僕はこの瞳で嘘をつく
今日も不穏なことを書く。
私は解離性記憶障害なのだが、記憶のない時でもきちんと行動して、例えば出かけて買い物をしたり、料理を作ったりしているらしい。
とりあえず、外でトラブルを起こした事はないようだが、北を含め、友人達にはとんでもない事をしたことがあるようだ。
北も友人たちも、何を言ってどうしてそんなことをしたのかなど聞かないので、結果しか知らないのだけど、私は嘘をついて、北や友人たちからお金を巻き上げていた。
北など1000万近く私に貸したらしい。
私はそれを使うとかでもなく、ただ口座に入れていたようだ。
ようだ、というのも、私にはその記憶は全くなく、去年廃人生活から復帰して、年末くらいにようやく大丈夫そうだと思った北から、はじめてその話をされたから。
親友に借りていたお金は実家が返済。
もう一人の友人と、北は返済を受け入れなかった。
こんな状態で働こうとしても、また新たな人間関係の中でこんな問題を起こして、警察沙汰にでもなったらどうしようとないし、働かないならお金はいくらあってもいい、貸した自分にも責任があると、自罰的な男たちだ。
北もその男友達も、定年までに2000万貯めれる目処がついてるらしいけど、寛大だ。
また、私は変な物に動揺する。
寒天とか空手とか。
ものすごく自分が不安定になるので、突き詰めて考えないようにしてるが、北は、心当たりがある、情報を持っている、でも、今はそれを聞くべきではないと思うと言う。
とにかく今を大切にしてくれ、無理をするな。
北はそれしか言わない。
他でもいろいろやらかしているようだが、北や友人たちは何も話さず、でも普通に付き合いがある。
不思議な関係だ。
私なら簡単に見捨てるだろう。
精神科の先生は、あくまで解離性記憶障害で、解離性人格障害ではないとの事だが、記憶のないときの私は、何をして、何を考え、何をやってきたのだろう。
精神科の先生は、万引きなどに発展してないからいいのでは?と。
そんなものなのか。
あまりにも自分の事なのに他人事過ぎて、今こうして文字を書いてる自分、料理して風呂に入ってる自分を不思議に俯瞰してみる。
これも、病気の自分が見せている愚かな夢なのではないか?
私はまだ、オーバードーズの悪い夢の中で、繰り返し繰り返し、脈絡のない幻を見てるのじゃないか?
少なくとも、記憶をなくした私は、ちょっとした詐欺師になれるくらいの悪知恵はあるということ。
何もかも嘘かも知れない。
30kgダイエットに成功したことも、簿記の勉強も、北の存在も。
都合のいい、痛みのない世界の夢。
日常生活を送りながら、ふと、顔を上げ、その存在の確かさを見極めるように目を凝らす。
指に触れる、ガラスの感触。
割って血を流したら、真実は見えるのか。
かりそめなら消えてしまえ。