喧騒みたいなものはほとんど感じられない。

立地もあってか、ふらっと入ってくる方はご年配の方も多い。殆どの方は新しく(建物は昔からある古いビルですが。)お店ができた興味本位みたいな感じで立ち寄って下さり、ここが何のお店なのかもわからない様子。

そんなご年配の方と話していた時のこと。いつオープンしたとか、昔はどんなお店だったとか他愛いもない話をしている中で、店内の洋服達を見てくれていたその方。ふとニットの前で足を止めて、これはカシミヤですか?と。正直、驚いた。十中八九、触ってもわからない素材感かなと思っていたその素材を一発で当てていったその淑女。

どうやら昔は高級な素材のものもよく着ていたとのことだったが、年を取るに連れて贅沢をしなくなったと仰っていた。すごく素敵な方だなと素直に思った。良いものも知っている中で、自分の中での尺度をしっかりと持ち、今の自分に合うものをちゃんと見ている。様々な経験を経てだとは思うが、簡単にはできないこと。

また自分達が世に出している服は贅沢品なのだと再認識したタイミングでもあった。生活において必需品というわけではない謂わば嗜好品。その絶対的な価値を見出さない限り選ばれることのないもの。これまで僕自身が身を置いていたお店では日々当たり前のように何万円もする洋服達が売れていっていた。その当たり前が当たり前ではないことにちゃんと気がつくことのできたすごく良い時間だった。

より丁寧で、親身な話のできる売り手になること。今はまだ多くない来てくれている人に、来てよかったというだけでなく、また来ようと思ってもらえる様な何かをこの場所にきて残してもらえる様にまた頑張っていこうと思った日でした。

East End Gallery

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