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【幻冬社プラス立ち読み】 堤未果のショックドクトリン

抜粋:

ナオミ・クラインがその手口を暴いた『ショック・ドクトリン』から16年。

その間、ショック・ドクトリンには2つの大きな変化がありました。

ターゲットが世界規模になったことと、GAFA(アメリカ大手IT企業群)やBATH(中国大手IT企業群)のような、極めて危険な新プレイヤーが参入してきたこと。

9・11以降のテロとの戦いや気候変動、金融危機に新型コロナパンデミックなど、グローバル化が進んだことで、ショックの影響を受けるのが全世界になったのです。

私たちの日常はますます仮想空間と一体化し、ショック・ドクトリンの手法もよりスピードを上げ、見えなくなり、巧妙になってきています。


転載

幻冬社プラス立ち読み


電気代高騰の始まりは、3.11で仕掛けられたショック・ドクトリンだった 堤未果

テロや大災害など、恐怖で国民が思考停止になっている最中に、為政者や巨大資本がどさくさ紛れに過激な政策を推し進める……。その悪魔の手法を「ショック・ドクトリン」といい、日本でも3.11やコロナ禍の裏で、知らず知らず国民の情報や資産が奪われようとしています。

パンデミックで空前の利益を得る製薬企業や、マイナンバー普及に隠された政府の思惑など、強欲資本主義の正体を見抜き、私たちの生活を守るにはどうしたらいいのでしょうか?

国際ジャーナリスト 堤未果氏が警鐘を鳴らす、最新刊『堤未果のショック・ドクトリン』より、一部抜粋してお届けします。

*   *   *

猛スピードでグローバル化するショック・ドクトリン

3・11ショック・ドクトリンが日本を襲う

9・11後のアメリカで、猛スピードで導入される過激な新自由主義政策と、解体されていく経済、言論の自由が奪われ、市民のささやかな暮らしが踏みにじられ、合衆国憲法の精神が失われていく中で私を打ちのめしたのは、自分には何もできないという無力感でした。今思えば、ショック・ドクトリンを仕掛けられたアメリカで、私自身が恐怖で完全に思考停止していたのです。

人断ちで麻痺した体感を取り戻し、父と同じジャーナリストになると決め、再び訪れたアメリカで自ら取材した多くの人々の証言を聞くたびに、散らばっていたパズルのピースが一つまた一つとはまっていきました。このとき、自国政府にショック・ドクトリンを仕掛けられたアメリカ国民への取材をまとめたものが、「ルポ 貧困大国アメリカ」(岩波新書)というシリーズになったのです。

今考えると、空っぽになった私が再び歩き始めたそのタイミングで、ナオミ・クラインの原書と出会ったことは、不思議な力に導かれたと思わずにいられません。

彼女が暴いた、世界中で略奪の限りを尽くす「今だけカネだけ自分だけ」の人々と、彼らが仕掛ける強欲ゲームのルール

(ナオミ・クライン「ショックドクトリン」の)和訳が日本で刊行されたのは、それから4年後の2011年。東日本大震災の半年後のことでした。

岩波書店からこの本の推薦文を依頼された私は、躊躇なくこう書いたのです。

「3・11以後の日本は確実に次の標的になる」

9・11テロのアメリカや、スマトラ沖地震があったスリランカ、米英爆撃後のイラクなどと同じように、史上最悪の原発事故という巨大ショックに見舞われた日本でも、すでに復興の名の下で、数々のショック・ドクトリンが仕掛けられ始めていました。

日本中がショック状態にある隙に、東北では空港や水道を外資に売り渡す道筋がつけられ、今後20年続く巧妙な再生エネルギー賦課金制度が導入され、被災地には10年後にやってくるデジタル植民地の基礎となる、スーパーシティのモデル都市が作られていたのです。

アメリカの作家マーク・トウェインの、「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」という言葉は事実でしょう。

全く同じ出来事が起こるわけではないけれど、一つ一つの事象をつなぎ、長い時間軸で眺めると、ある共通パターンが見えてくるからです。

過去をひもとき、つなぎ合わせ、その法則を知ることで、歴史は私たち市民が未来を取り戻すための、強力な武器になるのですから。

デジタルで凶暴化するショック・ドクトリン2・0

ナオミ・クラインがその手口を暴いた『ショック・ドクトリン』から16年。

その間、ショック・ドクトリンには2つの大きな変化がありました。

ターゲットが世界規模になったことと、GAFA(アメリカ大手IT企業群)やBATH(中国大手IT企業群)のような、極めて危険な新プレイヤーが参入してきたこと。

9・11以降のテロとの戦いや気候変動、金融危機に新型コロナパンデミックなど、グローバル化が進んだことで、ショックの影響を受けるのが全世界になったのです。

私たちの日常はますます仮想空間と一体化し、ショック・ドクトリンの手法もよりスピードを上げ、見えなくなり、巧妙になってきています。

私たちがサービスと引き換えにこうした企業に渡すデータは、買い物だけで使われるのではありません。市民運動に投票行動、誰を好み、誰と付き合うかといったことまで、私たちの選択に影響を与えてくるのです。

新型コロナパンデミックが始まった2020年3月から12月、億万長者(上位1%)たちは資産を1兆ドル(約100兆円)拡大、特にGAFAを筆頭にしたビッグテック企業は過去最高の売り上げを達成しました。

その一方で、中小企業16万3735社が営業停止に追い込まれ、18歳から23歳の若年層の間ではうつ病が蔓延し、家庭内暴力や虐待、自殺が急激に拡大しています。

2011年の東日本大震災、2020年の新型コロナパンデミック、2022年に始まったウクライナ戦争、その間にずっとある気候変動の問題。これらは単発の災害ではありません。どれも根の部分でつながっているのです。

たとえば今、家計を直撃し、みなさんが悲鳴を上げている電気代高騰は、3・11で仕掛けられたショック・ドクトリンが始まりだったことをご存じですか?

他にも「え、あれもそうなの?」と驚くような事件、スキャンダルもありますが、それらについても一つひとつ明らかにしていきましょう。

もちろん、誰がそれを企て、誰がどう実行するのかというショック・ドクトリンの仕組みについても示していきます。検索エンジンの罠に引っかからない秘策もお伝えしていきましょう。

*   *   *

続きは本書『堤未果のショック・ドクトリン』をお楽しみください。

ソース

https://www.gentosha.jp/series/shockdoctorine/

以上