【キャリアガイド】第1部:理想の仕事とは?60以上の研究を調査した我々の結論
人間、誰しも楽しくて有意義な仕事を望むものだろう。だがそれは一体どういう意味なのだろうか?
ある人にとっては、ふとしたきっかけで自分の情熱を見つけることかもしれないし、違う人にとっての理想の仕事の重要点は楽で高給であることかもしれない。
満足のいく人生及びキャリアの要因について、我々は過去30年にわたる60以上の研究を検討してみたが、これらの意見を裏付ける根拠は見つからなかった。
その代わり、理想の仕事の鍵となる6つの要素を見つけた。収入は含まれないし、かといって「情熱に従え」ほど単純なものではない。
むしろ、情熱に従うと道を踏み外すこともある。スティーブ・ジョブズはテクノロジー界に入る前は禅宗に熱中していた。マヤ・アンジェロウは著名な詩人及び公民権運動家になる前はカリプソダンサーとして働いていた。
そうではなく、自分が楽しくて有意義だと思える仕事をすることで情熱を育むことができる。重要なのは、人の役に立つ何かを得意にすることだ。
下記の動画(英語のみ)、あるいは本文の記事(日本語訳)(所要時間20分)を読んでいただきたい。原典となる研究結果のみ知りたい場合は、エビデンスレビューを参照。
要点
理想の仕事を見つけるには、以下に注意すること:
自分が得意な仕事
人のためになる仕事
支えとなる環境:フロー状態に入ることができるような関心が持てる仕事、支えてくれる同僚、不当な給与など大きなマイナス要素の欠如、私生活に合った仕事
間違いやすい点
通常、自分にとっての理想の仕事を見つけ出そうとするとき、人々は様々な仕事とそれぞれの満足度を想像することが多い。あるいは、過去に充実感を感じた時のことを思い浮かべて、自分にとって重要なことは何かと自問するかもしれない。
もしこれが従来のキャリアガイドなら、あなたが仕事に求める最も重要な要点のリストを書かせることから始めるだろう。「屋外で仕事する」とか「野心的な人と働く」など。ベストセラーとなったキャリアアドバイス本『What Color Is Your Parachute』(邦題『あなたのパラシュートは何色?』)は、まさにこれを勧めている。これは、誰しも心の底では自分が本当に望んでいるものを知っている、という期待に基づいている。
だが研究によると自己反省は有益ではあるものの、完璧ではないということが分かっている。
例えばあなたの人生においても、休暇だかパーティーだか、何かをすごく楽しみにしていたのに、実際に起こってみるととまぁまぁだった、ということがあるだろう。ここ数十年の研究で、このようなことはよくあることだということが明らかになった。我々は、自分が何に最も幸せを感じるのかを予測するのが必ずしも得意ではないし、自分がどれほどそれが下手なのか気付いていないのだ。脚注に、この研究の概要がいくつか掲載されている[1]。
我々は色々な体験の満足度を思い出すこと自体苦手であることも明らかになっている[2]。我々が犯す間違いの一つとして科学的に確かめられていることだが、我々はしばしば経験を主にその結末で判断してしまう:楽しい休暇の最終日に飛行機に乗り遅れた場合、おそらくその休暇は最悪なものだったと記憶されるだろう。
ある経験から得られる快をその結末で判断することがしばしばあることで、我々は興味深い選択をさせられることがある。
Dan Gilbert 教授 「Stumbling on Happiness」(邦題『明日の幸せを科学する』)より
つまり直感は頼りにならない、自分に最適な仕事を見つけるにはより体系的な方法が必要、ということになる。
いかに我々が自己反省が苦手かを実証する同じ研究から、より情報に基づいた選択をする方法を学ぶことができる。現在、30年にわたるポジティブ心理学(幸せの科学)や、数十年に及ぶモチベーションや仕事の満足度に関する研究が存在する。これらの研究の主なる教訓を要約し、充実した仕事を見つけることへの関連点を説明したいと思う。
充実したキャリアに関して過大評価されている2つの目標
人々はよく、理想の仕事とは高給で楽なものだと考える。
2015年、CareerCastが提供する、アメリカ最大の職業ランキングの一つは、職業評価する際、以下の基準を用いた[3]:
高給か?
将来高給になる見通しはあるか?
ストレスが溜まるものか?
不愉快な職場環境か?
