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開幕1軍漏れから1ヵ月。なぜ高梨雄平は巨人へ放出されたのか

※本稿は全文noteに公開中。最後まで閲覧いただけます。

泣いて馬謖を斬る

この1か月、楽天ファンをざわつかせた『高梨雄平の開幕1軍漏れ事件』。
本日7月14日午後、疑問を残しながら「衝撃の結末」を迎えた。

昼過ぎ、手元のスマホに表示された「巨人・高田萌生と楽天・高梨雄平が電撃トレード」の一報。その文字列を二度三度と見返した僕は、三国志に例えるなら「泣いて馬謖を斬る」だと、悶々としながら悟った。

蜀の諸葛孔明の臣下・馬謖が軍令違反を犯して魏に大敗。その責任を問うかたちで天才軍師が、手塩にかけた秘蔵っ子を、泣いて斬罪に処した故事にもとづく。規律を維持するためには、たとえ愛する者や優れた能力の持ち主でも、違反者には厳しく罰することのたとえだ。

週刊ベースボール誌のカラーを5ページで独占してから約2ヵ月、開幕1軍漏れから約1ヵ月、このような帰結を迎えた背景には「高梨=馬謖」だったことが大きいと思う。

不在を痛感したソフトバンク6連戦

高梨は馬謖と同様、並外れた一芸の持ち主である。

2016年ドラフト9位(全体85位)。川越東高、早大、JX-ENEOSを経て楽天入り。

ドラフト会議の4ヵ月前に上手投げから横手投げへ転向し球界への門扉を開き、数少ない左のサイドスローを武器にしてサバイバルしてきた。さらに複数年にわたって確かな1軍実績を作ったとなれば、現役ではほかに宮西尚生(日本ハム)しか思い浮かばない。

プロ1年目から46試合に登板。パリーグ最優秀救援防御率になる1.03をマーク。2年目は球団記録を塗り替える70試合に投げ、オフには侍ジャパンの一員として日米野球を戦った。

3年目の昨年は虫垂炎による戦線離脱を経験しながらも48試合に登板。わずか3年間で164試合123回、4勝5敗44ホールド、防御率1.90の好成績を作りあげた。

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とくに左打者にはめっぽう強い。

その通算対戦成績は被OPS.503、被打率.179。
ここまで左打者319人と対戦して許した本塁打はたったの1本だけ。

左打者の内角を狙う攻めの投球を切り札の1つにする高梨は、プロ1年目に初顔合わせの左打者をじつに33打数2単打に抑えている。

主な左打者との通算対戦打率でも、森友哉(西武).143、吉田正尚(オリックス).091、柳田悠岐(ソフトバンク).167と、ほぼ完璧に抑えてきた。

それだけに、柳田にホームラン5本を含む22打数10安打8打点と大暴れされて負け越した先週のソフトバンク6連戦では、多くのファンが高梨の不在を嘆いた。

手薄の左投手がさらに手薄の不可解

派手にヤラれたそんな直後の霹靂だっただけに、今回は驚いた。

楽天は先月25日、ウィーラーと左腕・池田駿の交換トレードを巨人との間で合意したばかり。
その(表向きの)理由は、日刊スポーツによれば「出場機会を求めるウィーラーにプレーする場所を与え、なおかつ手薄な左投手を補強するというチームの方針」だとされている。

しかし舌の根も乾かないうちに、その薄い左投手選手層の中から1軍実績豊富な高梨を放出するというのだから不可解きわまりない。そのことを踏まえると、必然と推論は以下に辿り着くのだった。

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致命的になったYouTube開設

高梨は馬謖と同様、チームの決まりごとを破った。

緊急事態宣言の発令下、東京の新型コロナウイルスの新規感染者が12日連続100人超えを記録した4月27日、YouTubeに自身のチャンネル「たかなしきっちん」を開設。鶏肉のフリカッセで料理ユーチューバーとしての第一歩を踏み出した。

