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へっぽこお遍路日記39「遍路道をたどってきた旅で、僕ははじめて自分の道を勝手に作って歩むことにした」
12月31日
歩いた距離23km
回ったお寺:たしか5つ?6つ?
朝まだ開いたばかりのお寺でお参りをさせていただく。
まだ朝日も当たっていなくて、うっすらと暗いお堂に向けて経を唱える。
人がいないこんな時間帯は、お堂のなかがしっかりと見える距離で経を唱えさせていただくんだけれど、そうすると自分の声が響いて自分にも戻ってくるのでなんだかしっかりと声が届いている気がして好きなのだ。
納経所に御朱印をいただきに入ると、寺のおばさまが
「歩き遍路さん?昨日はどこで過ごされたの?」と声をかけてくださった。
昨日はこの手前の公園で野宿をさせていただきました。
「あらそう!昨日ギリギリにね、男の人がやってこられてね、そのかたはここでお参りをして次のお寺に通夜堂があるからね、そこで寝られたのよ。あなたももう少し早かったらね。」
昨日峠のくだりで僕を抜かしていった男の人だな。僕と同世代かもう少し若そうに見えた彼はずいぶんカラダも軽そうだった。少しだけ挨拶ついでにお話もさせていただいた。
「あなた朝食は食べられた?パン焼いてくるから待ってて。」
そう言ってサッとおばさまは裏に戻られてしばらくするとあったかいお茶と一緒に、バターのたくさんのったトーストを持ってきてくださった。
「ゆっくり食べなさいね。お盆はここに戻してもらっていたらいいから。」
相手に気をつかわせないお接待というのに、この旅で僕はいったいいくつ出会うのだろう。ほんとにそれは美しいといってもいいぐらい。
まだ少し遠くに松山の街が見える。
振り返るとそこには昨日越してきた峠が見えて、ちょうど日が当りはじめている。真っ白になっているからきっと山の上は雪が積もったのだろうな。
松山には会いたい人がいる。元気にしているかな。
メッセージだけでもしておこう。そう思ってテツさんにメッセージを打った。
いつもと変わらずテツさんは温かみのこもった返信をしてくださって、それを読んでやっぱり彼に会いたくなった。
大晦日。自分にとってのお正月をどう過ごすか。それは自分で決めたらいいもんな。
よし、テツさんに会いにいこう。前にお世話になったお店の事務所をお借りすることができれば夜も過ごせる。
「あんなところでよければ笑」
その返信とともにテツさんは快くOKしてくださった。よし、これで今日は目指すところができた。
この日はお寺を5つまわったかな。(新年に書いておりますゆえお許しを)
3つ目の寺を参っていると、右手のベンチでこちらを見ておられる女性。御朱印をいただいたあとまだいらっしゃったのでこれは僕を待っておられると挨拶をした。
「Instagramで見てるんです。そろそろ松山かなと思って散歩に出てみたらこのリュックがあったので」
ありがとうございます。珈琲を飲まれますか?と聞いたのだけれど、だいぶ遠慮されているので珈琲はおうちで飲まれますか?と切り替えて、家でもドリップしますとこたえられたので珈琲豆をプレゼントさせてもらうことにした。そしたらお家で心地よく珈琲を飲んでいただける。彼女も遍路をまわったことがあるそうだ。
「なんにも持っていなくて、私がしてもらってしまったごめんなさい」
そう最後まで謙遜しておられた彼女は、お別れしたあと次の寺まで出直してくださってホッカイロにお食事券をお接待くださった。ありがとうございました。
最後のお寺をまわったあとは、松山の街中に向けて歩き出す。
遍路道から外れると少し照れくさい。あんまり遍路を見たことない人もいるだろうから。
お店に着いた。テツさんと握手で再会。彼はIRIE(アイリー)というセレクトショップをしていて、2年前のフリーコーヒー自転車の旅で出会いすんごいお世話になった。大晦日でもお店を開けられていて、2020最後の営業なのに荷物を事務所に置かせてもらったときに、「7時まで時間あるからごはん行こう」と僕を連れ出してくださった。
串カツ屋さんでだいぶお話させていただいた。彼はもう中学生のお父さん。僕の子どもたちを連れて行く旅のこと、生き方のこと、これからの世界のこと、彼がやろうとしていること、ほんとにね、嬉しかった。人生の先輩が僕にその素直な心の風景を語ってくださること、まだ甘い部分もあるだろう僕のお話を真正面から受け止めてくださること。その誰にでもフェアな感じが僕にはとても大きく感じて、この人に会うのがいつも楽しみで松山にやってくる。
場所や観光地は一度でいいと思うことも多い。けれども人は何度でも会いたい。そんな人に出会うことができたこと。お世話になっていること。
テツさんにお礼とともにお別れをして、年を迎えるためのお風呂と洗濯にビルを出ようとするとドアノブに差し入れが手紙とともにさがっていた。ありがとうございます。こんなに幸せな気持ちの大晦日を迎えさせていただいて。
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自分が自分でいられること。
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