これらの基準によると、最高の仕事は保険数理士らしい[4]。つまり、主に保険業界において、統計を用いてリスクの測定と管理を行う者だ。
確かに、数理士が自分の仕事に満足している割合は平均値よりも高い。だが、最も満足している職業のひとつ、というわけではない[5]。自分の仕事は意味あるものであると答えた者はたった36%[6]であったことから、数理士はそれほど充実感を伴うものではないことが分かる。
よってCareerCast のリストは何かを捉え損ねている。むしろ、給料とストレスの回避はそれほど重要ではないことを示唆するエビデンスが存在する。
お金と幸福度の相関が意外と弱い
お金で幸せは買えない、とよく言うが、同時により高い給料というのは求職者における最優先事項の一つでもある[7]。また、自分たちの生活の質を最も上げるであろうものは何か、と問われると、一般的にお金と答える人が最も多い[8]。
これはどういうことだろうか?正しいのはどちらだろうか?
この問題に関する研究の多くは、驚くほど質が低い。だが経済学における幾つかの主要な研究は、より明確な結果を示している。現在存在する中で最も質の高い研究を検討した結果、答えは中間にあることが判明した:いわく、お金は幸せをもたらすが、それはほんの少しである。
人生の満足度を1から10のスケールで評価するよう人々に聞いた。結果は図の右側にある。下は世帯収入だ。
見ての通り、40,000ドルから80,000ドルへ(税引前)収入が倍増しても、人生の満足度はおおよそ10点中6.5点から7点までしか増えない。こんなちっぽけな増加に対して、随分と収入を増やさなければならないのだ。
これは驚くことではない。誰しも周囲に、高給職に就いておきながら惨めな人生を送っている人を知っているはずだ。
しかしこの結果は楽観的すぎるかもしれない。その日その日の幸福からすると、収入の重要性はより低いものになるだろう。「ポジティブ感情」とは、前日に幸福を感じたかどうかに対する答えだ。下のグラフの左軸は、この問いに「はい」と答えた人の割合を示している。調査結果によるとこの線は5万ドルあたりで横ばいになっており、この点を超えると、収入は日々の幸福感と関係がないことを示している。
この図は、前日に「憂鬱にならなかった」「ストレスがなかった」と答えた人の割合を示した図と酷似している。
これらの線は75,000ドル以降は完全に平たくなる。つまりこの点を超えると、収入は人々の喜び、悲しみ、ストレスに関連しなくなるのだ。
我々は、この結果が誤りである可能性も十分にあると考えており、日々の幸福感は収入に応じて少なくとも多少は増加し続けると考えている。より最近の研究では、日々の幸福感は生活満足度よりも緩やかに増加するものの、まさにこのことを証明している。[9]
上記で取り上げたことは全て、収入と幸福の相関関係についてのみである。だが、この関係は第三の要因によって引き起こされているかもしれない。例えば、健康であることは幸福度を高めると同時により多くの収入を得ることに繋がっているかもしれない。もしそうだとすれば、余分にお金を稼ぐことの効果は、上記の相関関係から推測されるよりもさらに弱くなるだろう。
最後に、75,000ドルの世帯収入は子どもがいない場合、40,000ドルの個人収入と等価だ。[10]
これらの目安を自分用にカスタマイズするには、以下の調整を行う(すべて税引前)
40,000ドルの図は2009年のものだ。インフレの影響により、2023年では55,000ドルくらいの図になるだろう。
働いていない扶養家族1人につき25,000ドルを追加する。
ニューヨークやサンフランシスコなどの物価が高い都市に住んでいる場合は50%を足すこと、テネシー州の田舎などの物価が安い場所の場合は30%引くこと。生活費の計算は、ここのようにオンラインで見つけることができる。
特にお金を稼ぐモチベーションが高い場合はさらに足す(または、質素な生活が趣味の場合はいくらか差し引く)。
老後のために15%(あるいは自分にとって快適な生活を維持するのに必要な分だけ)を足す。
2023年の時点では、米国の平均的な大卒者は、職業生活を通じて年間約 77,000 ドルの収入が期待できる。一方、平均的なアイビー リーグ卒業生の収入は 120,000 ドルを超える[11]。 結論から言えば、あなたが米国 (または 同様の国)の大学卒業生の場合、収入が増えても幸福度にほとんど影響を与えないグループに入ることになる可能性が高い。
(このエビデンスについてもっと読む)
ストレスフリーを目指さない
あまりストレスの溜まらない仕事を見つけたいと言う人はたくさんいる。過去には、ストレスは常に悪いものだと信じていた医者や心理学者がいたのは事実だ。しかし、ストレスに関する現代の文献を調査したところ、状況はもう少し複雑であることが分かった。
一つの謎は、政府や軍の高官を対象とした研究で、彼らの睡眠時間が短く、より多くの人を管理し、より高い職業的要求があるにも関わらず、ストレスホルモンのレベルが低く、不安も少ないことがわかったことである。広く支持されている説明の一つは、(自分のスケジュールを調整し、直面する課題にどう取り組むかを決定することで)より制御力を持ち、自分の地位の要求から身を守ることができるというものだ。
過酷な仕事の良し悪しを左右する要因は他にもある:
