【戦評】連敗を止めた山下斐紹の「魂が震える」懸命リード~5/6○楽天8-4西武
泥臭く、がむしゃらの美しさ
十連休の最終日、連日視察に訪れた三木谷オーナーの前で連敗を4で止めた楽天。
そのなか、泥臭くがむしゃらにプレーした犬鷲選手といえば、少なくとも僕の中では山下の一択だ。
2018年から戦列に加わった山下の捕手スキルは、お世辞にも上手いとは言えない。
昨年は山下マスクのとき、相手走者に34企図され31盗塁と走られ放題。
スマートに捕球する嶋と比べて、キャッチングやブロッキングはブレがありぎこちなく、209.1回のマスクながらも暴投・捕逸11個を記録している。
ミットを構える高さも、嶋や足立と比べて打者が打ちごろの高さに構えるケースが多く、見ていていつもハラハラさせられる。
秋の宮崎では捕手よりも他ポジションの出場数のほうが多くなった。
その傾向は年明けて今年に入っても変わらず。
14試合出場したイースタンではスタメンマスク2試合だけ。
新人の太田も加入したチーム事情と起用法から、打者・山下は依然として魅力なものの、『捕手・山下』は構想外になりつつあると感じていた。
そんな山下が今季初めての1軍スタメンマスクで、一心不乱のプレー姿をみせた。
バッテリーを組む先発・福井に対し、必死のボディランゲージで逐次思いを伝えた。
もう1度見たい4回外崎、5回山川三振シーン
ハイライトは1点リードの4回2死1塁、9番・外崎空三振の結果球だ。
速球と変化球の外の出し入れで2-2と追い込んだ後の5球目。
サイン交換の前に「腕を振れ」のジェスチャー。
サイン交換後にはミットを自分の胸のほうに持ってきて「来い!」の仕草をし、そこからさらに「腕を振れ」「腕を振れ」を2度繰り出すの懸命のリード。
わずか1球に対し「腕を振れ」を合計3回繰り出した光景は、ぼくの拙い記憶の中では過去に例がなかった。
勝利投手の権利を手中にする5回2死1塁、4番・山川空三振の結果球も見せ場になった。
2-1と薄氷の1点差だ。
山川に一発飛び出せばたちまち逆転。
1塁走者は秋山のため二塁打でも同点という危機があった。
そんな状況で1-2から決着ついた福井ラストピッチのシーンだ。
まずは両手を胸のほうに持ってくる「来い!」のジェスチャー。
その後、ホームベース手前の地面を右手で指すこと2度。
「自信を持って投げて来い!」
「絶対に低めに制球してくれ!」
「ワンバウンドを投げる気持ちで投げてくれ」という、思い溢れたリードになった。
福井もその期待によく応えている。
この日最も落差のあるフォークが地面すれすれに落ちていく絶妙軌道を描き、みごと山川のバットに空を切らせたのだった。
思いは形にしなければ伝わらない
どうだろう?
今、高校野球でもここまで必死のジェスチャーで投手を鼓舞する捕手はいないのでは?と思う。
ましてやプロの世界である。
冷静に考えれば、お互いプロなのだから、腕を振って投げるのも、決め球を低めに制球することも言わずもがな、あたりきしゃりきのこんこんちきだ。
それをわざわざ大きなジェスチャーで何度も何度も。
それも自分より年上で1軍実績も豊富な先輩投手に逐次くどいほど伝える必要はあるのか?
おそらく山下以外の捕手なら、、、
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