#26 「クンツァイト 9月の誕生石」に思うこと
宝飾業界にいても、誕生石に興味のない人間はいます。
例えば結婚10周年に贈るSweet10ダイヤモンドや婚約指輪の「給料の3ヶ月分」(古い?)とか、気付いたら宝飾業界の販売促進商法に巻き込まれているイベント的な物もあります。
本来なら金額で愛の重さは量れないけど、"自分のためにこれだけ頑張ってくれた”という証を高価な宝石で感じるということは確かにあると思います。(宝石に限らないけど、それにかけた金額と時間が重要になるみたい)
そもそも、誕生石も国によって当てはめられる宝石が違います。
一応、その起源は紀元前にまで遡るといわれていますが、国によって若干その対応するの宝石種の違いを考えると、「その国で需要がある宝石」「比較的入手しやすい宝石」が当てはめられているのではないかと感じます。
ともあれ、わたしは誕生石は大切にしたい派。
誕生石を否定したいわけではありません。
ただ、今回の2021年に、それぞれの月に合計で10種類の新たな誕生石が加えられたことには、どうしても宝飾業界の商売の匂いを感じてしまい、まだちょっと受け入れられていません。
それぞれの石が、それぞれの月に当てはめられた根拠が感じられないからかな。
なので、新しく追加された宝石に関しては、個人的にその意味というものもこじつけながら思ったことを綴っていきたいと思います。
さて、今回は前回の9月の誕生石に続いて、新たに同じ9月の誕生石に加えられた「クンツァイト(Kunzite)」。
簡単に、特性をお伝えいたします。
○鉱物名→スポジュミン(Spodumene)
○和名→リチア輝石
○色→ピンク色~ライラックピンク色
○硬度→7(水晶と同じ)
○劈開(割れやすい方向)→一方向に完全
○光学特性→複屈折性(光が内部で分かれることで、エッジが二重に見える)
○産地→主にブラジルやアフガニスタンなど
ざっとこんな感じでしょうか。
(難しい数値系は省く)
クンツァイトの独特なパープル味を帯びたピンク色は、濃淡は様々ですが見慣れてくると他のピンク色系の宝石とはその色相の感じ方が全く違います。独特なテロンとした艶感がとても美しい宝石。
この美しいライラックピンクの色は、「Mn(マンガン)」が原因だとか、今は「Li(リチウム)」が原因だとか、諸説あるようです。
宝石あるあるなのですが、分析の技術が日々発展する中で、昔と今とで事実が違っていることはよくあります。
この点は、まあ踏まえた上で付き合っていくことが宝石と歩んでいく上では必要不可欠です。
ネットで検索すると、結構サイトによっても言っていることは違いますしね(私も含め)。参考にする程度が程良いです。
クンツァイトは、上記にも書いたように「一方向に完全な劈開面(割れやすい方向)がある」という点を注意しないといけません。硬度は水晶と同じ「7」あるので傷には強いですが、衝撃にもろい「靱性の低さ」が加工と使用上の注意ポイントになります。
クンツァイトは比較的、内包物(インクルージョン)が少なく、大きな結晶で産出し、カット石も大きく、美しくいジュエリーに加工されることが多いです。
技術的には非常に難しいとは思うのですが、爪留めされているものよりも石の周り全体を金属で囲っている「覆輪留め」のデザインの方がお勧めです。使用中に宝石がぶつかったり、どこかにこすれたりするのを枠が守ってくれるので、理想的なデザインだと個人的には思います。
ただこれは、職人側からすると加工が怖いとは思うのですが・・・(覆輪留めは、少しずつ石の周りの金属を叩きながら石に向かって枠を倒していくらしい)。使う側としたら、覆輪留めの方が長く使えるし、安心ですね。
また、クンツァイトは「褪色性(たいしょくせい)=色褪せること」がある宝石です。日光などに長時間当てたりすると、色が薄くなります。
日光の下で宝石を保管するする人はあまりいないと思うので、例えば夏の海での日光浴などの際には外した方が無難です。
クンツァイトは、個人的にはとても扱いが難しい宝石だと感じます。
大きくて美しい宝石ではあるのですが、リングのように動きのある場所に着けるよりも、ネックレスやピアスなど、行動による石へのストレスが少ないアイテムで身につけるのがお勧めです。
かつて私が出会ったお客様の中で、印象的な男性の方がいらっしゃいました。
介護されていたお母様が亡くなられたとき、その事実が受け入れられず、耐えられなかったときがあったと。そんな時、宝石に癒しの力があると聞いて試しに持つようにしたら、不思議と心が静まって何とか今、生きていますと。お財布から、小さな袋の中に入ったキラキラと輝く小さなカラー・ダイヤモンドを見せてくれました。「私はこれのおかげで、母の死を受け入れて乗り越えている最中だと思います」と仰っていました。
宝石自身には特別な魔法や力はありません(たぶん)。
でも、その「宝石という不思議な美しい存在に心を寄せる人間の想い」には、計り知れない何かしらのパワーがあると思います。
あなたの誕生石は、何ですか?
その宝石を身につけ、ワクワクして、自信が持てて、「さあ、これを着けて外へ出かけよう!」と動くあなたの心と行動自体が、きっと数々の楽しい出来事を引き寄せるのだと思います。
なんか、またスピリチュアルな話になってしまいましたね。
では、また次回!(^^)
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