つまり状況は次の図のようになる。とりわけ要求の低い仕事は悪い、つまり退屈だ。自分の能力を超えた仕事も悪い:余計なストレスになる。ちょうどいいのは自分の能力に合った要求が課される場合だ。これはやりがいのあるチャレンジとなる。
ストレスを避けるのではなく、支えとなる職場環境とやりがいのある仕事を探して、自分をチャレンジしてみよう。
(詳しくはストレスに関するエビデンス調査を参照)
理想の仕事で目指すべきもの
我々は、充実した人生を実現するものについてのポジティブ心理学の研究を応用し、職務満足度に関する研究と組み合わせて、理想の仕事を構築する6つの重要な要素を導き出した。(エビデンスをさらに詳しく知りたい方は、エビデンス調査を参照)
以下が6つの要素である。
1. 関心が持てる仕事
真に大事なのは給料でも、ステータスでも、会社の種類でもなく、毎日何時間も何をして過ごすかである。
関心が持てる仕事とは、引き込まれ、注意を引き付け、フロー状態の感覚を得られる仕事のことである。スプレッドシートの編集に1時間費やすと退屈にしか感じないのに、コンピューターゲームで1時間遊んでも時間が流れたように感じないのはそのためだ。コンピューターゲームはプレイヤーの関心を出来るだけ引き付けるように設計されている。
違いは何か?なぜコンピューターゲームには関心が持てて、オフィス事務には持てないのか?研究者は4つの要素を特定している:
自分の仕事のやり方を選べる自由
はっきりとした始まりと終わりを持った明確なタスク
タスクの多様性
自分の仕事の出来具合を知ることのできるフィードバック
これらの各要因は、主要なメタ分析で職務満足度と相関することが示されており(r=0.4)、職務満足度の予測因子として経験的に最もよく検証されていると専門家の間では広く考えられている。
とはいえ、コンピューターゲームで遊ぶことは充実した生活の決定因子ではない(単に給料が出ないということはさておき)。他にも必要なものがある。例えば…
2. 人のためになる仕事
以下の仕事は、我々が挙げた関心の持てる仕事の4つの要素を備えている。だが、 これらの仕事に就いている4分の3以上の人が、その仕事に意義を見出せないと答えている。[12]
収益アナリスト
ファッションデザイナー
TV報道番組のディレクター
以下の仕事は、その仕事をするほとんど全ての人にとって有意義なものとされている:
消防職員
看護師・助産師
脳神経外科医
主な違いは、二つ目のカテゴリーは人のためになるとされている仕事であることである。だからこそ有意義であり、だから人のためとなることを(理想の仕事を構成する)2つ目の要素と見なした。
人のためとなることが人生の満足度の重要な要素であることを示すエビデンスは増えている。ボランティアをする人は憂鬱になることが少なく、より健康である。23 件のランダム化研究のメタ分析では、親切な行為を行うとそれをした人がより幸せになることが示されている。[13]また世界的な調査では、慈善活動に寄付する人は、2 倍稼いでいる人と同じくらい自分の人生に満足していることが分かった。[14]
人のためとなることは有意義なキャリアへの唯一の道ではないが、最も強力な手段の一つとして研究者の間では広く受け入れられている。
(ガイドの次の章では、直接的にであれ間接的にであれ、本当に人のためとなる仕事を紹介している)
3. 得意な仕事
自分の仕事が得意であると、達成感という、ポジティブ心理学によると人生の満足度の鍵である要素が得られる。
また、やりがいのある仕事の他の要素を得るための交渉力も得られるー有意義なプロジェクトに取り組んだり、関心の持てるタスクを受け持ったり、公正な報酬を得ることができる力だ。周囲にあなたの貢献が認められれば、見返りにこれらの条件を求めることができる。
これら二つの理由からして、最終的にはスキルは興味に勝る。たとえ芸術が好きでも、それを仕事として追及しながら特別上手くない場合、どうでもいい会社のつまらないグラフィックデザインをすることになってしまう。
だからといって自分が得意な仕事しかできないというわけではない。だが、得意になる見込みがあれば望ましいというわけだ。
(ガイドの後半は自分が得意な分野を見つける方法と、自分のスキルの開発に投資する方法についての記事もある)
4. 支えてくれる仲間と働く
当然のことだが、嫌いな同僚や非道な上司の下で働いていれば、満たされる余地はないだろう。
良い社交関係は充実した人生の要である。よって少なくとも職場の同僚数人と親しくなるのは大事である。そしてこれはおそらく、少なくとも二、三人の、自分と似た人間と働くことを意味するだろう。
だからといって全員とお友達になる必要はないのはもちろんのこと、同僚全員を好きになる必要もない。研究によれば、おそらく最も重要な要素は、問題にぶつかったときに同僚から助けを得られるかどうかである。大規模なメタ分析によると、「ソーシャル・サポート」は仕事満足度の上位予測因子のひとつであった(r=0.56)。
いけ好かない、あなたとは異なる人こそ、(あなたの利害に配慮してくれる前提の上)最も有益なフィードバックをくれる人かもしれない。ありのままに答え、違う視点を持っているからだ。アダム・グラント教授は、このような人々を「disagreeable givers」(いけ好かないギバー)と呼んでいる。
