2020/21シーズン ウェストハムの展望
皆さん、お元気ですか?
ほんのちょっとのバカンスを終えて、プレミアリーグは新たなシーズンを迎えます。
昨シーズン、プレミアリーグ残留に成功したハマーズことウェストハム・ユナイテッド。
とはいえ、ギリギリの16位での残留。監督交代、主力の長期離脱などいろいろあったシーズンでもありました。
ですが、ウイルス蔓延による中断からの再開後の戦い方や選手たちの表情からは、未来への展望を期待させる試合内容ではありました。
短いバカンスを満喫しながら間もなくやってくる新シーズンへの準備を…というところでしたが、やはりというか問題が露呈してしまいます。
[深刻な資金難?]
昨シーズン中の段階ですでに、ハラ―の移籍金分割払いが滞納されているというゴシップにより、多方面から誹謗とヒンシュクを買いまくってしまった経営ボードトップの三人組『Gold・Sullivan・Brady』。
大規模スタジアムを格安でレンタルし、シーズンチケット収入も確保。
超高額の放映権料と相まってかなりの資金がクラブにあるはずなのですが…クラブの経営はまさに火の車の一言。
その一方で、クラブの債券を自分たちで買ったはいいが、そこで発生した利子をクラブでなく自分の懐に収めているのでは…という酷い噂まで流れています。
諸悪の根源、ゴールド・ブレイディ・サリバンの3悪人
また、昨シーズンの降格危機に瀕していた際にトーク番組でデイリーテレグラフのマット・ロウ記者が指摘をした2点。
・スカウトマンがクラブに一人しかおらず、監督自ら活動しなければならず、現代的なクラブ運営からは程遠い状況。
・クラブハウス、練習環境も非常に貧弱でこのセクターに資金投下の比重を高める各クラブと大きな格差あり。
そうした、人件費以外のクラブ強化に資金を投下しない姿勢も、サポーターやファンの不評を買う大きい因子だったのですが…
[あり得ない選手売却、そしてディアンガナ・ショック]
従来からこのクラブの最大の問題点のひとつ、選手獲得/売却のマズさ。
先述したスカウト網の貧弱さに加えて、強化方針決定・交渉役となるDirector of Fooballのポストを置いていないこと。市場に顔が利く人物の不在。
結果足元を見られてしまい、買い場面では高値をつかまされ売り場面では買いたたかれ…
現代戦に背いた旧来的なクラブ経営が新たな問題を引き起こします。
昨シーズン、残念ながら戦力外となってしまった選手たちの放出。
これはどこのクラブでも起きてしまう仕方のないものですが、ウェストハムの場合は非常に歯切れが悪い。
今オフで放出した選手は、アイエティ(→セルティック)・ヒューギル(→ノリッジ)・ロベルト(→バジャドリー)、そして後述のディアンガナとなりますが…
まずはアイエティ。昨夏マーケット最終日に£8mで獲得。チチャリートの放出が既定路線だったため、ストライカーの補充が必要であったとはいえ方針を逸脱したパニックバイだったのは否めず。
殆どまともなプレータイムを与えられずという状況でした。
当然ながら市場価値は下がり、5mというバーゲン価格で放出。少しでも高額で売却しようという意思も感じられずでした。
因みにアイエティはSPLで早くも2得点を記録しています。捲土重来と感じていることでしょう。
続いてはヒューギル。2018年の冬に10mで獲得も、たったの3試合で見切りをつけられミドルスブラへローンに。昨期はクイーンズパークレンジャーズへのシーズンローン、ウェストハムでのプレーは殆どありませんでした。
こちらも典型的なパニックバイでした。
しかし、ここからが更に酷い。
今オフで獲得が噂され、結局クリスタルパレスにもっていかれる?事となった昨期2部最高の才能の一人、エベレチ・エゼ。
彼のポジションはこの段階では補強最優先ポジションではなかったため焦る必要が無かったとは言え、ヒューギルの買取+キャッシュという交渉オプションもあったはずでしたが、腰を上げることはありませんでした。
因みにパレスが支払うのは16m(+4m)です。
結局、ヒューギルはノリッジシティへ売却するのですが、その額なんと2.5m!
