【試合評】石井監督に期待したいVへの執念、聖域なき采配~5/14●楽天4-5西武
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森原6失点炎上以来の逆転負け
ブセニッツ右足打球直撃の負傷降板という不測の事態があったとはいえ、逃げ切って連敗を止めなければならないゲームだった。
本戦に勝てば、日曜日の結果次第では今週1週間の星取表は五分にできるチャンスがあった。それだけに3点差を覆されての逆転負けは痛い。
7回に一挙4失点。じつは今季ここまで7回はわずかに4失点だった。相手のラッキーセブンだが、楽天投手陣は被打率.168に良く抑え、イニング別失点で最少に抑えていた。それだけに、4失点はショック残る失点劇になってしまった。
6回終了時に3点以上リードした展開で逆転負けを喫したケースは、2020年7/22●E7-11B(楽天生命パーク)以来となる。
あのときは6回終了時に5点リードしていたが、ひっくり返された。思い出した読者さんもいるかもしれない。松井裕先発転向で抑えに白羽の矢が立った森原が、2点リードの最終回に登板もセーブ失敗。守備の連携ミスや野選なども絡んで大量6失点したゲームだ。あれ以来、森原は本来の輝きを取り戻せていない。
7回ブセニッツ負傷。安樂登板の是非について
Twitterにも書いたが、7回1死1塁の場面。愛斗のライナーがブセニッツの右足に直撃、1死3,1塁に変わったシーンだ。
転倒したブセニッツは起き上がったもののベンチ裏に姿を消したまま負傷降板。このスクランブルに本来なら8回に行くはずの安樂が前倒しで投入された。
ご存じのようにベルーナドームのブルペンは観客席から見える位置にある。しかし、中継カメラはなかなか射抜いてくれないので、詳細どうだったか分からない。
ただ、このときは安樂1人だけが肩を作っていたように見えた。コールを受けた後、手渡されたポカリスエットを何度か口に含んだ後、マウンドへ向かったのだ。
おそらく安樂は序盤に1度肩を作ったと思うが、当初予定されていた8回へ向けて登板直前の準備はまだしていなかったと思う。だから、あの場面はかなり急いで肩を作っていたフシがある。
僕は安樂がどの程度で肩を作ることのできるタイプか知らない。しかし、5~6球パパッと投げてもへっちゃらなタイプじゃなかったら、安樂は十分な準備が整わないまま急行した可能性があるのだ。
こういうときは、危険球退場などアクシデントに備えて肩を作っている投手がいるはず。昨年なら西口がその任に当たっていた。今年は本戦のベンチ入りメンバーを見る限り、小峯とか吉川では?と想像する。
ならば、ここも緊急事態だから、小峯とか吉川に行ってもらっても良かったかもしれない。中継カメラがブルペンを射抜いたときは安樂1人だけだったが、その直前までは彼らも準備していたと想像する。(実際は分からない)
1点差ではない。2点差でもない。せっかく3点差あったのだ。この状況を活かさない手はなかった。
安樂にブルペンの時間を確保するため、彼らが金子と対峙する。
牽制球を挟みながら、のらりくらりと時間を引き延ばす。そうして金子を凡退させることができたら良し。仮にヒットを打たれ、3塁走者の生還を許しても問題ない。まだ2点差あるわけだ。
時間を確保でき、ブルペン準備を終えた安樂は、金子の後の川越のところで投入。そういう選択肢もあったと思う。
実際、安樂は金子への3球全てボールゾーン投球だった。続く川越には初球、2球とボールに。3球目は空振りを奪ったものの、捕手のミットの位置と実際投げ込まれたコースをみると制球不如意だったと言える。そして滝澤への2球は、いずれも真中に集まった。
安樂が球をコントロールできていない理由について、試合後、石井監督は「昨日、今日とボールが真ん中に集まってくるので、もう少し散らしていかないと彼の良さは出ない」と語った。
昨日からの傾向だと診ているわけだ。そのことは否定しないが、僕はそれ以上に十分な準備ができず急遽マウンドに向かったことのほうが、より大きく影響を及ぼしたと思うのだ。
金子のアウトを活かしてほしかった