従来、理想の仕事について考えるとき、役職に焦点を当てることが多い。しかし、一緒に働く人も同じくらい大事である。夢のポジションも上司が最悪だと台無しになり得るが、うんざりする仕事も仲間となら楽しくなるかもしれない。よって仕事を選ぶとき、その職場で友達を作ることは可能かどうか、そしてもっと重要なことに、その職場のカルチャーは助けを得たり、フィールドバックをもらったり、一緒に仕事をしていきやすいものかどうかと問う必要がある。
5. 大きな欠点がない仕事
充実を得るには、上記の全てが重要である。しかし、仕事が不快なものとなる要素がないことも重要である。以下は、仕事への不満に関連する傾向があるものである。
長い通勤時間、特にバスで一時間以上の場合
長い勤務時間
不当な給料
雇用不安
これらは当たり前のことと思えるかもしれないが、しばしば見落とされがちである。長時間の通勤がたらす悪影響は、他の多くのプラス要因を凌駕するほどである。
6. 私生活に合った仕事
充実した人生のすべての要素を仕事から得る必要はない。お金になる仕事を見つけながら個人的なプロジェクトに打ち込んだり、慈善活動やボランティア活動を通じて意義を見出したり、仕事以外で素晴らしい人間関係を築いたりすることは可能だ。
我々はこういった人達を多く監修してきた。有名な例も多いーアインシュタインが最も生産的だった1905年、彼は特許事務所の事務員として働いていた。
よって最後の要素はキャリアがあなたの私生活とどう組み合うか考えることである。
次に移る前に、6つの要素の要約をここに記す。理想の仕事を探すポイントは:
フロー状態に入れるような関心の持てる仕事(裁量、多様性、明確なタスク、フィードバック)
人のためとなる仕事
得意な仕事
支えてくれる同僚
長い勤務時間や不当な給料などの目立った欠点のなさ
私生活に合った仕事
(6つの要素を支えるエビデンスについて詳しく読む)
これら全部を合わせるにはどうすればいいだろうか?
情熱に従うべきだろうか?
「情熱に従え」は、キャリアアドバイスの支柱となってきた。
要は、素敵なキャリアを見つけるには自分が最も興味のあること、つまり「自分の情熱」を見つけて、その興味に合うキャリアを追求する、という考えだ。実に魅力的なメッセージだ:情熱に全力を注ぐだけで、素晴らしいキャリアを築くことができる。また、成功している人達を見ると、彼らはしばしば自分のやっていることに情熱を持っている。
我々も、仕事に情熱を抱くべきというのには大賛成だ。上記の研究も、その仕事の内容そのものがやる気を起こさせるような仕事は、高額な給料よりもはるかに人々を幸せにすることを示している。
ただし「情熱に従え」というアドバイスが誤解を招く可能性がある場合が3つある。
一つ目の問題は、情熱さえあれば他はなにもいらないと示唆していることである。しかし、いくらその仕事に興味があっても、上記の6つの要素が欠けていればやはり不満を抱くだろう。バスケットボールのファンがバスケットボールに関係する仕事に就いたところで、同僚が嫌いだったり給与が不当だったり、仕事に意義を感じられなかったりすれば、依然として自分の仕事を嫌いになるだろう。
むしろ「情熱に従え」というのは6つの要素を満たす障害になるかもしれない。なぜならあなたが情熱を抱いている分野は最も競争が激しい可能性が高く、良い仕事を見つけるのが難しくなるからだ。
スポーツ、芸術、音楽に情熱を抱く学生
芸術、文化、レクリエーション、スポーツの分野の職業
二つ目の問題は、多くの人にとって自分たちの情熱はキャリアに関連したものではないということだ。「情熱に従え」と提案しても、不適切に感じるかもしれない。「情熱」を持っていなくても、心配する必要はない。情熱を注げる仕事を見つけることは可能だ。
そして3番目の問題は、不必要に選択肢を制限してしまう可能性があることだ。文学に興味がある場合、充実したキャリアを得るには作家にならなければならないと考え、他の選択肢を無視しがちだ。また、自分の「唯一の真の情熱」は一目瞭然だと考え、ぱっと満足できない選択肢を排除することもよくある。
しかし実際には、新しい分野に情熱を抱くこともありうる。自分の仕事が他の人の役に立ち、上達するために努力し、やりがいのあるタスクに取り組み、好きな人達と一緒に仕事をすれば、その仕事に情熱を抱くようになる。6つの要素は全て、仕事の内容ではなく、仕事のコンテキストに関するものである。20 年前、我々はキャリアアドバイスに熱中するなど想像だにしていなかったが、今やこんな記事を書いている。
多くの成功した人々は情熱的だが、多くの場合、その情熱は成功を重ねるにつれ育んでいったものだ。当初から情熱的だったのではなく、その情熱を発見するまでに長い時間がかかった。 スティーブ・ジョブズは元々禅仏教に夢中だった。 手っ取り早くお金を稼ぐ方法としてテクノロジーに興味を持ち始めた。しかし、成功するにつれて情熱は増し、ついには「好きなことをする」ということの最も有名な提唱者になった。
実際のところ、我々の興味は 一つだけではないし、予想以上に頻繁に変わるものだ。 5 年前にあなたが最も興味を持っていたことを思い出してみてほしい。おそらく、それは現在あなたが興味を持っているものとはかなり異なっていることに気づくだろう。 そして、上記で述べたように、我々は、何をしたら自分が本当に幸せになるのかを知るのが苦手である。
これは、あなたが思っている以上に充実したキャリアの選択肢が存在することを意味する。
次に進む前にちょっとした余談だが、 このガイドが役に立ったと思った場合は、Twitter で記事を共有して、より多くの人に知ってもらえるよう協力して頂けると助かる。