昨年39試合・13得点のストライカーをまたしてもスーパーバーゲンで放出してしまいます。
この辺りからGSBふざけんな!という声が高まってきます。
これにトドメを刺したのが、GKロベルトの放出。
昨秋の大スランプの大きな要因となったロベルトの放出は既定路線だったのですが、問題が一つありました。それは、彼の契約が21年6月までだったということ。移籍金が発生するため手を挙げるのに獲得する側の腰が引ける可能性があったのです。
ですがスペイン1部バジャドリーが獲得に名乗りをあげて見事に交渉成立!
しかしここからがさすがGSBクオリティ。
なんとフリーで放出してしまったのです!しかもロベルトのサラリーの2/3がウェストハム持ちといわれている、まったく意味不明な条件での放出…
一体何がしたかったんでしょうか?
当然SNS上では#GSBOUTのハッシュタグが並び始めました。
しかし本当の悲劇はこれからでした。
ディアンガナは3年以内にスターリングを脅かす存在になると思います
グレイディ・ディアンガナ。一昨年にユースから台頭し、昨期ウェストブロムウィッチで急成長を遂げたウィンガー。バギーズ界隈では故障離脱が長かったにも関わらずローン終了を惜しむ声が続出するほどの貢献度を示した彼が、ウェストハムに新しい風を持ち込みクラブの新しいアイドルとなることは決まりきっていた…はずでした…
ところが、9月初旬。目を疑うようなニュースがSNSに飛び込んできました。
『ディアンガナ、12mのウェストブロムのオファーを受理』
いやいや飛ばしだろう、1億歩譲っても2倍の金額が必要だ…そう思っていたのですが、話はトントンと進み、4日に18m(+アドオンの噂あり)での移籍が決定してしまいました。
これにはイーストエンドのみならず世界中のウェストハムファンが不満を大爆発。#GSBOUTのハッシュタグがロンドンやUKのツイッタートレンドで上位にランクインしてしまう有様に。
ディアンガナ本人も移籍を望んでいなかったというゴシップが挙がる中、主将ノーブルも不満をツイートして表明しました。
ノーブルがクラブ批判のコメントを公表することは少なくとも私の記憶にはありません。それほどの激震でした。
ウィルシャー、スノッドグラス、ライス、ランドルフ、ディオップ、マスアクなどの主力選手もリツイートやFavで共感を表明。
そんな中で行われた5日のプレシーズンマッチ・ボーンマス戦は、代表組不在という事もありましたが3-5と大敗。
この時期は問題点の修正ができれば良しと思いますが、選手の表情・球際のテンションに精彩を欠く残念な内容となってしまいました。
このディアンガナ放出、モイーズ監督やノーブルを筆頭とした選手たちへの事前報告や意見聴取を全くしなかったのがアリアリです。
今後の現場のモチベーションが非常に心配です…
そして、この時点(9.6.)で新戦力補強をしていないプレミアのクラブはウェストハムのみ…という事となってしまいました。
本当にカネが無い…というより、着服してんじゃないのかと疑いたくなってしまいます。
[開幕に向けて]
まずはポジティブな話を。
5日のボーンマス戦は精彩を欠く内容でしたが、それ以前のプレシーズンマッチでの戦術面の確認と連動向上については、昨期終盤からの発展が進んでいるように感じました。
サイドでの早い囲い込み意識、守備トリガーの共有は精度の向上が見込めそうな印象でした。
前線からの守備意識・トランジションの意識も高く保たれており、前線から試合を作れるのは大きい強みになります。
判断スピード不足は改善した様子のカレン、素晴らしいプレシーズン
もう一つ、ローンバックされたユースプロダクトのジョシュ・カレン。
カレンのチャールトンでの成長カーブについてはファンの方がツイートされていたのですが、その通りのようです。
シンプルな球捌き、バランスのいいポジショニング、シンキングスピードの速さ。セントラルの3番手はカレンで確定といっていいかと思います。
大いに期待しています。売るなよ…
さて、問題課題は山積みです。
まずは最終ラインの守備について。対人レベルで安心できるのは現時点では残念ながらオグボンナのみかもしれません。
