#03 ダイヤモンドの「蛍光性」に思うこと


宝石には、太陽の紫外線に当たったときに「自らが発光する」という性質を持った石が存在します。

たとえばダイヤモンドやルビー、スピネルやフローライトなどたくさんの宝石に存在する性質ですが、個体によって発光する「色」も「光の強さ」もさまざま。しかも、同じ宝石種のものでも発光するものだったりしないものだったり、かなり多種多様です。

今回はダイヤモンドに絞って、思ったことを綴っていきたいと思います。


まず、「紫外線蛍光」はなぜ起こるのか?

これは、簡単にいうと紫外線のような「パワーの強い光」がダイヤモンドに当たったときに、原子レベル・電子レベルでの「励起(れいき)」というものが起こります。この「励起(れいき)」とは、紫外線というパワーを得て、電子達が結晶間で大暴れしている状態。その大暴れしているときにエネルギーが生じて、ダイヤモンドの場合はそれが「発光」というまばゆい光を発する状態で私たちの目に届きます。

例えば、ダンスCLUBに白い洋服を着ていったら青く発光したり、光るジグソーパズルなどでブラックライトに当たったときにパアァ!と輝いて見えるシリーズのものがありますよね。見た目の印象としては、あんな感じです(実際には畜光現象だったり、厳密に仕組みは違うかもしれませんが、見た目の印象がにています)。


次に、ダイヤモンドの「蛍光色はどんな色」があるのか?

これは、私が今までに見たことがある色合いに限ってしまいますが、

○ブルー(蛍光のあるものではもっとも多い色。強・弱は個体差あり)

○イエロー

○グリーン

○ホワイト

○レッド

○オレンジ系

上記の色で、カラーレスのダイヤモンドが紫外線に当たったときだけその色に発光するのです。想像しただけでも、神秘的ですよね。

特に「赤色蛍光(レッド)」の性質を持つ有名なダイヤモンドといえば、「呪いのホープ・ダイヤモンド」で有名なアメリカのスミソニアン博物館に展示されている真っ青な「ブルー・ダイヤモンド」です。私は実際には見たことはないのですが、実物を見た友人によると定期的に紫外線を当てる演出がなされているようで、ディープブルーから真っ赤に発光するその様は何とも形容しがたい美しさだということでした。


「蛍光性」はそのダイヤモンド(他の宝石もそうですが)ここが保有する"個性”であり、上記のような美しさや神秘性におけるメリットもありますが、実はデメリットもあります。

暗いところでブラックライト(紫外線)に当てたとき、この種類のダイヤモンドはまばゆい光を発します。では、太陽の下(紫外線下だけど明るい場所)ではどのように見えるのか?

これも個体差があり一概には言えないのですが、「VERY STRONG(ベリー・ストロング)」もしくは「STRONG(ストロング)」とその蛍光色の前に「強い」とついているものの多くが、太陽の下で発光することで、肉眼では「白く曇って見える(業界ではオイリー(油膜が張ったようだから)という)」現象が起きます。もちろんこれは紫外線に当たっているときだけに起こる現象で、正直そこまで「白く曇ってしまった!」というほどに見えるわけではありません。他のダイヤモンドと並べてみたときに、「ああ、言われてみれば若干そうかもね」という程度です。

輝きが重視のダイヤモンドにおいて、かなり致命的な欠点のようにも感じますが、これも必ずしも「STRONG」と付いているものが全てそうであるわけでもない・・・。蛍光性がないものと全く輝きが変わらないものもあります。

実物を確認して、自分にとって許容範囲かを判断することがとても大切ですね(可能なら、太陽光の下で見せてもらえるお店さんだとありがたいですよね。デパートとかでは難しいか・・・)。


しかも、この太陽光下での「オイリー現象」ですが、人によっては青白色に怪しくぼんやりと見えるので、かつては"オーバー・ブルー”という名で人気を博した時代もあったそうです。現在でも、様々な蛍光色のダイヤモンドをコレクションしている方がいらっしゃるほど、人気のある一面もあります。


宝石は、大地が生んだ天然の奇跡の産物。

その個々に様々な特徴がありますが、それを「欠点」と捉えるか「美点」として楽しむかは人それぞれ。

自分が納得できる宝石と出会えるのが、何より一番大事です。


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