貢献となることをしよう
充実したキャリアを実現するための当社のスローガンは、「情熱に従え」ではなく、「人の役に立つ何かを得意にする」だ。または単に「貢献となることをしよう」。
我々が「得意にする」ことを強調するのは、他者から評価されるような自分の得意なことを見つけられれば、キャリアを得るチャンスはたっぷりと得られ、他のすべての要素(関心が持てる仕事、支えとなる同僚、大きな欠点のなさ、私生活との相性)を備えた理想の仕事を見つける最高のチャンスが得られるからだ。
だが、他の5つの要素を全て持っていても、自分の仕事が無意味だと感じることはある。だから、人の役に立つ方法も見つける必要がある。
まず世の中に価値ある貢献をすることを優先すれば、自分の仕事に対する情熱を育むことだろう。そうなればより満たされ、野心的になり、やる気が出てくることだろう。
これは、私たちがキャリアアドバイスをしている中で発見したことだ。例えば、ジェスは学部時代に哲学に興味を持ち、博士課程に進むことを考えた。問題は、彼女は哲学を面白いと思っているが、その中でポジティブなインパクトを与えるのは難しいだろうということだった。結局のところ、これではやりがいがないと彼女は考えた。代わりに、彼女は心理学と公共政策に転向し、我々が知る中でも最も意欲的な人物の一人となった。
今日に至るまで、何千人もの人々が、我々のキャリアアドバイスに従うことで自分のキャリアパスを大きく変えてきた。その多くは、当初は興味がなかったものの、世界にとって重要だと信じた分野に転職した。スキルを磨き、一緒に働く良い仲間を見つけ、適切な職務を見つけたいま、彼らは深い満足感を得ている。
人の役に立つことを得意にすることに集中すべき理由は、さらに2つある。
もっと成功する可能性
他人を助けることを自分の使命としたら、周りもあなたの成功を手助けしたいと思うだろう。
当然のことのように聞こえるが、これを裏付ける経験的な証拠がある。 アダム・グラント教授は『Give and Take』(邦訳:『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』)の中で、「与えるマインドセット」を持つ人こそが最終的に最も成功する人になると主張している。そういう人はより多くの支援を得られるから、そして目的意識によってより動機付けられているからだ。
注意すべき点は、与える人は他人にエネルギーを使いすぎて燃え尽きてしまうと成功しないということだ。 したがって、先ほど述べた仕事の満足度を高めるための他の要素や、与える量に制限を設けることも必要だ。
正しいことである
人を助けることが満たされるための鍵であるという考えは、決して新しいものではない。 これはほとんどの主要な道徳的および精神的伝統のテーマである。
善をなすことを心がけよ。 何度も繰り返せば、喜びで満たされるだろう。– 仏陀
人間の真の富はこの世でなされる善行なり—ムハンマド
汝の隣人を愛せよ ーイエス・キリスト
人間はだれでも、創造的な利他主義という光の道を歩むのか、それとも破壊的な利己主義という闇の道を歩むのか決断しなければならない — マーティン・ルーサー・キング・ジュニア。
さらに、次の記事で説明するように、今日の先進国の大学卒業生には、キャリアを通じて他の人を助ける大きな可能性がある。 結局のところ、これが他人を助けることに集中する本当の理由だ—それによって個人的により充実感が得られるという事実は、単なるおまけにすぎない。
結論
理想の仕事に就くには、お金やストレスなどについて心配しすぎたり、自分の真の情熱を見つけるべく延々と内省し続ける必要はない。
それより、人の役に立つことを得意にしてほしい。 あなたにとっても、世界にとっても、それが最善だ。 これこそ我々が 80,000 Hours を設立した理由だ。我々の使命は、貢献できるキャリアを見つける手助けをすることである。
だが、人を助ける仕事はどれだろうか? 一人の人間が本当に大きな違いを生むことはできるのだろうか? それについては次の記事で答えたいと思う。
自分のキャリアに当ててみよう
これら 6 つの要素、特に他人を助けたり、自分の仕事で成果を上げたりすることは、指針として役立つ—長期的に夢の仕事を見つける時目指すべきものだ。
以上を応用する最初のステップとして役立ついくつかのエクササイズを紹介したいと思う。
6 つの要素を使って比較する練習をする。 興味のある選択肢を 2 つ選び、各要素について 1 から 5 の点数を付ける。
ここで挙げた6つの要素は、あくまで出発点に過ぎない。あなたにとって特別重要な要素が他にもあるかもしれないから、以下のエクササイズを行うことも推奨する。先に見たように、充実していると感じた時の記憶は当てにならないことがある。しかし、過去の経験を完全に無視するのも賢明ではない[15]。これらの質問は、あなたが何に最も充実感を感じるのかについてヒントを与えるはずだ
過去に最も充実感を感じたのはどんな時だったか?それらの時の共通点は?
あなたが余命10年だと発覚したとする。残りの時間を何をして過ごすだろうか?
6つの要素のうち、どれかをもっと具体化できるだろうか?例えば、自分が一緒に働くのが好きな人はどういうタイプだろうか?
次に、このリストとあなた自身の考えを組み合わせて、あなたにとって、理想の仕事で最も重要な要素を4〜8つ決める。