ディオップは軽率なミスや球際の強さが不足。バルブエナはプレーの硬さが抜けず。
フレデリックスは故障リスクが高くジョンソンは経験不足が否めず。
クレスウェルは故障明け以降アスレティック能力の低下が見られ、マスアクの対人守備は変わらず軽率です。
これでは昨期ワースト5位の62失点からの改善は非常に難しいです。
正GKファビアンスキーがコンディションを戻していそうなのが好材料ではありますが、再び故障離脱となってしまうと…
そして懸念されるのはセントラルミッドフィールドです。
ライス(売るなよ?)・ソーチェクが共に不在となったボーンマス戦の守備ブロックは目も当てられない惨劇でした。カレンと三人でローテーションしてシーズンをやり繰りすることとなりそうです。
スリーセントラルとなると、ノーブル・スノッドグラスといったオプションが取れますが、前線との距離や連動はどうしても下がってしまうでしょう。
最後に心配なのが、本来は主砲となるハラ―。
プレシーズンマッチを観ている限り、ボールハンドリングには才能を感じますが、周りの選手との距離感や連動については昨期に苦労した状況から大きく変化しているようには感じ取れませんでした。
シンキングスピードや球離れについては改善意識を持って臨んでいるように見えました、実戦での改善が必須です。
スーパーマルチロールのアントニオは今期も健在ですが、おそらく故障離脱もデフォルトでしょう。
得点を重ねて殴り合いを制する戦い方が必要なハマーズには、ハラ―の奮起なしには苦労するのは間違いないはずです。
期待しています。
新たな選手の補強についてですが、先述した通りでキャッシュフローに余裕はほとんど無いと思われますので、ローンディールで乗り切るしかありません。
タ-コウスキーは好選手ですが、27m以上が必要といわれているのに加えセンターバックは最優先ポジションではありません。多くの方が意見している通り、両フルバックに資金を注ぐのが全うといえるでしょうが、ディアンガナの売却益が本当に補強資金に回るのか…甚だ疑問です。
噂に挙がっている冨安が来てくれたら本当に有難いですが、資金の不足に加えて本人のキャリアデザインからかけ離れていそうなクラブへ行きたいと思うかどうか。
アンデルソン・ランシーニ・バルブエナといった、ペジェグリーニ期に獲得した南米系選手の後先次第で資金に目安がつけば強気な交渉ができるのでしょうが…
最後に今期の日程についてです。
ニューカッスルとの開幕戦の後は、アーセナル・ウォルバーハンプトン・レスター・スパーズ・マンシティ・リヴァプール・フルアム…と続いていきます。
ディアンガナ・ショックが起きるまでは、『まあ当然優しくない相手だけど、練度を高めて11月以降にがっちり臨んでいけば問題なし』と思っていましたが、クラブの近況からすると、この時点で勝ち点だけでなく精神的にも降格確定クラスの大打撃を喰らっている可能性もあり得ます。
しかも、今期の昇格組3クラブはおそらくいずれも非常に手強い。過去最高レベルでの残留争いが展開されることでしょう。
そんな中でとち狂ったGSBが年内にモイーズ監督の解任に踏み切るようなアホな選択をとってしまうと…ライス放出→現金化などの最悪シナリオに陥る未来も…
このネガティブな展望が完全に杞憂だったと思わせてくれるような新シーズンになってくれることを本当に願っています。
正直、愛するウェストハムがどこのディヴィジョンにいようが私としては構わないのですが、GSBの横暴でクラブがズタズタにされるのは我慢がなりません。
この重要なタイミングで無観客試合となってしまうのは現地のサポーター・ファンも痛恨でしょう。噂では開幕戦の前にプロテストマーチがあるのでは…という噂もあります。
まずは開幕戦!モイーズ監督と選手たちが強い意思をグラウンドで見せてくれることを期待しましょう!
COYI!
最後までお付き合いいただき、有難うございました。
今回のコラム、いかがでしたでしょうか。
あまりにネガティブな内容満載で、自分でも嫌になりますが…現実に向き合うのが大人というものです。
いい時もあれば悪い時もある。人生と同じです。
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