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長谷川町子記念館のカフェの準備中に起きたこと。

2020年7月11日に、長谷川町子記念館が開館しました。

株式会社Eastは、一階ロビーに併設されたショップ(購買部)と、カフェ(喫茶部)と、オンラインミュージアムショップ(通販部)を担当しています。

今日は、そのカフェのハナシ。長くなるので、お時間ある時に、もしよろしければ、お読みください。

皆さんは、ミュージアムを訪れて、そこに併設されているカフェの印象ってどんなですか?

NYのノイエギャラリーのように、マンハッタンのど真ん中にありながら、カフェもしっかりとウィーン的のものだったり、ロンドンV&Aでは、ウィリアム・モリスによる室内装飾がそのままカフェとして使用されていたり、名物ミュージアムカフェは、色々あります。

そんな中、僕らがはじめて手がけるミュージアムカフェを、どんなものにしようかと、考えた時、必要な事はハッキリとしていました。

ミュージアムを訪れたヒトへの真のサービスでありたい。そのやり方はとてもシンプル。本当に美味く、その上安い。そして、ミュージアムならではの「体験」がついてくるものでした。

コーヒー文化が、世界的なブームとなって既に数年。日本でもこだわりの若き焙煎師が誕生したり、海外で人気のコーヒーチェーンの進出など、エスプレッソマシンの扱い方も本格的になりました。でもここは長谷川町子の記念館。その活躍の場所は日本。そして、時は昭和です。昭和の美味しいコーヒー文化を紹介したいじゃありませんか。(僕個人としては、酸っぱい系サードウェーブは、少し苦手という事もあります)

ネルドリップ、サイフォン、ペーパードリップ。そういうものもありますが、なんと言っても、ショップに併設された限られた空間で、ショップスタッフとカフェスタッフは、兼業ですから、出来る事は限られます。でも、絶対に譲れないのは、美味しいコーヒーをお出ししたい!の思い。

抽出方法は機械式のドリップでありながら、豆の管理と、挽き方、いれ方、その後の保温時間。それらを組み合わせる事で、充分に美味しいコーヒーはご用意出来るはず。そう考えました。京都のイノダコーヒー(ネルは使いますが、まとめて抽出します)や、今はなき、築地の愛養などの姿も頭にはありました。さて、そのアイデアを実現する為には、まず、美味しい豆が必要です。そして、それをどう扱うか。。。

豆は、東京にある、昭和初期から仕事を続けているところを探しはじめました。
宮内庁御用達のコーヒー豆屋さんに相談してみたり、それ以外にも小さな老舗の喫茶店などなど。そんな中、銀座で100年を超える歴史のある、喫茶店パウリスタ(銀プラの語源になった老舗です)を再訪してみたところ、ジョン レノンとオノ ヨーコ夫妻が来日した際、三日続けて飲みに来たという「深煎りタイプのオールドブレンド」を再発見する事になります。酸味は少なく、苦味のあとに甘味が深く残るその味は、僕のイメージする昭和の喫茶店の美味しい珈琲そのものでした。

さてその前に、そもそも僕のこの素人発想のカフェが、実現可能かのか、信頼できるプロの意見がどうしても必要でした。そんなプロとどうやって出会うのだろう?そう思っていた2018年の11月。運命的な事がありました。

広尾に事務所を持つ、仲の良いグラフィックデザイナーが「ウチの近所に東京イチ美味いコーヒー屋が出来たんですよ」と言っていたのを思い出し、彼の事務所を訪ねた際に、その「コーヒー屋さん(素敵なカフェです)」に、立ち寄ってみたのです。

その日その時、今から思えば奇跡的に、約2時間もの間、僕の他に誰もお客さんが、来ませんでした。(あれ以来、そんな日は見た事がないから、余程特殊な午後だったようです)その時、一言二言交わした時に、もう、直感的に、本能的に、絶対的に、僕の中のレーダーが音を立てます。この人だ。この人がその人だ。そう感じた瞬間、その日はじめて訪れたカフェの店主に、今回の事を説明し、アドバイスもらえないかを頼んでいました。

彼は驚きながらも、とても嬉しそうに、妻と相談してみますと言ってくれました。そのカフェは、タクミさんと、アキヨさんが、まさに二人三脚で、経営している、小さな家のようなカフェだったのです。

その日のうちに、返事がありました。
本当に嬉しいスタートでした。
これでカフェは、大丈夫。そう思えました。

その後、約一年半の月日は流れ、その間に、厨房の設計、備品の購入、今年に入ってからは、メニュー開発や、コーヒーの微調整、追加器具の選定など、それからウチのスタッフへの、トレーニングなど、お二人のサポートは、心強いなんて、生やさしいものではなく、町子記念館カフェの監督兼コーチのような存在でした。中でも最も嬉しかったのは、機械を使って珈琲をいれるのにも、プロとしての仕事のクオリティが存在する事を見せてくれた事。プロとしての仕事に、最も必要なのは何なのか、それをスタッフに授けてくださった事に尽きます。

タクミさんとアキヨさんのお二人にかかると、普通に飲んでも美味しい豆は、もっと特別なものになりました。

二人のカフェ「Nem」がなぜいつも地元の人々から愛されているのか、その理由がわかりました。

これだけ書いても、大切な事は書ききれません。
でも、ここから先は、僕らが長谷川町子記念館の喫茶部を、お二人から教えてもらった事を大切に、永く続けていく事で、皆さんにお伝えしていくようにしたいと思います。

桜新町に新しく出来た新しいカフェ。今は新型コロナ対策で、入館者しかご利用頂けませんが、将来的には、自由に、カフェだけもお使い頂けるようになるはずです。

皆さま、どうぞ、よろしくお願い致します。

(この記事は、昨日Facebookに書いたものを転載したものです)