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過去に描かれた輝かしい未来像

1980年代に青春時代を過ごしたものとしては、当時を思い出すだけで小っ恥ずかしくなるものだ。

きっと自身だけの問題だけではなく、それぞれの年代に共通しているのだろう。
例えばファッションが良い例だ。
今と当時を比べると垢抜けなかったり、何よりもダサく思えてならない。
80年代を送った自身の世代の前に生きた人々は、口を揃えるかの様に当時はラッパズボンと呼ばれたベルボトム、またはフレアパンツは見たくもないと言う。
これは運命のいたずらなのか、歴史は繰り返すという言葉が示す様に、流行もまた例外ではなく、形を変えて新たな形態として生まれる事も珍しくない。

これは偏見も含まれるのだが、1960年代や1970年代に関しては明確な文化や芸術面が盛んな時期だった事もあり、遅れて育った自身としては輝かしくもあり、羨ましくもある。
例えば60年代はあらゆる音楽のジャンルを確立した時代でもあった。
現代では考えられないほどの数多くのミュージシャンが、歴史に残る楽曲を提供してきた。
例に例えると、ビートルズはいつの時代に生まれ様と名前だけでも知られるグループだ。
そして音楽のタイトルを知らなくても、どこかで聴いた事があるぞ…などと。

若い頃はこの年代のグループだと、真っ先にローリング・ストーンズに共感したが、歳を追うごとにビートルズの楽曲の方が心に沁みて判りやすい歌詞に癒される。

70年代ともなると、ベトナム戦争をはじめ差別や偏見、自己主張または確立といった思想や改革といった、自立または自由に対する価値観を意識した時代でもある。
そのため、この二つの年代と比べると80年代と言う時代は一言で表すならば「ノーテンキ」でしかない。

音楽はユーロビートや内容を重視しないポップ・ミュージックが盛んで、ファッションにしてもデザイナーズ・ブランドが流行し、今の時代の様に細かなサイズの展開がなく、フリーサイズの一つ、または二つしか用意されていないのが当たり前だった。
その当時の若者は皆寛容だったのか知らないが、誰一人文句を言うまでもなく、誰もがありがたくブランド品を拝みながら身に着けていた。

それでもごく少数派ではあるが、こういったノーテンキな時代に対し、反骨精神をむき出しにした若者も存在した。
音楽のジャンルでいうと「パンク」だろう。
当時は「インディーズ」という言葉が当たり前に使われていた。
大手に媚びない自主制作という形で好きな表現で作品を手がけていた連中を指す。
自身もこういった連中に「してやられた」口の一人である。
だが、もっと先端を駆け巡っていた先人を一人挙げるとするならば、ズバリ石井聰亙(現在は石井岳龍) 監督だろう。
「狂い咲きサンダーロード」を観て更に「してやられた」
てな具合で、「爆裂都市 BURST CITY」は正直すんげえ!ぶっ飛び半端ない内容に、もっともっと「してやられた」よな〜。

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物語の内容を簡単に説明すると、近未来の日本を舞台にしている。
原子力発電所建設を暴力団が牛耳り、暴力が蠢くマッドマックスの様な世界観が観る者の息苦しい世界に誘う。
夜になると二つのロック・グループが対立し、辺りは余計に混沌とした闇夜を映し出す。

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これは主観的な意見だが、この映画を通して感じる事は、政治や経済が腐敗しても人の欲望は変わらないという点だ。
物資が乏しい時代を迎え入れても、なお権力に固執する輩は一掃されないのだろう。
それと権力は力を象徴しているが、もう一つの力は正義なのだろう。
だから権力に屈する事なく常に抵抗を続けるのであろう。
こういった事を連想するたび、やはりこの映画もそうだが、石井聰亙そのものがパンクの象徴だと感じてしまう。

もう一つ、この作品の優れた点は、出演している実際のミュージシャンだ。

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当時ザ・ロッカーズのボーカルを担当していた陣内孝則。
続きザ・ルースターズの大江慎也、町田町蔵(現在は町田康)、ザ・スターリン。
特に遠藤ミチロウは圧倒的な存在感で観客の度肝を抜く。
続いて泉谷しげる、ミュージシャンの他には麿赤兒、上田馬之助、コント赤信号、室井滋、南伸坊、手塚眞、ケージツ家の篠原勝之と豪華メンバーが勢揃いだ。

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こういった映画に関しては例外なく素晴らしい。
で、この作品を改めて観ると、この年代で育った事を誇らしく思う。

現在のファンションを見ていると、かつて自身が育った年代のスタイルを真似た若い子が目に付く。
若い子たちには新鮮に映るスタイルでも、当時を知るものとしては本当に小っ恥ずかしい。
つうか、絶対に真似たくないスタイルでもある。
そう考えると、ベルボトムを見るのも恥ずかしい年代の先人の気持ちが痛いほど分かる。
という事は既に若くはなく、とうとうおじさんの域に達したのだろうと痛いだけに痛感した感じである。

わーお!

てな具合で、この作品は本当に誇れる映画だ。
今の若い世代には多少古臭く感じるのだろうか…
当時のインディーズ「魂」に「してやられ」てくれたら本望かな〜☆

要するに、形にだけしか囚われていないのであれば、やめてくれ。とだけ告げたい。
ファッションは形態でしかないが、本能は信念に繋ぐパッションなのだから。

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