#47 「ターコイズ (トルコ石) 12月の誕生石」に思うこと

朝起きて、
カーテンを開けて、
真っ青に晴れ渡った冬の朝の空を見上げる。そして、思った。

「ああ、もうこれは今日書くしかないだろうな・・・」

この宝石には苦手意識があって、ちょっと先延ばしにしていました。
本日、わたしが「思ったこと」を綴りたいのは、12月の誕生石にして3つ目、
「ターコイズ(トルコ石)」です。

ちょうど、ほんのちょっとベールのように薄雲がかかった柔らかな青空に、太陽の光がキラキラと表情を添えてくれている今の情景。まさに、「上質のターコイズを思わせる空だな」と感じます。

ターコイズに苦手意識があるのは、この宝石は人類との歴史がとても深く、ただ単に「綺麗な宝石」として語っていいのか疑問があるから。
ある国や地域では古来から神聖な石として崇められ、単なるファッションで身につけるだけの存在ではありません。
宗教とはちょっと意味合いが違うかもしれませんが、そういった神格化された存在を語るには、日本のように基本的には無宗教の環境で育った私としては地雷を踏みそうで怖い。
なので、今回はさらっと綴っていきたいと思います。

まず、簡単にターコイズの特徴をおさらいしてみます。

○濃い~淡いの違いはあるが、基本は水色。
○不透明
○「自色性(じしょくせい)」の鉱物で、自分自身の体を形作る成分のうちの「Cu(銅)」が原因で、美しいスカイ・ブルーの姿になる。そこに「Fe(鉄)」が不純物として混ざると、グリーン味を帯びた個体になっていく。
○"マトリックス”と呼ばれる、黒い他鉱物の網目模様が入ることがある。好みにもよるが、基本的には濃いめのスカイ・ブルー一色のものが最上級品とされる。しかし、国や地域によってはこのマトリックスの入り方によって、この模様が無いものを凌ぐ価値が出るものがある。

ターコイズは、いわゆるダイヤモンドやルビーのように透明感があってキラキラした分かりやすい美しさを持ったものではないですが、シルバー・アクセサリーなどの分野では非常に人気のある宝石です。

しかし、本当に上質なターコイズはかなり高価であるために、見た目だけを似せた「模造石(もぞうせき)」も多く出回っている厄介な宝石でもあります。
どのような素材のものがあるかというと・・・

○プラスチック
○他の多孔質(たこうしつ/潜在的に細かな孔がたくさんある物質)の鉱物を、ターコイズ・ブルーに染めたもの(ハウライトや石灰石など)
○マトリックス(網目模様)に似せた模様も付けられる
○ターコイズの粉末をぎゅっと固めた「再生ターコイズ」

などなど・・・。
そして、見た目だけを似せた「模造石(もぞうせき)」だけではなく、「合成ターコイズ」というものもあるから厄介です。

「模造石(もぞうせき)」は見た目を似せただけのものなので、しかるべき光学検査をすればすぐに看破できるのですが、「合成石(ごうせいせき)」というものは基本的には

「生成の過程が人間由来なだけで、化学成分、光学的性質は天然と同じ」

というものになります。

それでも、ルビーやサファイア、エメラルドなどは透明なので、生成過程の最中に結晶内に内包される「内包物(インクルージョン)」などでおおよそ見分けることができますが、不透明なターコイズはそうはいきません。

そこで、ターコイズの合成石を看破するときはまず、表面の状態を確認します。

かつて私は、拡大検査で石の表面に「クリーム・オブ・ウィート」と呼ばれる白い粒々したもの(ミルクに浮かぶ脂みたいなもの)が見られるという看破方法を学んだことがありましたが、これの見分けが難しい。
結構、品質が低めで淡めの色合いのターコイズや、保管方法が良くなくて「褪色(たいしょく/色があせること)」が進んでいる天然のターコイズにも、似たような見た目をしているものがあります。

折に触れてターコイズの鑑別も行ってきましたが(買い取りの際)、実際に鑑別機関での鑑別結果と自分の見立てを比較した際の結論としては、

「模造石は看破可能だが、合成ターコイズは研究所に任せるべき」

というものでした(個人的感想)。

どの宝石でもそうですし、最近の一番ホットな話題で言うと「合成ダイヤモンド」が昨今では市民権を得始めていますが、「宝石鑑別・鑑定機関」と「合成・模造宝石を創る技術」の闘いは終わることがありません。
美しいものを探求する人間の飽くなき好奇心にとって、"宝石"という分野は、きっと魅了してやまない世界なのだと思います。

なので日々、鑑別・鑑定の技術が上がっても追いつけ追い越せの勢いで、「人を欺く目的の宝石」というものの創作技術も進んでいます。

例えば50年前には「天然の宝石」「天然の色」とされていたものが、実は現代になって「合成石だった」「人工的処理された色であった」という話は、この業界では珍しくありません。
どうしても、看破の技術と偽装する技術が拮抗する時代というのが定期的に訪れます。
私は、ターコイズを見るとどうしてもそれを思い出してしまう。
もしかすると、一見人気のあるサファイアやエメラルドよりも、ターコイズの模造品や合成石の方が巷には溢れているかもしれない。

でもそれは、返せば「紀元前から人間とともに存在し、最も愛され、活用されてきた、太古から人類に寄り添ってくれている宝石」であるからだともいえます。
お守りとして、装飾品として、こんなにも昔から愛されている宝石は他に見たことがありません。

先日綴った、同じ12月の誕生石である「ラピス・ラズリ」の夜空を思わせる深い藍色とは対照的な、スカッと晴れ渡った雲一つ無い青空色をした「ターコイズ(トルコ石)」。
古(いにしえ)から伝えられる神秘の力があっても無くても、指にはめ、もしくはネックレスとして首から下げ、バングルとして腕につけて、華やかさを添えるために耳にそっと付けるだけで、「なんか、今日も一日頑張れそう!」と晴れやかな気持ちにしてくれるのが、この表情豊かな模様と色相のターコイズの魅力なのかもしれません。

不思議なことに、ここに思ったことを綴ったことで、ちょっとだけターコイズに対する苦手意識が私自身、弱まった気がします(笑)
小粒で色の良い、スタッズ・タイプのピアスでも探してみようかな(^^)

<ターコイズ(トルコ石)の特徴>
・硬度: 5~6(傷が付きやすいので、重ね着け注意)
・太陽光で褪色(たいしょく/色あせ)するので、保管は光の当たらないジュエリーボックスの中が望ましい。
・熱や酸、薬品に弱い。着けっぱなしにせず、柔らかな布で汗を拭いてあげたり、石鹸などが付いたままにならないようにしてあげる(変色を防ぎます)。
・模造品が多数あるため、高額なものは鑑別書の有無を確認してから購入するのがお勧め(鑑別機関でないと、専門家でも識別困難)。

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