5 バックパッカーの聖地で考えた
コロナ前で、LCCが多数飛んでいたころチェンマイを訪ねた。
メーホンソンというタイ・ビルマ国境近くの村にある国際仏教瞑想センターを訪ねるためだった。チェンマイからはさらに車で数時間の距離にある。
ちょうどそのメーホンソンとチェンマイの間には、バックパッカーの聖地とでも呼べるような村がある。山の中なのにたくさんの安宿や小洒落たカフェがある面白い場所である。
以前、ぼくはチェンマイの宿であったノマドワーカーの中国人女性からこの村について聞いていた。
その村には中国系のファミリーがやっている小綺麗で美味しい菜食中華レストランがあってぼくのお気に入りになった。
さて、その村の外れにある安宿に泊まったときのことだ。
なぜか知らないが宿の女性オーナーが急に話しかけてきた。
・彼女は元は政府組織で働く職員だった
・タイ社会は超格差社会で貧しい人がわんさかいる
・その社会は蟻地獄のようで這い上がるのは難しい
・私ももっとまともな暮らしがしたいと思い宿をはじめた
こんな話だったと思う。
その旅では、バンコクからチェンマイに朝イチの飛行機で到着して、バスセンターまで行くバスがないか探していた。そのチェンマイ空港で知り合った女性警官(私服だった)に「タイの警官をどう思うか」と唐突に聞かれた不思議な旅でもあった。彼女もトレーニングでバンコクからチェンマイに初めて来たとか言っていた。
その旅では、どうもタイの社会をもっと間近にみて欲しい。まるで、そう囁かれているようであった。そのときは、まだ単なる外国人観光客だったんだけど。やっぱり呼ばれてたんかも💦
タイは観光立国ということになっているが、近づいてみると無形、有形のさまざまな歪みが社会のあちこちにあって、そのひとつである「経済格差」たるやまあひどいもんだと最近ははっきりわかってきた。
よく考えると、日本も似たようなもんで、1991年のバブル崩壊に始まり、だんだんと国民は貧乏になり、明日を保証されない。それどころか政府から収入の半分はむしり取られるバッタクリバー社会に近づきつつある。
その日本も、格差社会のはるか先を行っていたタイに近づいていると言っても良い。
タイの最賃も先ごろやっと日額300バーツから350バーツにあがったが、バーツの購買力で考えると3500円ぐらいの価値しかない。そう考えると日本でコンビニで時給900円だとしても8時間労働で日額7200円*だ。タイの非正規労働者は日本の半分の価値の賃金しかもらえていない。そりゃ暮らすの大変だわさ。ひとりではアパートも借りられない。
*ただ、日本では税金、健康保険、介護保険など政府にたくさんぼったくられて手取りは元の半分ぐらいしかもらえないので、簡単な比較は実は難しい。日本の非正規の方が2倍の価値の収入があっても、その半分を国に持っていかれると考えるなら、タイも日本も非正規にとっては地獄であるとも映る。
タイ国境はマレーシア、カンボジア、ラオス、ビルマと接していて、安い労働力が合法、非合法にタイに流れ込んでくる。だから賃金は放っておけば下方に引っ張られる仕組みなのだ。日本だってわざとか同じ仕組みを作ろうとしている。安い労働力として外国人を呼んで定住させる。そして外国人が経済の底辺を支える社会はすぐ間近だ。
タイの経済格差はどこから生じるか。それはお金持ちがひたすらお金持ちになり、経営者が国民にお金を分け与えないところからだ。まるで日本と同じである。タイでちょっとまともな会社に勤めても月給は20,000バーツ止まりである。これでなんとか20万円。やっとこさ日本の大学初任給なみなのだ。
つづく