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へっぽこお遍路日記29「朝ごはんを食べたんか気をもんどったき、これですっきりしたわい。」
睡眠時間が足りないのではなくて、寝袋から出たあとカラダが冷えていくのがおっかなくて、なかなか起き出すことができない。朝ごはんもお菓子ぐらいしか残っていない。こんな日に自分を奮い立たせることができるのは、夜の宿が決まっているということ。これから足摺岬の金剛福寺まで歩いて参り、同じルートを折り返して昨日珈琲を点てさせてもらったまなぶさんのところまで歩けば、みんなに会える。
まだ夜明けには1時間ほどある真っ暗ななか、お堂にいらっしゃる空海さんの像にお礼を伝えて歩きはじめた。昨日の夜に声かけさせてもらったおじさん起きてるかなぁぐらいに家の方を向いたら、門のところに人影があってびっくりした。
「朝ごはんは食べたんか?」
いえ。まだです。
「朝ごはん食べていったらいい。はいりんしゃい。」
ありがとうございます!遠慮なくお邪魔させていただきます!
「おいさん一人暮らしやけ。けど味噌汁とごはんとあったらカラダがぬくもるろ。おいさんはもう食べたけ。」
そう言って、コンロでサッと味噌汁を温めてくださり、白いごはんと出してくださった。朝ごはんは諦めていたので、こんなに嬉しいことはない。
「ちょうどやった!まだ暗いけ声かけようか迷っとったらあんたが出てきてな。朝ごはん食べたかいなと気をもんどったき、すっきりしたわい!」
昨日、休憩所で野宿させてもらうことを伝えるためだけに挨拶させてもらったのに、こうして気にかけてくださっていたのだ。ほんとにありがたい。
ご飯を食べさせてもらった机は、きっちり台所の障子のところにくっつけてあって、TVの方を向いて食べられるようになっていた。のっていたのは、調味料に切り餅やひと口サイズに小分けされたお菓子。なんだかその感じがおじさんのひとりの生活を物語っていて、感謝とともに少しだけ切なくなった。
僕は帰るところも、待ってくれている人もいて、ひとりで遍路を歩いている。
そんな遍路をもてなしてくださった、おいさんには身寄りがあるのだろうか。
たっぷり9時間は寝たと思うのに、まだまだまぶたが重くて、半分目をつむりながら歩いているような感じで足摺岬を目指す。やっと目が覚めてきたようだと思ったころに、足摺岬のジャングルのようなまがりくねった木々のトンネルを抜けて足摺岬に到着した。そのままお寺に参る。金剛福寺は雰囲気のある大きなお寺だ。
折り返してからは、もうお昼ごはんは持っていないので、差し入れでいただいた柿の種とおまんじゅうを交互に食べながらしのいで歩く。こういうときに、ほんと自転車の旅は距離が伸ばせるし、たいていお店も届く距離にあることのほうが多いので選択肢がずいぶんと多いなぁと思う。食べ物も余分めに持っておくことができるし。こういうところは歩き旅のほうがずっとシビアだ。
今日は宿毛からまきさんが応援に来てくださった。ちょうど遍路道から出たところの海で珈琲を点てる。今日誕生日だそうだ。おめでとうございます。こうして誕生日の貴重な時間を使ってきてくださることに感謝の気持ちを込めて。まきさんお接待に、コンビニまで車を走らせてお昼ごはんを買ってきてくださった。もうほんまに1番嬉しいやつです。ありがとうございます。
夕方あと30分ほど!というところで前から歩き遍路さんがやってきた。数日ぶりに見かけるお遍路さん、若い男の子だ。ちょうどここにある民宿の女将さんに声をかけてもらって、ここで今日は泊まるそうだ。ちょうど女将さんが出てこられて、僕も一緒に休憩させていただくことになったので、珈琲を点てさせてもらった。女将さんお遍路さんをおもてなしされる思いをたくさん語ってくださったな。あと僕の藍染の敷物と同じ柄のものを持っているとうれしそうだった。
さて、日が傾きかけるなかを急いでまなぶさんのお家を目指す。なんとか暗くなるまえに到着することができた。まなぶさんがちょうど出てこられていて「おかえり!」と声をかけてくださった。あぁまた帰る場所が増えたんだ。
子どもたちの、犬たちも、猫たちも元気いっぱい。薪ストーブのあるキッチン兼居間でみーんなが一緒ににぎやかにいる。冬至なので柚子のお風呂、夜ごはんはウツボのフライ、おでん、たこ焼き、干物、すこーしだけお酒もいただいた。
すっかり自分も家族にむかえてもらったような気がして、とっても温かで幸せな夜の時間でした。今日という日に、お会いしたみなさんにありがとう。
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