将来、自分の選択肢を比較するとき、この要素リストを使って、どれがベストかを考えることができる。すべての面で最良の選択肢を見つけることを期待するのではなく、バランスよく最良の選択肢を見つけることに重点を置くこと。
脚注
There has been an extensive programme of research into how good humans are at predicting the effects of future events on their emotional wellbeing. It began with Kahneman and Snell in the early 1990s, and was led in the 2000s by Harvard psychologist Daniel Gilbert. Much of the research is summarised in Gilbert’s book Stumbling on Happiness. A 2009 review is in Gilbert and Wilson (2009). One takeaway is that we are bad at predicting how we will feel in the future, and we don’t realise this. We’ve previously written about our failures to predict how we will feel here. We’re unsure how robust all of these findings are be in light of the replication crisis, and haven’t found any more recent work replicating these findings. In particular, we’re concerned about Gilbert’s prominent rejection of the existence of the replication crisis, published in Science in 2016. A convincing response to Gilbert was also published in Science in 2016, and we enjoyed this blog summarising the issue by Columbia statistician Andrew Gelman. So we expect Gilbert has overstated the findings. Nevertheless, we think the broader point that we can’t simply trust our intuition about these matters is correct.↩
While many studies have found support for the “peak–end rule” — the idea that we judge experiences based on how we feel at the most intense point (i.e. the peak, and at the end) — some have cast doubt on it.
For instance, Kemp et al. (2008) found that the peak–end rule was “not an outstandingly good predictor,” and that the most memorable or unusual moments (not necessarily the most intense moments) were more relevant predictors of recalled happiness. This suggests the “peak” is less relevant than the end.
The peak–end rule predicts approximately the correct level of happiness, but the correlations of the peak–end average with the overall recalled happiness are generally lower than those obtained by considering the participants’ happiness in the most memorable or most unusual 24-h period… Remembered overall happiness seems to be better predicted by end happiness than by peak or trough happiness, and the comparative failure of the peak–end rule appears to stem more from the peak than from the end.
