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自転車の神さまが僕たちに見せてくれたもの

Ride a Life Journey 2021 DAY12
愛媛県松前町→八幡浜→大分県別府市(海辺の公園でテント泊)
走った距離:64.3km


今日はメンバーがスタッフ帆花を泣かせてしまったお話です。傷つけることはあかんことです。けれども傷つけてしまうことを恐れて、迷惑にならないようにと、相手に踏み込むことをしなくなってしまったときには、そこにはもう心の重なるような人との関わりは生まれなくなってしまう。というわけで本編スタートです。

*すっかり時間が経ったあとなのでこんなこと余裕たっぷり書いておりますが、旅をしている最中はこういう細やかなところは各余裕がほんとになくて、ざっくりと、けれど空気感はしっかり伝えたい、そんなふうにやっておりました。


いい朝のスタートだったと思うんだけれど。。。
今日から僕は「しっかり自分たちもたのしもう」「笑顔でいよう」と決めて朝から過ごす。子どもたちはもう早くに起きることは問題なさそう。

ガレージでテントを張らせてもらったからもあるかもしれないけれど、これまでよりずっと動きが早くてチンタラ1時間半はかけていた朝の出発までの支度がだいたい1時間で完了した。

朝の滑り出しがよいと、その日はいい日になる。のジンクスが。。。。。崩壊した朝ごはんなのですここからが。

いつものようにコンビニに自転車を停めて、朝ごはん。次の動きの時間を決めて食べはじめる。持ってきていた補給食が無くなったので、子どもたちに「お菓子でなんでもいいからー!」と買ってこさせる。楽しく。楽しく。楽しく。

それからいざ食べはじめたのだけれど、ここからが僕の見込みと違ったとこやったんですよそれが。

楽しく楽しくと食べはじめたら、子どもたち、いつもより強力なダラダラパワーが流れ出してきた。なんというんだろうあれ、楽しさのその先の方向性の違うやつ。だらしないというか。生産性がまったくないというか。関西弁ではチョけてるという怒られるやつです。

僕とほのかはサッと食べ終えて、自分たちの動きをはじめる。子どもたちは時間いっぱい、自分たちで決めたミーティング開始時間ギリギリまでダラダラゲラゲラと食べる。早くしたら次という考え方はなくて、そしてその決めた時間も自分たちが早くしようと決める時間ではなくて、まあこんなぐらいかかるんじゃないー?と彼らが決めた時間。

0からつくる旅。とはじめたこの企画と旅。

それをすると「自分ごと」になると簡単に思っていたのが打ち砕かれたのが今回のメンバーと旅だったなぁ。難しいんだけれど、けれどモヤモヤしなくなったらそれこそ自分の限界だと思ってる。さて本題に戻ります。


いったん朝のミーティングがはじまって、昨日使ったお金を計算するのも、地図にルートを書き入れるのでも、お菓子をほうばりながら。ジュースを飲みながら。そしてやっていること以上に、おしゃべりをしながらやっていた。僕も当然そのだらしの無さにイライラしていたんだけれど、朝はレポートの時間なのでしょうがなく書き続けていた。


そのモヤモヤを突き破ったのは、ほのかだった。

「こんなこと言いたくないけど!言うわ!今のみんな見てたらずっとモヤモヤするんよ!ミーティングのときだけ、口ではいいこと言って、かと思ったらこうしてダラダラとやって!結局なんも変わらんやん!ほんまに鹿児島にゴールする気があるん?私だって笑いたい!けどそれはダラけることとは違う!今のみんなを見ててモヤモヤして笑いたくても笑われへん!」
そう涙を流しながら言い放った。


あとから聞いたら、昨日の夜、ほのかも平磯さんとお話をしたそうだ。
「自分が裸にならんと、子どもたちも裸になってくれんよ。そして何より楽しまないと。」


きっとその言葉がこのほのかの言葉に繋がっていたのだと思う。

ほのかは優しい。びっくりするくらい優しい。怒らない。
自分に対する何かは、大抵しんどくあっても受け止めてしまうのだ。

けれども、ほのかは誰かに注意したり、こうして叱ることは苦手だ。特に相手が子どもたちだったなら尚更だと思う。

彼女は、きっとこれから笑えるようになるために自分で決めたんだと思う。

子どもたちには、だいぶショックだったようだ。
ほのかが泣いているので、「落ち着くまで向こうで相談してな、どうしたらいいか。」と子どもたちをとりあえずあっちに行かせる。