結論から言えば、これがマズかった。

野球との関連が薄いこの副業が、三木肇監督の上の球団上層部の間で問題行動と捉えられたのでは?と推測するのだ。

三密がさかんに叫ばれた3月以降、佐藤健、渡辺直美ら数多くの芸能人、著名人がこぞってYouTubeの動画配信に進出。球界でも前田健太がYouTubeに乗り出し、今やチャンネル登録者数22万人超えの人気ユーチューバーである。

おそらく高梨もその流れに乗ったのだろう。当時は先行き見えぬ開幕延期と練習自粛のSTAY HOME。きっと気分は事実上のオフだった。

そのなか、セカンドキャリアを見据えながら、「たかなしきっちん」をOPEN。実際、5月3日、球団公式で行われた松井裕樹とのインスタライブでキャリア設計云々の“匂わせ発言”をしている。

参稼報酬期間にサイドビジネス進出

ところが、この認識が甘かった。

4月27日はオフではないのだ。

統一契約書に明記された参稼報酬期間は2月1日~11月30日。
4月27日はこの参稼報酬期間の真っ只中だ。

本業に精を出す期間に、野球と関係なさそうにみえるサイドビジネスに着手したことが問題視されたのでは?と思う。

もっと言えば、収益化しにくいTwitterやInstagramに料理の写真をアップするだけなら微笑ましい話で済んでいたところ、サムネイルも立派、オシャレで凝った編集入りの動画をYouTubeに定期的に上げ続けた行為がアウトになったと感じる。


もっぱらオフに行われるプロ野球選手の副業

しかし、プロ野球選手の副業は珍しくもなんともない。バラエティなどのテレビ出演に始まり、昭和の時代ならレコードをリリースすることも。それらはオフのときがもっぱらだったと思う。

球宴や日本シリーズで他球団の現役選手が実況席にゲスト解説として呼ばれることがある。あれは野球を伝える仕事だから容認されるのだろう。

そういえば、球宴を翌日に控えた2009年7月23日、楽天の草野大輔が『笑っていいとも』にテレビ電話で生出演したこともあった。

これは自らの副業をアピールしたわけではなかった。

売り出し中のアイドルをタモリにアピールする企画で、いとこにあたるアイドリング!!!の酒井瞳のお助け役としての出演だったから、今では良き思い出になっているのだろう。

オーナーの逆鱗に触れた?!

今年、楽天は本気で優勝を目指すシーズンを戦っている。

昨秋、「3位になれたのか、3位にしかなれなかったのか、みんなもう1度考えてほしい。僕の中では3段階に分けたらBクラス」とナインに激を飛ばし、生え抜き指揮官を更迭して新体制を作り上げた石井GM。

その経緯を踏まえれば、今年は最最最最最低2位以上、優勝は必須ノルマとハードル上がっている。

また、優勝戦線を勝ち抜くための十分な大型補強も繰り返した。主戦級選手の大半が20代後半~30代前半を迎える2020年と2021年に照準を絞って、ドラスティックなチーム編成を貫いてきた。

準備整い、満を持して2度目の優勝へと向かう大願の前には、ナイン全員が心を1つに合わせる必要がある。少しでも足並み乱すことは許されない。

まさに「泣いて馬謖を斬る」である。

仕掛け人は石井GMではなく、三木谷浩史オーナー案件の可能性も捨てきれない。

感染が拡大した3月4月、相当の危機感を募らせてTwitterでさかんな情報発信を繰り返し、腰の上がらない政府に対し再三の緊急事態宣言を要求したのはオーナーだった。

イーグルスが2月下旬から徹底した感染防止対策を採ったのも、オーナーの意向だとされている。

そんな巨大コングロマリットの総帥の目には、自粛期間中の高梨の姿はどう映っただろうか。

SNS上の様々な感想

最後に、僕のこの推測に対し、Twitterでは様々な意見が飛び交っている。
これをお読みのあなたの仮説はいかに?

「こんなのやってたんだ笑」

「これがほんとなら放出納得」

「それは知らんかったなー わりと地雷かも」

「結論 ルール守らない奴は 巨人送っとけの精神」

「それなら放出も納得してしまう」

「このツイート見てたから高梨トレードは余計びっくりした」

「事実だとしたらめちゃくちゃ面白い」

「普通に今期状態良くないからやろ多分」

【終】

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