人間ではない芳一

北海道の開拓村の最後に一つだけ残った掘っ立て小屋の壁が、不気味な音を立てて揺れていた。耳なし芳一が―そのように名付けられた、両耳が無い巨大なヒグマが―小屋に体当たりをしていた。芳一は家畜には目もくれず、人ばかりを狙った。鎌男に耳を奪われた芳一は、深く人を恨んでいた。#耳なし芳一

— 耳なし芳一bot (@bot78741637) July 30, 2022

「前世はヒグマだったこともある。人だったこともある。しかしいつも耳が無かったな。今度もそうだ。今度はどんな一生になるんだろう。」今度の芳一は、ホタルイカだった。他のホタルイカも、彼を他のホタルイカと一緒にぬたしにした居酒屋の大将も、芳一に耳がないことを気にしなかった。#耳なし芳一

— 耳なし芳一bot (@bot78741637) February 14, 2023

人間の時も、ヒグマの時も、ホタルイカの時も耳を無くしてしまった芳一は、今度はキリギリスに生まれかわった。今度こそは耳を失わずに天寿を全う出来そうだ、と油断していたら、散歩中の保育園児に捕まり、たちまち両足をむしられてしまった。キリギリスの耳は、足にあったのだ。#耳なし芳一

— 耳なし芳一bot (@bot78741637) December 3, 2022