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現状はとても冷たく、とても儚い…

いつの時代も貧困という文字は消えない。
私が育った昭和とい時代は貧困自体が珍しい状況ではない。
おかしく例えると、近所の子供も同級生の友達も殆どが貧困層であった。
今思うと不思議なのが、食べ物や環境に飢えていたのに、気持ちはいつも晴れやかで毎日が楽しかったのだ。
もっと具体的に例えるならば、状況は貧困でも心身ともに健やかだった所が救いだったのだろうと感じる。

先ほど述べた通り今も貧困が消えた訳ではない。
こういった背景を上手く捉えた作品が邦題「わたしはダニエル・ブレイク」である。
監督のケン・ローチは大袈裟な演出を好まない。
しかし、人間に宿る残忍生や飢えに対して真っ向から向き合う少数派の監督であると勝手ながら思う。

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物語はとても切ない。
主人公はダニエル・ブレイクという59歳の大工だ。
心臓の病に襲われたダニエルは国の援助を受けようと手続きを行うが、複雑な制度の影響もあり中々進まない。
同じく、主人公とは状況は違うがシングルマザーであるケイティは二人の幼子を育てる上で国の援助を申請する。
しかし、ダニエルと同様ものごとが思う様に進まない。

この物語を通して率直に感じた点は他人事ではない問題だ。
実際ダニエルと同じ苦しみを味わっている高齢者も多いはずだ。
映画を観ると一目瞭然だが、なぜ困った時に制度を利用しようとすると複雑かつ面倒なのだろうか。
それと若者と違いスマートフォンやネットに不慣れな高齢者にパソコンでの記入や手続きを求めるだろうか。
正直言って嫌がらせにしか思えない。

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今は健康面だけを問われると何不自由していないが、この映画の様に困った時に国の制度を利用するとしたら、はっきり言って気が滅入るのと、果たして本当に助けてもらえるのだろうか?と不安になる。

余談だが、私自身も物語に出ているケイティの様にシングルマザーで育った一人だ。
私の他に二人の兄弟もいたので母親は大変な思いをしたに違いない。
今と違い「シングルマザー」という言葉すらない時代、ひどい言葉で表すと「カタワ」と呼ばれていた。
母は強い人間だったので、周囲から馬鹿にされたり偏見や差別に対して真っ向から逆らった。
そういった母親の背中を見て育ったので、この物語もまた他人事とは思えないほど感情移入できた作品でもある。

ここまで説明し、このままお開きとなるのも何だか切なさしか残らない。
事実、現状はとても冷たい。

どれだけ経済は潤っても、福祉に関しては潤うどころか滞ったままだ。

そうそう、不平を漏らしたところで物事が進む訳ではない。

この様に現状を直視するという意味で語ると、この作品は鑑賞する価値のある内容だ。

何事も希望を持てば前に進めるはず。
または夢に置き換えても良い。
要するに目標を持つ事が大事なのだ。
それに目標の先には必ずゴールがあるのだから。

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