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「世界の色はそんなに少なくないよ」

釜山で韓国ラストとなるフリーコーヒーをするために自転車で四面駅というところに出た。
たしかソウルで出会った女の子が釜山から来たと言っていて、オススメしてもらったのがこの駅のところだったのだ。
地図にあるその地下鉄の駅はぶっとい道路の交差点となっていて、人通りもまばら。

うーむと思っていたところに、ちょうど地下鉄から出てきた白人の男性に声をかけられた。

「あなた知ってるよ!」
とはじまる会話。うん?JJたちが作ってくれたYOUTUBEを観てくれたのか?と思いながらこんにちは、と返す。
おぉフリーコーヒーね!どうして?意味あるの?ここらへんまでは全然いつものこと。
そりゃそうだ。誰がただコーヒーをタダで(ボケてるよ)配ることに意味があると思うのだ。彼は友だちが僕のことを話していたと言っていた。

日本で(たぶん)大使館で働いていたという彼は、こういう言葉を並べた。

韓国いまよくないよ。関係。
フリーコーヒー誰が来るの?外国人?韓国の若者?
若者はまだいいよ。年寄りがダメだから。
韓国人飲むでしょ?お金使いたがらないから。
あなたのファッションはさすが日本人。バランス?韓国人はカタチだけ。
この国はコピーばっかり。日本。アメリカ。ヨーロッパ。カタチだけ。
外国人はいいけど、韓国人は大変。
僕がここに住むのは、トラブルがすくないから。
ビジネスは簡単。システムを利用したらいい。
この国には文化なんてない。どこの街もおなじ。釜山はまだマシ。

彼は話しつづけた。
僕は途中ちょっとイラッとしてしまった。
あなたがどうかじゃない。僕はただ韓国の若者と出会いたいんだよ。
コーヒーをラッキーって無料で飲んでもらってもなんでもいい。
ただ会いたいの。どこ行けばいい?

そう言うと彼は、今度は素直に返してくれた。
向こうのデパートは年寄りばかり。行くならこの手前の駅のまわり。若者はそこにしか行かないから。

ありがとう。アドバイスも。
彼に握手をして、また会えるといいね、と返すと彼は同じほうには行かないから会えないと思うけど。と少しぶっきらぼうにかえしてくれた。

会話の最後に、彼の本心を見た気がした。
彼はきちんとキレイで素直な部分を残して生きてる。何もさっき並べたてた言葉だけが彼じゃない。そう思った。きっと生きていくなかで、僕には想像もつかないけれど、彼なりの傷つく出来事がたくさん起きたのかもしれない。


そのかれの言葉のおかげで昨日も 素敵な出会いがたくさん生まれた。
多くの人に言葉をかけてもらった。プレゼントもいただいた。カフェにもお呼ばれした。
けどね、コーヒーを飲みに来てくださった人にもそれぞれあったよ。

日韓で国際結婚したカップル。
訳ありそうな日本のおじさん。
僕のフリーコーヒーのことを褒めてくれながら、
「けれど私があなたとこうして話していることだってね、きっとまわりの人はよくないことと見てるのよ」と韓国語ではなくスマホアプリの翻訳だけで話してくれたお姉さん。
ただ僕の目をまっすぐに見つけて、サムズアップをしてくれたおじさん。
カフェのお姉さんは、旦那さんは日本でコーヒーの修行をして夫婦で何度も行ってる。けどいまはね・・・。と言葉をにごして苦笑いしていたこと。


きっとね、みんな心のなかと、まわりのなかで生きている自分とでね行き来してるんだよ。
たしかに僕が昨日コーヒーを淹れるなかで見た彼らは、朝に出会ったおじさんが言うように
「本心ではなくただタテマエとして」
僕に感謝の言葉を伝えてくれたり、お世辞を言ってくれていたのかもしれない。そんなことは僕には分かりっこない。

けれどね。僕は信じたいんだ。
世界を、その国を、その人をひとつの色でまとめてしまうんではなくてね。
目の前の人を、世界にただひとり、そのひと、として見ていたい。
だってひとそれぞれなんだもん。
大切なものだって、見つめる世界だって、その人だけのものなんだもん。
分かりっこないのはわかってる、けれど想像力は持っていたい。

世界の色はグラデーションだ。モザイクだ。
たくさんの色が混ざり合って社会も国も世界もできている。
それをどう見るか。どうとらえるか。
そこが僕らに残された可能性なんだと僕は思う。

きっちりした線引きも。色分けもいらない。
ただおたがいをひとりのひととしてリスペクトすることができる。
そんなキレイゴトの世界を僕は見てみたい。
自分が生きているあいだに起こらなくても、その希望を見つめていたい。

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