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『ESG TECH TALK #2 - 多様性の力:スタートアップが拓く持続可能な未来』開催レポート

2024年2月6日に開催された「ESG TECH TALK #2 - 多様性の力:スタートアップが拓く持続可能な未来」には170名を超える事前申し込みをいただき、東京虎ノ門ヒルズ15階のCIC Tokyoイベント会場とオンライン視聴にて多くの方にご参加頂きました。本レポートではイベントの様子・概要を写真を交えてご報告いたします。


ESG TECH TALK #2 - 多様性の力:スタートアップが拓く持続可能な未来
 今回のイベントには下記の9名からなる多様なバックグラウンドを持つ実践者・専門家たちが集い、それぞれの立場で業界の最前線で見てきた経験や知見が共有されました。


ESG TECH TALK #2 - 多様性の力:スタートアップが拓く持続可能な未来

冒頭、吉田 剛氏(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 イノベージョン推進部部長)からは、GX分野のスタートアップ支援の際にもメディア・コミュニケーション、そして多様性の視点の重要性が高まっている旨、挨拶を頂き、プログラムがスタートしました。

吉田 剛氏(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 イノベージョン推進部部長)

Panel Session 1:「ESGスタートアップとメディア・コミュニケーション」

「ESGスタートアップとメディア・コミュニケーション」と題したの前半のパネルディスカッションにおいては、ESG分野のスタートアップの動向、メディアとのコミュニケーション、メディアの果たす役割などについて議論が行われました。

「ESGスタートアップとメディア・コミュニケーション」と題したの前半のパネルディスカッション

▶最近のESG関連のスタートアップへの注目について

過去3〜4年の間にエネルギー関連、気候テック、ディープテック等、呼び方はそれぞれ違うものの、カーボンニュートラルや脱炭素、GXを志向するスタートアップが増えているトレンドの概況について、冒頭それぞれの視点が共有されました。従来のEVや電池のような交通系のスタートアップから始まり、最近では鉄鋼、セメント、SAF(Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料))など、脱炭素化が難しいと言われる産業分野にも投資が集まっていること、またDACと呼ばれる直接空気回収と呼ばれる炭素除去技術、そして核融合等にも注目が集まり、はやりやトレンドの波があることも指摘されました。

▶スタートアップとメディアのコミュニケーションについて:

気候テックのスタートアップとしての情報発信に関し、伊集氏(アスエネ)からは月に約10本に及ぶ高頻度のプレスリリースの配信、またSEOにも注力しているオウンドメディアの運用などを通じ、様々な業界や顧客の規模などに応じたきめ細やかな発信を心がけている旨、事例を交えて紹介頂きました。

科学誌の編集者としての経験を持つ三ツ村氏(Business Insider Japan)からは、メディア目線での注目ポイントとして、スタートアップ企業のリリースを受ける中で、単に「新しいサービスを始めます」だけではなく、「こういう成果・実績」が出たような新鮮さ、或いは大企業とのコラボレーションをしているようなケースに注目されている旨、指摘がありました。

ポッドキャスト番組「グリーンビジネス」などを通じて気候テックの最前線をレポートしている岡氏(NewsPicks)からは「グリーン」関連のコンテンツがなかなか読まれない点に触れた上で、身近な話題に引き寄せること、大企業との関連の切り口が読まれやすい等、現在運営されているメディアの反応を踏まえご紹介頂きました。

▶メディアの役割とは

メディアコンサルタントの市川氏からは、欧米において気候テックに特化したメディア(ブルームバーググリーンCipher News, Heatmapなど)が数多く生まれていること、X(旧Twitter)などSNSでも積極的に情報が発信・共有されている状況などのトレンドが紹介されました。その上で、メディアコンテンツが多くの人の目に触れるためにも一人の読者、視聴者の立場で共感したコンテンツをシェアすることへの期待、また、そもそもなぜ脱炭素やESGに取り組む必要性があるのかを分かりやすく伝えるコンテンツの必要性など、問題意識も共有されました。

三ツ村氏からは、「この媒体に載っているものは本当にちゃんとしたものだ」という裏付けを持ったコンテンツを出し続け、読者・視聴者からの信頼を得ることの大切さ、読まれ方も意識した上でのコンテンツの届け方について日々の試行錯誤を続けることの重要性などが指摘されました。

岡氏からはスタートアップや企業が新たなビジネス機会を見出したり、スタートアップを始めるきっかけになるようなインスプレーションを届けることを意識していることが共有されました。またカーボンクレジットなどの新しく吸収することが求められている知識のギャップを埋めるために、必要なことを整理して伝えることなどへの意気込みも紹介されました。


Panel Session 2: 「起業家の多様性が解決する社会課題」

「起業家の多様性が解決する社会課題」と題したの後半のパネルディスカッションにおいては、多様性がどのように起業家のエコシステムに影響していくかという点について議論が行われました。

「起業家の多様性が解決する社会課題」と題したの後半のパネルディスカッション
  • 津久井 五月氏: 作家(写真左下)

  • 柳 淳也 氏: 京都大学経営管理大学院 京都大学経営管理大学院特定助教(写真右上)

  • Sakari Mesimäki (メシマキ・サカリ) 氏 : ケンブリッジ大学 社会人類学研究者(博士課程)(写真右下)

  • Nicole Yiqun ZHANG 氏 : Plug and Play Japan株式会社 Partner Success Manager, Energy(写真左上)

  • 葛川 大斗 氏 : 東京大学在学, UTokyo ClimateTech設立&代表(写真右中央)

  • モデレーター / 岩田 紘宜 氏: 東京大学博士課程 & 環境エネルギーイノベーションコミュニティ運営事務局(写真左中央)

▶昨今注目が集まっている「多様性」というキーワードはポジティブな影響をもたらしているのか?