準備整わないままマウンドに向かったとしても、安樂には何とかしてリードを維持したまま7回を締めくくって欲しかった。
最初の打者、金子は相当打ち気に逸っていた。
3球三振に倒れたわけだけど、前述したとおり3球とも見逃せばボール球だった。
バット振らずにいたらボール先行3-0になっていたのに、わざわざくいついて力んで空振り3つを計上してくれたわけだ。
取らなければならないアウト2個のうち、相手がアウト1個をプレゼントしてくれたとも言える場面だった。それを活かさない手はなかった。
それにしても、金子は高めのストレートに弱いのは今年も変わっていない。
今日も独特。楽天バッテリーのvs山川の配球
前日、山川に12球連続カーブなど異色の配球を試みた楽天バッテリー。
今日もユニークな配球を見せてくれた。
1回2死1塁、空三振に退けた1打席目。今日の初球もカーブだった。
2球目でようやく真っ直ぐ。緩急差27キロをつけた145キロで空振りを奪って1-1に。そこから結果球まで3球連続で今度はチェンジアップだった。
ストレートの四球を与えた2打席目は、4球中3球がスライダー。山川は前日からの文脈でカーブを意識するなか、チェンジアップ連投、スライダー連投に遭ったわけだ。
結局、空三振、四球、右越安、一飛。
2出塁は許したが、OPS1.364、打率.361、94打席で14発を量産する絶好調の山川に、ホームランを含む長打を許さなかったのだから、楽天投手陣の勝利だろう。
これで今季の対戦成績は、19打席、16打数4安打2打点、1二塁打、1本塁打、3三振、2四球、1死球、打率.250、OPS.868に。
対戦カード別では楽天投手陣が最も良く抑えている。他球団は打率.333~.421と打たれ、OPSも1.286~1.667の間で推移している。楽天戦の数字だけが山川にとってかんばしくない成績になっている。
楽天バッテリーがここまで執拗に変化球にこだわり、真っ直ぐを隠したのには理由がある。山川の14発の球種を確認すると、ストレートだけで11本を量産しているからだ。
楽天投手陣のvs山川の球種割合は、以下の円グラフのとおり。
55球のうち、ストレートは11球のみ。わずか20.0%にとどまっている。
浅村25打席ノーヒット
島内、マルモレホス、辰己が打撃の調子を上げるなか、逆に調子を落としているのが西川、浅村、3・4月の快進撃を支えた両名だ。
なかでも深刻を極めるのは3番の浅村。
一時期の本調子はどこへやら。5/8○E2-1Bの2打席目を起点に25打席でノーヒットなのだ。
7回に4失点。4-5と逆転され、逆に1点を追う立場になった9回。先頭の2番・黒川がツーベースで出塁した。無死2塁で3番・浅村に打席がまわる。
ここで増田の前に空三振に倒れてしまったのが、残念だ。
軽打に切り替え、右打ちで二走・黒川を3塁に送り込むチーム打撃の意識は、少なくとも僕には微塵も感じられなかった。
前日、東京ドームで行われた巨人vs中日戦では、1-1の同点で迎えた4回無死2,1塁、中田翔がプロ初の犠打を通算6245打席目にして記録し、SNS上で話題をさらっていた。
このバントを報じたサンスポの記事は、以下のように報じている。
同じ意識が指揮官、そして浅村にあっても良かったのでは?と思う。
原監督にできて石井監督にできないはずはない。大阪桐蔭高の先輩にできて、キャリア通算45犠打の記録を持つ後輩にできないわけがない。
FA4年目の最終年。楽天が獅子の主砲を東北に招聘した理由。それはいろいろあるのだろうけど、最大の理由は勝利に貢献すること。2度目の優勝~日本一に尽力してもらうこと。これに尽きる。
今年が過ぎれば、石井GM就任以降、FAなどで戦力補強してきた実績十分の主力組の加齢が一段と進み、そろって好活躍することが、より難しくなる。
西川も30歳、島内も32歳になった。炭谷は今年7月で35歳なのだ。
2022年という機会を逃すと、若手育成、世代交代への対応を余儀なくされ、優勝の二文字は遠のきかねない。だからこそ、今年は泥臭く、状況によっては自己犠牲をもいとわないプレーを貫いてほしい。【終】
・・・というようなデータなどをまじえた試合感想文やコラムを『Shibakawaの楽天イーグルス観戦記2022』で綴っています。