そのあいだに帆花に伝える。それでいい。誰も傷ついていないよ。子どもたちはきっと、受け止める。大丈夫やで、と。

子どもたちはむこうで、ああだこうだと話している。

「やっぱりダラダラしたから。。。」
「いや!やっぱり謝らんといかんと思う!謝りにいこう。」

よかった。そう。それが一番大事なんだよ。
約束の時間に間に合わないだとか、自分たちが決めたことができなかったとか、ほんとはそんなことはどうでもいい。それは自分の世界のことだから。旅で大切なのはそこにいる、ともに旅している僕たちの気持ちこそなのだ。

誰も置いてけぼりにしない。誰もモヤモヤしたままにしない。違ったままでいい。だからこそ。こんなことも起こる。けれどそんな失敗をしてしまったときに素直になれるかどうか。そこには覚悟というか、確かな決意がいると思う。心にまで届くものは、それは自分の心でしかないのだ。


ひとりは夜のミーティングで振り返っていた。
「あのとき悔しい気持ちになった。悲しい気持ちにもなった。昨日だけじゃなくて、それまでにもそういうことはきっとあって、傷つけてしまっていたんだと思う。けれどもそれを自分が知らなかっただけだったんだろうなって。」
それでいい。そこが分かれば次につながるよ。

5時半から朝のトレーニングに出られた平磯さんとは、彼が折り返してきたときに合流して一緒に走ろうと僕が夜に約束をしていた。けれどもこのトラブルがあったことで出発がだいぶ遅くなってしまって、海沿いで合流どころか、僕らがいるところと、彼がいたところがつながるルートを違うところを選んでいたみたいですれ違ってしまった。平磯さんと道路で落ち合ってテンションがあがる子どもたちを想像していただけに残念な思いで僕は最後尾を走る。


「いま到着しました。会えなかったね。残念です。」
海沿いにつながるルートへの峠道を登りながらメールが届いた。ざんねん。けれどきっとこれにも意味があるのだろう。そう思いながら前に走るメンバーを見つめる。そしたらメッセージが届いた。


「ゆっくり待っててね」

もしかして。僕たちの居場所を伝える返信は既読にならなかったけれど、もしかしてを抱えながらけれど僕たちは僕たちがまず走ることだと海沿いに広がるルートを走っていた。1時間ぐらいだったろうか、後ろからビューッと影が追い越した。平磯さんだ。もうほんとなんというか救世主だ。何故か救われた気持ちがした。

「あー!自転車の神さま!」
(子どもたちに背中を見せるにはこれくらい言ってもいいじゃんねと平磯さん)
ものすごいスピードであっという間に小指の先くらいになった。


そうしてゆっくゆっくりとスピードを落として僕らと一緒になった。

平磯さんはいくつか子どもたちに語りかけてくださっているけれども、ひとつも自転車の乗り方のことはアドバイスしない。そのあと美味しいパン屋さんに連れて行ってくださったのだけれども、そのときもずーっと大きな笑顔のままで子どもたちに普通の話題を振っていた。そのスタンス。恐れ入りました。僕が学ばせてもらいました。


大きな気持ち。自分の背中。それは「いま」を見ているんだけれど、「いま」子どもたちに伝わることだけがゴールじゃないということを教えてもらっているような時間だった。「導くんだけれど、導くんじゃない」昨日の夜に語られていた言葉の、そのカタチがそこにあった。

いま改めてこうして自分の昨日をなぞりながら、情けない気持ちというか、自分の小ささを認識してしまうというか、平磯さんへの感謝の気持ちというか、とにかく複雑だ。ちょっと涙がにじむ感じ。こうしてレポートに書かなければ自分のなかにしまっておけるものだ。けれども僕はこれも残しておかないといけないと思う。伝えたいと思う。

そこにはずっと答えなんかなくて。答えを見出してしまった瞬間に見えなくなってしまうものがあって、だからモヤモヤして、それは完全に晴れることはないんだけれど、信じる気持ちと誰かのためという視点から自分に戻してくることで、晴れ間にはなるんだと思う。


そのあとの子どもたちはほんとにいい走りをした。集中力もよくもった。フェリー乗り場から歩いて楽しみにしていた八幡浜ちゃんぽんの店に行って、ちゃんぽんも、オムカツカレーもめちゃ美味しくて、フェリーでどう過ごすかと思っていた僕とほのかは寝てしまって、九州のルートの確認くらいで終了。


別府についたあとはそのまま去年の春もお世話になった海沿いの公園へ。去年のおかげでこうして迷うことなく子どもたちのことを導ける。完全に子どもたちには委ねていないけれど、そのこだわりと少し距離がおけるような気持ちになることができたかもしれない。導かないけど導く。

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