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泣いても頑張ってえらかったね
”あなたの記事が話題です”
noteの通知に、そうお知らせがあった。
リンク元を覗いてみる。
なるほど。バトンリレーの企画を、もつにこみさんから振られたわけですね。
バトンリレーは、なるべく避けたいと思ってきたのですが、平熱のエッセイスト、もつにこみさんからのバトンとなれば、受け取りましょう。
こちらが、企画元
◇ 心に残るあのエピソード ◇
冬休みが開けてしばらくすると、娘が家で知らない歌をうたいながら踊りだすことが多くなった。
妻さんに聞くと、幼稚園の発表会の練習なんだという。
んっとね、クレヨンのくろくんって言うね
いろ~んないろのクレヨンがいるんだけどね
ほのかはね、くろくんをやるの
娘からの断片的な情報を頼りに、調べてみる。
どうやらこの絵本を歌劇にして公演するらしい。
さっそく週末に本屋さんに行き、絵本を買ってくる。
なるほど、ほのかの歌っていた歌詞とリンクする。
絵本も買ってもらって、主役のくろくんをやるということで、日々の練習にますます気合が入っているのが分かる。
聞くと、各色3~4人で構成されているらしく、主役のくろくんも3人いるそう。
数日後、仕事中に妻さんからメールが届く
”幼稚園から連絡で、劇の練習中に自分のステッキが右目にあたって眼底出血。病院で診察を受けてほしいとのことで、眼科を受診しました。ちょっとだけ眼球に傷がついてるけど、心配はしなくて良いとのこと”
おお。練習を頑張った証だね。大事にならなくて良かった。
一週間後に再受診し、傷も治っているので大丈夫と診察を受け、ほっとする。
さらに数日後、妻さんからメール。
”幼稚園が終わったあと、近くの公園でお友達と遊んでたんだけど、遊具を昇るときに、お友達の靴がほのかの右目にあたって、また眼科を受診しました”
おお・・・。来週本番なんだけど大丈夫かな。
と心配していたけど、本番前日に診察を受けて、大丈夫だと言われる。良かった。
◇
いよいよ本番。見守るパパママも緊張する。
幕が上がり、最初は園児みんなで楽器の演奏。鈴とカスタネットを交互に持ち替えて、リズムよく上手に演奏する。
最初は緊張で強張ってた表情も、徐々にほぐれていく。
幕が締まり、後ろ側でバタバタと準備をしている様子が聞こえてくる。
「オペレッタ くれよんのくろくん」と音声が流れると、いろんな色のクレヨンに変装したこどもたちが、順番に現れては、それぞれの色の絵を描くようにして踊る。
あおいろとみずいろは、空の色
あかいろとピンクは、お花を
きいろは、ちょうちょを
ちゃいろは、木や土を
みどり、きみどりは、葉っぱを
そしてくろくんの出番
みんながいろんな絵を描いているのを見て、ぼくも入れてとお願いをする
ほのかは、振り付けどおりに、上手にできている。
だけど、くろくんはお断りされてしまい、舞台からはけていく。
くろ以外のくれよんに扮したこどもたちが、いっせいに踊りだす
それぞれ手にしたステッキを上下に振りながら、元気よく踊っている
しばらくすると、そのまえを通って、くろくんが再登場する。
あ!!!
一瞬だけ、顔を歪めたと思ったら、片腕を目にして、泣き出してしまった。
舞台中央で、必死に涙をこらえて俯きながら、それでも音楽に合わせて振り付けを踊る。
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最前列で見ていた妻さんが、なにがあった?とこちらを見る。
舞台袖の先生方も、事情が分からないまま、様子を見ている。
一眼レフの望遠で追いかけてたパパには見えていたよ。
お友達のスティックの先のリボンが、ほのかの右目に当たったのを。
くろくんは、膝を抱えて座り込む演出になった。
娘は膝を抱えて、必死に泣くのを堪えている。
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つい駆け寄って声をかけてあげたくなる。
それでも、頑張って舞台に立ち続ける娘を見て、なんとか踏みとどまる。
座る演出で少し回復出来たのか、その後の振り付けも、何とかやりきった。
発表会が終わり、子供たちが出てくるまでのあいだ、保護者が園庭に集まる。
そこで妻さんに説明する。スマホの動画を再生してみると、目に当たった瞬間を捉えていた。
一斉に子供たちが飛び出してくる。
一歩遅れて、とぼとぼと我が娘が歩いてくる。
目を赤く腫らして、涙をこらえる娘を妻さんがぎゅっと抱きしめる。
上手にできたね。最後までよく頑張った。偉かったね。
と、なだめながら家に帰る。
玄関を開けて、リビングに入ったところで、ぴたっと立ち止まる。
一拍置いて、声を張り上げて泣きじゃくる。
くやしかった!ほのか、くやしかった!!
ずっと堪えてきたものが、あふれ出した瞬間だった。
耐え切れず、パパもママも涙がこぼれる。
よく頑張ったね。
◇
がんばったご褒美はなにが良い?と聞くと、焼肉屋さんに行きたいとのリクエスト。
じゃあ、明日にしよう。
予約の際に、小さなホールケーキをお願いする。
電話口で、プレートにはなんて書きますか?と聞かれ、ほのかが元気よく応える。
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◇
読んでいただき、ありがとうございます。
もつさん、たしかにバトンを受け取りましたよ。
さて、私からは、この方にバトンをお渡ししようかな。
いつだって全力。前だろうが後ろだろうが、ゲームだろうが、スピリチュアルだろうが、全力。
人を想うことも全力。だから好き。
かすみさん、忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
ちなみに私もかすみんの企画に参加しました。