#33 「part1 無色の宝石」に思うこと

昨日は「黒色の宝石」について思いを綴ったので、今日は「無色の宝石」について書きたいと思います。

まず「宝石」として認められるには、

○美しさ
○耐久性
○希少性

の3点が欠かせないですが、その中の「美しさ」にも種類があると思います。

○「色」の美しさ
○「形」の美しさ
○「透明度」の美しさ
○「輝き」の美しさ

などなど・・・。
人によって、「美しい」と心に響くポイントは違いますよね。

今回はその「色」が「無い」宝石に向けて思いを馳せるわけですが、上記のように美しさの指標に「色」が入っている以上、「色が無い(無色)」状態で宝石として"美しい”と評価されるものはそう多くないと私は思っています。

珍しさはありますよね。

すべての宝石は大自然の過酷な環境の中で、私たちの想像を絶する長い時間をかけで結晶します。その中でどうしても不純物が入り込み、それが原因で"発色する”。

色が発現するのは不純物の存在だけが理由ではありませんが、多くの場合はそうです。

私の宝石人生の始まりは、大学を中退して今は無き「赤坂宝石彫金学院」に体験入学をしたところからでした。

「彫金科」を希望したはずなのに、何故か「鑑別科」に体験入学になっていたのです。係りの先生の、

「せっかくだから、経験していったら?」

の言葉に何となく従ったことから、「造り」ではなく「宝石」に徐々にシフトチェンジしていったのだと思います。(この後、研磨科なども経ますが・・・(笑))

そこで出会ったのが、「4つの無色の宝石」達でした。
もう20数年前のことなので記憶は曖昧ですが、

○ダイヤモンド
○キュービック・ジルコニア
○ガラス
○イットリウム・アルミニウム・ガーネット(通称:YAG)

この4種類だったと記憶しています。

それぞれが顕微鏡にセットされ、肉眼で観察できるガラスケースに入ったものも用意されていて、拡大で見たときと肉眼で見たときの印象で、4種類をそれぞれ「当てる」というゲーム形式でした。

今見れば、まあ大体肉眼でも判別はつきます。
石マニアの方やジュエリー好きで宝石を毎日見ている方でも、きっと見分けがつく方は少なくないでしょう。

でもそのころの私は、地方の田舎育ちで宝石とは無縁、ただ憧れだけで宝石業界を目指していた小娘。

「こんなの、分からないよ・・・」

とドキドキしながらその問題にチャレンジしました。

30分くらい、ああでもない、こうでもないと、それぞれの宝石の特徴の表とにらめっこをして、結論を出しました。

人間って、本当に単純です。

結果、全問正解。そして先生に、

「彫金とかよりも鑑別の方が向いているんじゃない?」

と言われて、雷に打たれたような気持ちになりました。

「あれっ!?今日、彫金科ではなく鑑別科に間違えて体験入学したことって、運命だったのかな!?才能あり?」

なんて、感じたわけです(笑)
まあ、そんな単純で短絡的な自分自身のことは嫌いではないですが・・・。

その4つの宝石のわかりやすい特徴は、以下の通りです。

○ダイヤモンド
→誰が見ても完璧で硬質な輝き。硬度の高さから生まれる研磨状態の良さから、ファセットエッジ(面と面が接している角のところ)が鋭く、ダイヤモンド特有。(ナイフ・エッジと呼ばれる)

○キュービック・ジルコニア
→ダイヤモンドの分散度(虹色の輝き)が「0.044」に対し、「0.06」前後と非常に強い。わずかな0.02前後の数値の差ですが、拡大してみるとちょっとわざとらしい虹色の輝きに感じる。ダイヤモンドと比べると、拡大検査で若干ファセットエッジが甘い(丸みを感じる)。

○ガラス
→特殊な鉛ガラス(分散度高い)でない限り、虹色の輝きは感じない。他の3種類の無色石と比べると、明らかに輝きが弱く、"透け感”によって暗く感じる。

○イットリウム・アルミニウム・ガーネット(通称:YAG(ヤグ))
→合成の無色系のガーネット。これはあまり現在は宝石用では見ないですが、明らかに"天然ではない”と何か感じるものがあったような気がします。分散度も弱め。

※「分散度(ぶんさんど)」とは・・・
物体に入射した光は、光を構成している虹の七色「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」それぞれの色の固有の角度で屈折して分裂します。その分裂した光が私たちの目に「虹色の輝き」として見えるわけですが、その角度が大きければ大きいほど「虹色の輝きが強く見える」と言う性質があります。そしてそれはそれぞれの宝石種に固有のものなので、鑑別の一助になります。

YAG(ヤグ)だけが、ちょっと曖昧で、もしかすると明らかに「ダブリング(入射した光が2方向に分かれて向こう側のエッジが二重に見える現象。複屈折)」が見える「モアッサナイト(合成石)」だったかもしれません。
初心者には、YAGはちょっと難易度が高いような・・・・。

そんなこんなで、無色石4種類をすべて見分けることができた私は

「無色でもこんなに見た目や印象が違うなんて、宝石ってなんて奥深いんだろう。他にはどのようなものがあるのだろうか?」

と一気にその世界に引き込まれていきました。

なんか、無色石について思ったことを綴ろうと思ったのに、私の「無色石」の思い出を語ってしまいましたね。

ちょっと長くなってしまったので、次回改めて他の無色石についても思ったことを綴っていこうと思います。

ご興味があるかたは、是非引き続きよろしくお願いいたします(^^)

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