マイノリティの起業家を研究している柳淳也氏(京都大学経営管理大学院)からは「多様性」が機運として盛り上がっているのはポジティブな傾向ではあるものの、実態が伴っているかに関しては疑問を感じることもあるとの指摘がありました。多様性が単なる理想ではなく、実際のビジネスプラクティスや社会変革にどのように組み込まれていくべきかを問いかけました。

「スタートアップ界隈のにおけるジェンダーの多様性」に関するアンケート調査結果*にも触れ、男性から『「女性の優遇/男性への差別や偏見」を感じることがある』、と回答する人が多くいることも踏まえ、自分の見ている世界と社会構造や大きな構造的な世界を行き来することの大切さなどが言及されました。

▶ジェンダーとスタートアップエコシステムについて

ジェンダーとスタートアップエコシステムに関し、社会人類学を研究しているサカリ氏( ケンブリッジ大学)は北欧の動向の一例として、かつてフィンランドでスタートアップの機運が高まった際には男性中心だったのが、最近ではスタートアップイベントであるスラッシュの運営を担う中心メンバーがほとんどが女性である点などが紹介されました。

SF作家である津久井氏からは、SF小説そのものが今まで男性 / 男の子に好まれて読まれ、技術的な未来を夢見てエンジニアや起業家などを輩出してきた傾向について触れた上で、最近では女性のSF作家も増えつつあることが紹介されました。将来世代においては思い描く未来像そのものが男性寄りに偏ったものではなく、よりフェアなものになるのでは、との予測が共有されました。

▶多様性は持続可能性・サステナビリティにつながるか?

サカリ氏はフィンランドのスタートアップ文化の変遷について触れる中で、かつてノキアという大きな企業が経営危機になった際、国の経済の復興の文脈で語られていたことが紹介されました。今日ではスタートアップ企業が成長を目指しながらも、社会課題解決に焦点を置いた起業も増えている点について、多様性との関連で紹介されました。

数多くのスタートアップと接点を持つNicoleさん(Plug and Play Japan)からは、人の属性や価値観の多様性があることで、物事を多面的に見ることが可能になり、ビジネスの成長に繋がっていくという考えが紹介されました。

学生という立場で議論に参加していた葛川氏(東京大学在学)は、自分のアウトプットはインプットを超えないとする考えから、アウトプットを創造的にするには(少なくとも)インプットを多様にする必要があり、このようにして多様になったアウトプットが社会課題解決に寄与し、持続可能性へと繋がるのではないか、という視点が共有されました。

【参考資料】*「スタートアップ界隈におけるジェンダーの多様性」に関するアンケート調査結果を公表 [2024年2月5日 一般社団法人スタートアップエコシステム協会]
*スタートアップエコシステムにおけるジェンダーの多様性に関する実態把握を目的としたアンケート調査を実施。女性活躍の状況や、投資先、上場支援先の女性代表比率等エコシステム全体の課題分析を行った。

「スタートアップ界隈におけるジェンダーの多様性」に関するアンケート調査結果

以上、メディア・コミュニケーション、そして多様性についての多様なバックグラウンドを持つ登壇者によるパネルディスカッションを通じて、一見抽象的に見えるこれらのテーマに関しての理解が深まりました。参加者や視聴者のみなさまにとってもヒントとなるような視点やアイディアを1つでもお届けできていれば幸いです。


今回初めてE&Eコミュニティのことを知っていただいた皆様へ

CIC TokyoU3イノベーションズが立ち上げた環境エネルギーイノベーションコミュニティ(E&Eコミュニティ)は、昨今のサステイナビリティやカーボンニュートラルへの関心の高まり、イノベーションによる社会課題解決の期待を背景として、イノベーション・エコシステムのステークホルダーが集い年間を通じて多様な活動をすることによるスタートアップの成長やスタートアップ・大企業・研究機関・行政機関等の協業を通じたイノベーション創出を行っています。

【コミュニティメンバーを募集中です!】

現在コミュニティメンバー(スタートアップや起業家、研究者や企業の個人会員は参加無料!)と協賛企業を募集中ですので、本コミュニティのプログラムについて詳しく知りたい方は、環境エネルギーイノベーションコミュニティ運営事務局(env-startups@cic.com)までご連絡ください。

コミュニティへの参加申込はこちら↓

https://forms.gle/v97kx8FB9aM1QGMM7

X(Twitter)アカウントも開設しました! @eande_community : フォローしていただくことでイベントやコミュニティアナウンスメントをご覧いただけます。

 (レポート執筆:E&E事務局)

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