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旅をイメージすることから、それは始まり。そして誰かとともにカタチになっていく。
だいたい旅に出るときというのは、見切り発車だ。
そう。僕の場合は。
なかなか旅のまえにしている準備というものを、昔は知る由がなかったと思う。けれども今はSNSがあるから、旅をしていたら旅をしているなりのSNSの情報が僕のところにも漏れなく流れてきて、その旅人たちの準備というのもまたそれぞれ。
発つ何日もまえに、
「旅の準備をやっと終えることができたので、これから◯◯してきます」
みたいな感じで、友人や家族といい感じの写真を撮ってアップしたりしているのが流れてきたりする。
そのことに対しては、もう尊敬しかない。
どうしてそうできるのだろうと。
自分はだいたいどんなときにでもギリギリ。
モノを買うこと、旅の荷物をとりあえずまとめていくこと、旅に出ることをお知らせすること。
それは旅が決まっているのだからTODOリストのようにこなしていく、というよりかは、僕の場合はTODOリストよりも、デッドライン(締切)が大きな雷雲のように空を覆っていて、その雲に追いつかれて雨に打たれるまえになんとか逃げ切れるか!みたいに旅の準備をしているような気がする。
何をこんなに自分ができないことを大袈裟に書いているのだろうとも思うけれど、朝の起きたての自分というものはたぶん頭が起きていないだけ現実的な取り繕いみたいなことからも離れているので、もうよしとするしかない。
「しかない。」
いい言葉だ。なんだかもう変えようのないことのように聞こえる。けれどもできる人からしたらそれこそ「敗者の常套句」みたいなことなのかもしれない。
というわけで、今回遍路を歩く僕もある程度バックパックに荷物が入ったと思えば、あとはソワソワすることもなく、かといって晴れ渡る空のような気持ちでいるわけでもなく、「まあなんとかなるだろう。とりあえず出発したなら」みたいな気持ちで、徳島の山で暮らすJOくんのところに車を預かってもらうために来ていて、昨日はジビエを料理したり、焚き火でコーヒーをいれながら、会いに来てくれた友人と話をしたり、それ日本シリーズだ、相撲の優勝決定戦だとテレビを見せてもらっていた。
旅の道具と服。おもろいなー。
だって旅を始めるまえには、頭のなかにはイメージしかないのだ。そのイメージのなかで自分を旅させながら、それに必要な衣装や道具を決めていく。
お遍路。
茶人。
屋根のあるところで野宿。
ごはんはつくれそうにないな。
売茶翁。
そしたら現代の茶人や。
茶人は着物。
着物は無理。
そしたら着物ってなんやろ。
日本の古来の素材。
麻。
色はどうする?
あのちょっとくすんだ茶色みたいなやつか?
茶渋。
イメージはできるけれども、その場を沈めるというか、引き立てはしないな。
そしたらなんだ。
そうか、やっぱり藍か。
藍な。
殺菌作用。
落ち着いた色。
日本古来のもの。
自分にもてる世界のあるもの。
そうか。
麻。
仕立てる。
うん、ふわりのひろみさん。
電話しよ。
ひろみさーん、お元気ですかー?
わー、まさくん元気?
あのね、相談があるんです。
現代版の茶人として歩き旅がしたくてその衣装を。
えーそうなのー!わかった!
色を悩んでいるんですよ。
そうねー。どんなのがいいかしらねー。
迷ってはいるんですけれど、やっぱり自分で染めてみたくて。
そしたらやっぱり藍?
そうなんですよー。やっぱりそこかと。
おっけーわかった。
ちょうどね、わたしもね、お客さんからメンズのものはないかって言われていて、けれどわたしメンズはつくったことないからね。
うんうん。
そしたらまさくんと作るやつをさ、コラボみたいなかたちでわたしの方で販売してもいい?
もちろんですー!かっこいいやつをつくりましょー!
そうしてzoomで2度ほど実際の洋服をあれこれ着てみながら、どういうコーディネートにしようか、カタチは、ということを打ち合わせて、あとはひろみさんが工場を持っているタイにオーダーを出して、そうして到着を待つことになる。
先月できあがった生成りの麻の衣装が届いた。
しっとりとしていて、厚みがあって、はいたときにきれいなドレープができる麻のパンツ。シャツはかっちりとしたスタンドカラーだけれど、麻のやわらかさが雰囲気を出している。
それを藍染の師匠の佐藤文子さんのところに持っていく。
まさくんおそかったわねー。
すんませんボーッとしていたので!
お掃除してたのよー。
どうもすみません。
そしたらサッと染める準備をして、作ってもらったもの持ってきた。
はいこれです。
しっかりしてるわねー。きれいなカタチだわねー。
ね!
あとは。下着とかは持ってきてる?いちばん肌に当たるものだからね、藍だったらね殺菌にもなるしね、消臭効果もあるしね。
しっかり水につけておいて、それからね、今日ちょっと染めておけばね、色を重ねていくのにね、明日が楽になるからね。
はい!りょうかいです!
今日はね、お兄ちゃんがカレー作ってくれたからね、それを食べましょ。ね、。
(そこから1日半、染めを中心のスケジュール)
まさくん、ほら、いい色が出たわねー。きれいよ、ほら。
よかったー!濃く染まってくれた!
そうなのよ、けどね上下おんなじ染まりだとね、引き立たないからね、染まりをねあえてズラすのよ。このパンツのほうが濃いほうが引き立つわね。かっこいいわよ。
ありがとうございます。
(染め終わり、翌日の朝)
そしたらね、まさくんコーディネートしておきましょう。そしたらね、かっこいいわよね。
はい!
このね首元がね寒いといけないからね、これをこう合わせてまくといいのよ。
わ!これやったら着物の前の合わせみたいになって一気に茶人ぽくなりますね。
いいじゃない!そして、これ。これちょっと羽織ってみて。
これは?
これはね、もうねこの手織りの麻の生地を織れるひとがいないのよ。その生地をね分けてもらってきたものをね、私が染めて仕立ててもらったの。着てごらん。
うわー!めっちゃかっこいい!
そうだわよ。かっこよくなくっちゃ。これね、旅でね着なさい。
いいの?ありがとう!
こうして僕の頭のなかのイメージでしかなかった現代の茶人みたいな格好で歩きながら珈琲を点てたい、その衣装がカタチになった。それも僕の大好きなひとたちの多大なご協力によって。
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自分が自分でいられること。
旅の日々で自分の心に浮かぶ思いや気づきを読み物として。僕の旅の生き方のなかで、読んでくださる方々の心に心地よい余白が生まれればいいなという…
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