That said, a 2022 meta-analysis looking at 58 independent studies, with a cumulative sample size of around 12,500 people, found “strong support” for the peak–end rule.
The peak-end effect on retrospective summary evaluations was: (1) large (r = 0.581, 95% Confidence Interval = 0.487–0.661), (2) robust across boundary conditions, (3) comparable to the effect of the overall average (mean) score and stronger than the effects of the trend and variability across all episodes in the experience, (4) stronger than the effects of the first (beginning) and lowest intensity (trough) episodes, and (5) stronger than the effect of the duration of the experience (which was essentially nil, thereby supporting the idea of duration neglect).↩
CareerCast’s 2015 methodology is described here.
Archived link, retrieved 2-March-2016.
We’re using CareerCast’s 2015 rankings because we want to compare these rankings with measurements of job satisfaction and meaningfulness. The most recent large survey on job satisfaction and meaningfulness that we could find was conducted by Payscale (archived link, retrieved 17-August-2022), with data collected from 2.7 million people between 6-November-2013 and 6-November-2015.
CareerCast’s 2021 methodology is largely unchanged and described here.
Archived link, retrieved 27-September-2022.↩
Actuary was the top-ranked career in 2015.
Archived link, retrieved 2-Mar-2016.
Archived link, retrieved 5-Dec-2022.↩
The most recent national survey by the UK’s Cabinet Office on life satisfaction by occupation was conducted in 2014 (and published by the University of Kent). The survey found “actuaries, economists and statisticians” ranked 64th out of 274 job titles, putting them in the top 23%.
In the more recent 2021 CareerCast survey, actuary was no longer top, but it was still ranked in the top 10.
BBC summary, Archived link, retrieved 15-April-2017.↩
Payscale’s surveys cover millions of workers. The most recent survey which asked about job satisfaction and job meaningfulness was conducted from 2013 to 2015. The survey found that only 36% of actuaries found their work meaningful. Job satisfaction was also high at 80%, but a significant number of jobs were rated over 80%.
A Gallup survey in October 2021 asked 13,085 US employees what was most important to them when deciding whether to accept a new job offered by a new employer. 64% of people said that “a significant increase in income or benefits” was “very important,” compared to 61% for “greater work-life balance and better personal well-being,” 58% for “the ability to do what they do best” and 53% for “greater stability and job security.”
The survey was a self-administered web survey. There are a number of possible sources of bias. For example, if this survey was paid (it’s unclear from the Gallup methodology), this may have introduced bias. That said, Gallup did weight samples to correct for nonresponse by adjusting the sample to match the national demographics of gender, age, race, Hispanic ethnicity, education, and region.
Archived link, retrieved 16-Feb-2023.↩
When individuals are asked what would most improve the quality of their lives, the most common response is a higher income
Judge, Timothy A., et al. “The relationship between pay and job satisfaction: A meta-analysis of the literature.” Journal of Vocational Behavior 77.2 (2010): 157-167.
http://www.panglossinc.com/documents/Therelationshipbetweenpayandjobsatisfaction.pdf↩
A 2021 study found that wellbeing does rise with income, even above $75,000 a year. However, it found that this, like life satisfaction, was approximately logarithmic — as an individual’s income increases, their wellbeing increases at a slower and slower rate. As a result, above $75,000 a year, the wellbeing increases are very small. The study also found that, as income increased, wellbeing rose more slowly than life satisfaction (which was also approximately logarithmic). Read a critical review of the study. A later analysis of the data revealed that the happier people were, the less their returns diminished. The happiest people continued to become happier with incomes of over $100,000, but the least happy people see almost no benefit of this income on their happiness.↩
Killingsworth, Matthew A., Daniel Kahneman, and Barbara Mellers. “Income and emotional well-being: A conflict resolved.” Proceedings of the National Academy of Sciences 120.10 (2023): e2208661120.
“The critical observation is that Fig. 1A shows the distribution of happiness to be markedly lopsided. In the range of high incomes, in particular, the average reported positive affect is 89% of a perfect score (equivalent to 2.67 on a 0 to 3 scale) and the average of two not-blue items is 81% of the maximum. For example, on average, each dichotomous positive affect item distinguishes between a happier 89% of people and a less happy 11% of people, while the composite report combines three such items. We know, of course, that happy people are not all equally happy. In MK’s experience sampling data, for example, the distribution of happiness was approximately normal. The high density of maximum scores in the KD items indicates that the items do not adequately discriminate among degrees of happiness—there is a ceiling effect.
