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【戦評】イヌワシ打線に対し、敵軍バッテリーが犯した『禁忌』とは~4/10〇楽天7-5西武

新戦力の躍動で因縁対決2連勝!

楽天は球団創設以来、西武に勝ち越したのは2016年の1シーズンしかない。

2017年夏場に発生した世紀の大失速。
2018年開幕からの歴史的低迷。
これらの原因が西武戦で引き起こされたことを考えると、イーグルスが真に警戒すべき永遠のライバルは、ライオンズと言える。

そんな因縁対決は今シーズン敵地2連勝でスタートした。

初戦は浅村栄斗、2戦目は福井優也。
昨年までクリムゾンレッドに不在だった「新戦力」が躍動。
試合後、ヒーローインタビューに呼ばれた彼らの活躍もあり、同日ソフトバンクが日本ハムに敗れたため、楽天は2017年8月14日以来のパリーグ首位に輝いた。

2位・若鷹軍団を仙台に迎え撃つ週末3連戦を前に、首位に立つことができたのは大きい。

チーム成績は11試合7勝3敗1分、貯金は今季最多の4。
ゲーム差は2位・ソフトバンクと0.5、3位・西武、4位・日本ハムと2.5、5位・ロッテと3.0、6位・オリックスと3.5になった。

両軍のスタメン

楽天=1番・田中(中)、2番・茂木(遊)、3番・浅村(二)、4番・島内(左)、5番・ウィーラー(三)、6番・銀次(一)、7番・ブラッシュ(指)、8番・嶋(捕)、9番・オコエ(右)、先発・福井(右投)

西武=1番・金子侑(左)、2番・源田(遊)、3番・秋山(中)、4番・山川(一)、5番・森(捕)、6番・外崎(二)、7番・栗山(指)、8番・木村(右)、9番・水口(三)、先発・武隈(左投)


ファウル本数が教えてくれる彼我の状況

打者10人で長短4安打を放ち、貰った3四球を絡めての大量6得点。
5回ビッグイニングは、まさに圧巻絵巻になった。

「打者一巡」の定義が打者9人なら4/4日本ハム戦(○E11-2F)の6回、4/9西武戦(○E7-6L)の4回に続く今シーズン3度目。
打者10人以上とすると4/4に続く2度目の猛攻となり、獅子軍団を潰走にみちびいた。

目下、イヌワシ打線は1試合平均5.36得点。
心地よいバイブスのなか、全員が集中力を持って打席に臨んでいる。

両軍のファウル数もその証拠の1つと言えそうだ。

この日イヌワシ打線のファウルはストライク寄与11本に対し、追い込まれた2ストライク以降15本
後者が前者を上まわり、不利なカウントでも粘りをみせていた。

一方、西武打線は前者21本に対し、後者6本のみ。
楽天投手陣はストライク稼ぎのファウルを多く打たせカウントを作り、追い込んだら相手の粘りを許さず決着つけていたことが数字からも確認できる。

イヌワシ打線に対し、敵軍バッテリーが最もしてはならないこと

それにしても、この日、武隈x森の敵軍バッテリーは『最もしてはならないこと』を犯した。

楽天打線が3巡目に入り、1番・田中から始まる5回の攻撃。
4回までストライク率52.6%と苦しんでいた武隈のコントロールが遂に破綻をきたした。

球数80球以上に到達した5回は、本戦がキャリア通算10度目という先発経験に乏しい武隈のスタミナ、球威が落ちてくる頃合いだった。
立ち上がりは138.6キロ計測した速球の平均球速も、5回になると136.3キロまで下がっていた。

低い気温と疲労、僅差のゲーム展開、この回を抑えれば勝利投手の権利が入るなど。
様々な要因があいまって、バランスが崩壊したと思う。

1番・田中から3番・浅村まで3者連続3-1四球、楽天は労せずして無死満塁をえたのだ。

『島内の前に満塁の状況を作ること』。

これこそ楽天が目指すべき理想の攻撃の1つであり、対戦相手が最もしてはならないことになる。

というのは、島内は楽天屈指の満塁キラーなのだ。

当該通算成績はOPS.813、打率.333、出塁率.353。
復活の狼煙をあげた2016年以降では、OPS1.034、打率.405、出塁率.439と、まさに無双なのだ。

◎島内宏明 満塁の打撃成績

昨年は遂に「四球>三振」を記録したように、元来、ストライクゾーンの管理能力がとても高く、コンタクト率も抜群。
そんな島内の特性が、満塁という状況でさらに増幅されると想像する。

相手投手は押し出しを恐れて、通常よりもストライクゾーンを広く使うことが困難になる。
ゾーンの四隅を突く投球は、それがストライクになるかボールになるかは球審のサジ加減になるため、どうしてもゾーンの中に入ってくる。

島内はそこを狙いを絞って好球必打で応戦しているのだろう。
そのため、昨年は満塁での空振りがたったの2球しかなかった。

5回無死満塁、ボール先行3-1から武隈の高め136キロ速球を捉えた2点二塁打も、その典型だ。
結果球に至るまで1度もバットを振らず、研ぎ澄まされた集中力から一気に一閃。
右翼ポール塀際に運んだ2点二塁打は、逆転の殊勲打になった。

もっと言えば、今年の島内はサウスポーを全く苦にしない。

もともと左投手を極端に苦手にするタイプではない。
ルーキーイヤーの2012年8/24日本ハム戦で放ったプロ1号が、当時無双を極めた吉川光夫を打ち砕いた大当たりだったことからもわかる。
昨年も左投手を相手に打率.252と、一定のアベレージを残した。

しかし、今年は開幕前の対外戦で対左15打数6安打、1本塁打、1三振、3四球、打率.400
開幕後も、見三振、左線安、四球、一ゴと、成績を残していた。

本当、近年の島内は満塁で頼もしいし、対左でも心強い。
この効果は、前を打つ3番・浅村が本調子を取り戻すと、さらに期待できると思うのだ。

二塁打量産のイヌワシ打線

本戦、もう1つ良かったのは、島内の2点二塁打に象徴されるように、ツーベースが4本生まれたこと。
これも明るい話題になった。

◎本戦の二塁打

というのは、昨年セパ12球団最低の得点に終わった原因の1つは、二塁打がセパ12球団ワースト本数だったことも大きい。

他12球団が全て200本以上を記録したのに対し、楽天だけ166本。
この166本は楽天の球団記録でも最少だった。

今年は開幕11戦で21二塁打。
単純計算で年間273本ペースなのだ。

現在、パリーグ二塁打ランキングは、1位が銀次の6本。
4位タイに島内と茂木がランクインしている。

今後どうなる?『捕手銀次』の副作用

銀次の二塁打の多さには驚かされる。
ヒット11本中、6本が二塁打と、その割合の高さにもビックリ。

そんな銀次だが、この日は遊ゴ、空三振、右線二、投ゴ、投ゴ、打率は今季最低の.268に下がった。

やはり、心配されるのは『捕手・銀次』の副作用だ。
もちろん、あの起用は後世まで語り継がれる平石監督の名采配で、キャプテンマークの底力を見た感動場面だった。

しかし、延長12回裏、代打・マレーロのファウルチップを左膝付近に受けて悶絶するシーンがあった。
試合後、番記者の取材に対し、「ゲキ痛です。痛いです。でも痛いって言っちゃダメなんですよね。さっき、足立にそう言われました」と本音を吐露。

ふだんは味わうことのない痛みが、パフォーマンスにどう影響するか気になっていた。

『捕手・銀次』後は9打数1二塁打、1三振。
快音が途絶えがちになっている点が、やや気がかりなのだ。【終】

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