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へっぽこお遍路日記32「体調を崩すから心配なのではなくて、自分がどこまでだったら大丈夫かを知っておくこと。」
「西川さん!雨降ってるよ!」
あ、そうですかー!早いですねー!しょうがないっすね!
そりゃね、天気や峠道は変えようがないから、それで自分の気持ちを揺らしてもなんにもええことないよね。だからしょうがいない。けれどね、まじかーとは思うよね。そりゃそうだ。人間だもの。
昨日拾ってもらったローソンまで送ってもらって、朝ごはんのお買い物までお接待くださったNさんにお礼を伝えて雨の1日がはじまる。32日目にして、はじめての雨。これまでがラッキーだったと考えるべきだろう。しかしどっかで、これもしかしたら最後まで雨に降られず遍路を歩き終えることができるんじゃないかみたいな自分もいたよね。
シェルターにもなるポンチョをアウトドアギアマニアックスのスティーブさんに提供いただいていて、それをバックパックから出して、なるほどふむふむこうして被るのかと試してみるも、なかなか被ることができない。体はすっぽりいくのにリュックがどうしてもハミ出てしまう。5回くらいやり直したやろうか。これひさしのあるローソンやからよかったものの、歩いている途中で突然雨が降り出してたらこんなんビショビショやでほんまに。
なんとかリュックをふくらはぎに当てて立てときながら、自分がスッポリとポンチョを被ってしゃがんでそのままリュックを背負えば全部入ってくれるようになった。よしこれで雨もへっちゃらだぜ!
ザーザーではないので、道路の水たまりじゃないところをがんばって歩く。ポンチョで布がだいぶパラシュートみたいに余っているので、それを手で前に張り出してしまえば足の先にも雨がかからないではないか!と歩くパラシュートみたいになってもてる僕はこりゃいけるな、勝ったかもしれへんと思ってたよね。20分は。
フワッとした踏み心地がね、だんだんモサッとしてきてね、あるときにねジュワッとくるよね。ジュワッと。そしたらもうジュワッの次はジュブってなるよね。そしたらもうあれですよ。ひと言で言うとすれば、
「靴下ビッチョビチョ」ですよ。
そりゃいくらポンチョで隠す言うてもね、もともとサンダルにそのままソックスなことにはなーんも変わらへんしね、そりゃ水もだんだん染み込んでくるよね。積み重ねよね。だいたい恐怖というのは、気づかんうちに自分に迫ってきていて、気づいたころにはもうOUTよね。
ビショビショになってもーた僕は、こんなことなら遍路道は通らず最短距離の国道を今日だけでも走ったらよかっただろうかと思ったりするし、目の前に出てきた遍路道は落ち葉が敷き詰められた土の遍路道で、もうそこに踏み入ったらビッショビショのもうひとつ先ぐらいまで行ってまうから、ちゃんとした道路から行こうと歩き出したらぐねぐね道で結局気づいたら反対方向を向いて歩いてたりね。もうねええことないよね。あかんときはあかんなりに受け入れなね。
お寺に到着したころから本降りに。気温はひと桁やけれどまだ8度ぐらいあるからよかったよ。これ5度以下やったらたぶん一気に足からカラダが冷えてしまうやろうなと思う。よく体調崩すよ!と心配のコメントやメッセージもいただくけれど、こうして自分の体感として「このラインから先はやばい」ということを知るのは僕にはとっても大切なことやと思うんやけれど、それは僕だけやろうか。そんなことないと思うけど。
東屋さんや、お昼のうどん屋さんですこし雨宿りもさせてもらってそれでも20km歩けた。足や肩はいつもと変わらず痛みがあるし、ポンチョを着ていたら濡れないけれど、それでも熱がこもるので汗もかくし、けれどもなんにもないところで休むことができないので、その分がんばって歩くしかないので、結構進んだことはよかった。雨でも歩けないことはない。
愛南町の柏というところに到着。ここから先は山道になるので明日にすることにした。さてどこで夜を過ごさせてもらおうと思って見つけたバス停。屋根も壁もしっかりあるのでありがたいと思って入ったら「ここはバス停であり泊まることはできません。愛南町」と貼り紙があった。あちゃーこれでは泊まれない。
どうしてものかなー。20分ほど手前であった東屋さんは壁がなかったけれど、あそこまで戻らないといけないだろうかなぁと小雨になったなかを歩いていたらひょこっと川があらわれた。あの雄大な川ではなく、コンクリートで台形をひっくり返したようなカタチをしてチョロッと流れているやつ。そしてその流れが自分が渡ろうとしている橋の下に続いている。ちょっとカラダを乗り出して覗き込んでみた。
うん
いけるやつやな。
石がゴロゴロと転がっているけれど、うまく高さを合わせたら寝れないこともなさそうだ。それにまだ雨もパラパラしているし屋根の代わりになるからありがたい。
ハシゴがかけてあったのでそれを伝っておりていると、グワッグワッとカモが2羽やってきた。どうやらエサをくれる人だと思っているらしい。ごめんよーあげられるもんなんにもないわ。と思いながら橋の下の石をのけはじめたら、また彼らも上流のほうにむけて泳いでいった。ここが彼らの寝床じゃありませんように。自分がいるから帰れなくなったら申し訳ないもんね。
昨日遅くまで話をしていたので、もう6時をまわった時点で眠い。こういうときは早く寝るのがいちばんと荷物をまとめたあとはすぐに横になった。
メリークリスマスの夜は、橋の下。
枕元にはいちにち僕とともにがんばってくれたビショビショの靴下が置いてある。なんにもクリスマスらしいことはないけれど、唯一プレゼントと呼べそうなものは曇っていて気温がそこまで下がっていないことだろうか。
プレゼントはいらないから、明日の朝には靴下が乾いていますように。
メリークリスマス!
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自分が自分でいられること。
旅の日々で自分の心に浮かぶ思いや気づきを読み物として。僕の旅の生き方のなかで、読んでくださる方々の心に心地よい余白が生まれればいいなという…
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