An example illustrates the relevance of a ceiling effect to the naming of a variable. Imagine a test of cognitive functioning which consists of items that most elderly patients pass easily, with a few exceptions due to inattention or momentary confusion. Such a test would rightly be considered a measure of dementia: the number of items failed is an indication of the severity of dementia, but the scale does not discriminate among levels of normal cognitive functioning because most normal people get the same perfect score. A similar argument implies that KD’s affect items are best interpreted as measures of unhappiness.”↩
The average household in the US has 2.5 people, but of course this is just an average across a wide range of family structures. Larger households enjoy “economies of scale” by sharing houses, cars, and so on. This makes it tricky to say what the equivalent of a household income is for a single individual.
Standard conversion rates are the following:
A single individual has an equivalence score of 1.
A single extra adult adds another equivalence score of 0.5.
Adding a young child to this adds an equivalence score of 0.3, while a teenager costs another 0.5.
As a result, a couple can achieve the same lifestyle as an individual with 50% more income; a couple with a young child can achieve the same lifestyle as an individual with 80% more income; a couple with a teenager require an income twice as high.
These are approximations, but reasonable ones used by international organisations. They are described here by the UK Institute for Fiscal Studies. (The IFS table gives conversion rates from a childless couple to a household. Dividing by 0.67 — the conversion rate to a single individual — will give you the numbers we listed above.)
For the sake of simplicity we will assume that on average across their adult lives people are in a household with an adult couple and a child. This is just an average — some people will be single, while some will be supporting multiple children, at least for some of their lives.
Using this approximation means that a single individual requires about 1/1.9 = 53% as much as a typical household, averaged over their adult lives, to achieve the same standard of living.
In this case, 53% of $90,000 for a household represents $47,700 for an individual.↩
College grad earnings
Source:
Carnevale, Anthony P., Ban Cheah, and Emma Wenzinger. “The college payoff: More education doesn’t mean more earnings” (2021).A bachelor’s degree holder earns, at the median, $2.8 million during a lifetime, which translates into average annual earnings of about $70,000.
This figure was for 2021, but wages have grown since then. In January 2021, average wages per hour in the US were $29.92 and were $33.03 in January 2023. That’s growth of 10%, which suggests that the average college graduate now earns $77,000. This is likely an overestimate, because college graduate earnings have been growing slower than average earnings since 2021. Source: FRED Economic Data, “Average Hourly Earnings of All Employees: Total Private (CES0500000003)”, retrieved 5-Feb-2017. This growth matches roughly what we’d expect from inflation, which was about 10% over the period, and wages tend to lag inflation in high-inflation periods like 2021–23.
Mean earnings for US Ivy League graduates
It’s hard to find comparable data for just Ivy League graduates. Payscale found a median mid-career salary of over $135,000, where mid-career is defined as over 10 years.
Archived link, retrieved 23 Feb 2023.
Our guess is that the Payscale data is too high, because people with higher incomes will be more likely to fill out the survey. On the other hand, income only peaks after 20–30 years, so the figure for 10+ years probably underreports the overall average. Moreover, the median will be less than the mean.
Overall, we’re pretty confident that the mean lifetime average for Ivy League graduates is over $120,000.
If you want to estimate your future income, then you should also account for future wage growth (which has been about 2% historically). We ignore this here, and only estimate current income.↩
Based on payscale.com surveys of over 2.7 million Americans.
Retrieved 2 November 2023A 2018 meta-analysis found that there is a causal link between performing acts of kindness and wellbeing. They included 27 experimental studies included in the review, with a total sample size of 4,045 people.
These 27 studies, some of which included multiple control conditions and dependent measures, yielded 52 effect sizes. Multi-level modeling revealed that the overall effect of kindness on the well-being of the actor is small-to-medium (δ = 0.28). The effect was not moderated by sex, age, type of participant, intervention, control condition or outcome measure. There was no indication of publication bias.↩
This is the study we quoted: Aknin, Lara, Christopher P. Barrington-Leigh, Elizabeth W. Dunn, John F. Helliwell, Robert Biswas-Diener, Imelda Kemeza, Paul Nyende, Claire Ashton-James, Michael I. Norton (2010). “Prosocial Spending and Well-Being: Cross-Cultural Evidence for a Psychological Universal.” Harvard Business School Working Paper 11-038. Link.
Though there is some evidence that part of the reason for the correlation is that happier people give more. See: Boenigk, S. & Mayr, M.L. J Happiness Stud (2016) 17: 1825. doi:10.1007/s10902-015-9672-2. Link.
For a more comprehensive review of the question, see Giving without sacrifice, by Andreas Mogensen, Giving What We Can Research, Archived Link, retrieved 6 April 2017.↩