#29 「オパール 10月の誕生石」に思うこと
オパールと言えば、虹色の遊色がゆらめく姿が一番に思い浮かぶ、宝石の中でも華やかな宝石の一つです。
まもなく訪れる、10月の誕生石。
今日はオパールについて思ったことを綴っていきたいと思います。
オパールには、大きく分けて2種類あるのをご存知でしょうか。
私たちが知っている、七色の遊色が出る「プレシャスオパール」というものと、遊色が全く出ない単色の「コモンオパール」の2種類が存在します。
簡単にその特徴を書くと・・・
○プレシャスオパール
・ホワイトオパール→乳白色の地に、七色の遊色
・ブラックオパール→グレー~黒の暗めの地に、七色の遊色
・ウォーターオパール→透明な地に、七色の遊色
・ファイヤーオパール→鮮やかなオレンジ色の地に、七色の遊色
○コモンオパール
・パステルカラーの白濁したブルーやピンク、グリーンなど。可愛らしいベビー・カラー。
プレシャスオパールの「プレシャス」とは、「Precious(貴重な)」、コモンオパールの「コモン」とは「Common(平凡な)」という意味です。
私たちが「オパール」として目にするのは宝石のオパールなので、一般的にあの華やかな七色が出る石が当たり前だと思ってしまいますが、実はオパールのあの「遊色(プレイ・オブ・カラー)」は、かなり奇跡的な構造で生まれています。
通常「宝石」というものは"結晶構造を持つ鉱物”であることが多いのですが、オパールは一定の結晶構造を持たない「非晶質」と呼ばれる宝石。他には、樹脂の化石である「コハク(琥珀)」や、身近なところで言うとガラスがこの非晶質のものにあたります。
ではどういう構造になっているかというと、小さな粒が整然と並んでいる状態。水晶を形作っているのと同じ成分「二酸化珪素(けいそ)・SiO2」の電子顕微鏡レベルの小さな粒が、立体的に整然と折り重なっています。
私たちが目にするもので例えると、クローゼットの中におく湿気取りの粒々が入ったものが、湿気を含んで膨らんだ状態を想像するとわかりやすいかもしれません。あの粒々が規則正しく、同じ大きさで、整然と並んでいるものだけがあの「虹の七色の輝き」を表します。
この粒が不揃いな大きさだったり、整列せずに思い思いに並んでいると「コモンオパール」の遊色が出ないオパールになります。
この虹色の秘密は、光がオパールに当たってこの粒々の間を透過するときに光の成分が分離することで現れます。
これを「光の回折(かいせつ)」といいますが、「空に現れる虹」と同じ現象です。空気中の水滴で拡散された光によって現れる虹が、宝石の内部構造の中で現れているということです。
オプレシャスオパールの中には「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」すべての色が出ているものが稀にありますが、この赤色が出ているものが最も稀少です。これは、「珪酸球が十分大きくて光の分散が大きい」ものしか出ません。逆に、「珪酸球が小さくて光の分散が小さい」ものは、一般的に見かけることが多い「グリーン系の遊色がメインのオパール」ということになります。光の分散が弱くて、赤や黄色などの光が私たちの目に届かないわけです。
コモンオパールは、そもそもこの粒(珪酸球)が不揃いなために遊色は出ません。でも、半透明でとっても可愛らしい見た目をしています。ジュエリーや宝石として扱われるのはベビーピンクやミントグリーン、ミントブルーなどの乳色味を帯びたもの。ただ、現段階で私はこの色の原因までたどり着いていません。だれか、ご存知の方はいらっしゃらないでしょうか・・・。単色ですがコモンオパールにしか出せない魅力的な色合いと艶が美しいと思います。ただ、グリーンやブルー系の色のものは時間が経つと色が変化してしまうので注意が必要なようです。
オパールは、見る角度によってころころとその姿を変えることで、かつては「心変わりの石」などとして嫌われていたことや不吉だと考えられていた時代も合ったようです(小説の影響だとか)。呪われたホープダイヤモンド(ブルーダイヤモンド・スミソニアン博物館蔵)もそうですが、いつの時代も伝説やイワクのそのストーリーを作り上げるのは人間の空想力と想像力。その時代、オパールを扱っていたジュエリー店としてはとても迷惑な話だったとは思いますが、人間は「物語があるものに惹かれる」ということも事実です。
それが幸せなエピソードでも、不吉なエピソードでも、自分と重ね合わせてどうしても惹かれてしまう。それが妖しい美しさをもつ宝石なら尚更です。
今度は、あなたがその宝石を身につけて、新たなエピソードを作り上げてください。
<オパールの注意事項>
・硬度: 5~6(ガラスと同じくらいか、ちょっとガラスより弱い)
・組成に10~20%前後の「水分」を含むため、乾燥に弱い。
→夏場のプールや海での着用はお勧めしない。保存の際も、乾燥に注意。保管の間はたまに表面を指で撫でてあげると、人間の油分で程良く守られる。
・熱や洗剤に弱いので、入浴時や手を洗うときなどは外す。
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