【戦評】見逃しストライク31個で2.2点を逸機した楽天打線~8/18●楽天4-9日本ハム
ストライクを見逃して2.2点を逸機
猛暑の所沢で4勝3敗1分と勝ち越し、燃え尽きてしまったのか。
同一カード6連戦の最終週となるこの日、札幌へ転戦したイーグルスは大敗を喫した。
これで引き分けを挟む今季3度目の3連敗。
その3連敗はいずれも9失点以上の投壊状態が、今後へ暗い影を落としている。
敗戦投手は弓削、今季2敗目(3勝)だ。
昨年は日本ハム戦で3勝をあげた。7/30にはプロ初の完封勝利を敵地で記録し、試合前には「マウンドが高くて硬い。好みに近い」と札幌ドームについて言及した長身左腕が、自己ワーストの6回途中15安打9失点とリベンジに遭った。
初回、1番・小深田の奇襲攻撃と2番・鈴木の31歳誕生日を自ら祝う先制打でわずか4球で1点先取した楽天。その電光石火もどこへやら、直後に中田18号2ランを含む4点を奪われ、翌2回にも2失点。早々にゲームの主導権を手放した。
ファイターズ先発は上沢。昨年6月の左膝蓋骨の骨折後、楽天戦初登板だった。
この復帰明け初対戦という要素と序盤大量ビハインドという戦況が、楽天打者を後手後手にさせた。
上沢が楽天打線から奪った見逃しストライクはじつに31個を数えている。これは全114球の27.2%に当たる。
統計上、守備側がストライクを1つ奪えば得点期待値を0.071点減らすことができると言われている。
それにもとづくと、31個×0.071点だから、この日、上沢は見逃しストライク31個で2.2点を防いだことになるわけだ。
楽天は相手先発・上沢がマウンドを降りた8回、二番手・金子から田中の待望1号2ランなどで3点を反撃。しかし、大量点差を埋めるには至らず、4-9で敗れた。
そんななかでも10安打を放ったイーグルス打線。
3安打は小深田(3度目)と島内(7度目)、マルチヒットは田中が記録している。
同日、ZOZOマリンではロッテが若鷹軍団を迎え撃っていた。ソフトバンクに強い美馬が額面どおりの好投をみせると、若き4番・安田が千賀を打ち砕き、ロッテが6-4の勝利。
ソフトバンクは昨年2勝10敗と大きく負け越した鬼門の今季初ゲームを落とすかたちになった。
これにより、楽天はロッテに抜かれて今季初めて3位へ後退。
チーム成績は51試合27勝22敗3分の貯金5。
各種戦績は、8月8勝6敗1分、直近10試合5勝4敗1分(得点47/失点58)、日本ハム戦4勝3敗、ビジター10勝11敗1分、カードの初戦6勝4敗、先制した試合19勝9敗1分になった。
ゲーム差は1位・ソフトバンクと1.5、2位・ロッテと0.5、4位・日本ハムと2.0、5位・西武と5.0、6位・オリックスと1.0.になった。
◎両軍のスタメン
楽天=1番・小深田(遊)、2番・鈴木(一)、3番・茂木(三)、4番・浅村(二)、5番・島内(左)、6番・ロメロ(指)、7番・田中(右)、8番・太田(捕)、9番・辰己(中)、先発・弓削(左投)
日本ハム=1番・西川(中)、2番・松本(左)、3番・近藤(指)、4番・中田(一)、5番・大田(右)、6番・横尾(三)、7番・渡邉(二)、8番・清水(捕)、9番・中島(遊)、先発・上沢(右投)
◎試合展開
一枚上手。中田レベチの18号2ラン
試合後、伊藤投手コーチのコメントは、いつにも増して厳しかった。
「状態が悪く体も重そうで、コントロールも悪くキレがなかった。しっかり反省して、次に生かしてほしい」
しかし、Twitterにも書いたが、弓削の状態をそのようにさせたのは、首脳陣の起用も原因の1つになっているのだ。
社会人卒とは言え、まだプロ2年目。1軍実績をこれから作っていく立場なのに、エースやベテランをさしおいて同一カード6連戦の初戦を任せる重責を与えたのだ(9登板中6登板)。
9登板の中には7/16○E7-4でのプロ初のスライド登板(このゲームは打球直撃で涙の負傷降板に)、8/4○E7-6Hには千賀と投げ合うなかでプロ初の中4日といった変則登板もあった。7/30○E4-3Mには幸い風は穏やかだったが投手泣かせのZOZOマリンでプロ初登板、前回8/11○E7-5L所沢は観測史上8位の最高気温38.3度を記録した日のナイトゲームだった。
ということを考慮すると、弓削は僕らの想像以上に心身の疲労をため込んでいたことになりそうだ。そこに思いを馳せることのない伊藤コーチのコメントに僕は落胆した。
15安打中、速球で9安打を許した。
また半分に当たる7安打は、捕手の要求したコースには到達せずストライクゾーンに甘く入ったり逆球になるなど制球不如意だった。初回近藤の同点二塁打や、本人も珍しいと口にした4回大田の右越え6号ソロも、そんな失投だった。
しかし、序盤の戦況を決定づけ、北の軍団を勢いづかせた中田の18号2ランは、弓削の失投ではない。今季は一味違うレベチな中田を見せつけらるかたちになった。
結果球は、中田本人も「難しい」と口にした外角カーブだった。
初球は外角低めいっぱいフォークで見逃しストライク。
2球目はインハイ釣り球真っすぐでボール。
決着は1-1からの3球目だった。
外の緩い116キロを上手くすくいあげられ、左翼席に運ばれてしまった。
先週、中田の打率/出塁率/長打率は.429/.458/1.048。目覚ましい打棒で1週間4本の一発を量産し、パリーグ本塁打ランキングの1位に躍進した。しかし、その4発の結果球にカーブは含まれていなかったのだ。
そのため・・・(続く)
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