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新人王受賞! 楽天・田中和基選手に授けたい、データで診る「トリプルスリー」への処方箋


2018年パリーグ新人王は田中和基

本日11月27日、今シーズンの新人王が発表された。

2年目の田中和基が山本由伸(オリックス)らライバルを抑えて、見事に受賞!
楽天では田中将大(2007年)、則本昂大(2013年)に続く球団史上3人目の快挙を飾った。

今から1年前、田中の2年目覚醒を確信したファンは、どれだけ存在しただろう?

2年前に沖原スカウトが熱っぽく語った「まだ粗削りだけどトリプル3を達成できる可能性を持っている。柳田のスイッチ版になるのを期待している」という期待感を、額面どおりに受け取ったファンは何人いたのか?

入団当時、周囲から将来のトリプルスリー候補と囃し立てられる選手は腐るほど存在する。
本人もその気になって目標に掲げる選手も、掃いて捨てるほどいる。

イーグルスの直近でいえば、オコエ瑠偉が典型例だ。
彼が背番号9を選んだのも、トリプルスリーを達成した「ソフトバンクの柳田選手と同じだし、3+3+3で9が良かった」という理由だ。

今秋ドラフト1位の辰己も「自分にしかなれない選手になりたい。新人王? 取る自信はあるし、すべてのタイトルを取れる能力があると思ってます。(来年は)本塁打はまず20、30本は打つ。タイトルを取るのに年齢は関係ないんで常に狙えるものは狙う」と、トリプルスリーの先を見据える大胆発言をした。

しかし、プロの世界は厳しく、実際に達成させたのは、NPB史上10人13例と「狭き門」である。

打率.265、18本塁打、21盗塁。

今シーズンの田中は、その「狭き門」を将来的に押し開けるそんな夢を、ぼくらファンに持たせる「希望の成績」を残してくれた。

トリプルスリーを達成させるためには、3年目以降どの部分を改善したらよいのか?
どの部分をレベルアップする必要があるのか?

本稿ではシーズン中に集計した記録を用いて、以下の3点を指摘してみたい。

年間30盗塁への改善策とは?

27企図、21盗塁、6盗塁刺、盗塁成功率77.8%。
年間20盗塁は楽天では2013年の聖澤以来になった。

昨年の7盗塁を大幅に上まわり、チームでも最多盗塁。
しかし、30盗塁まで残り9個足らなかったのも、これまた事実である。

年間30盗塁をクリアするため、まず思いつくのは「出塁率の向上」と「盗塁成功率のアップ」だ。

出塁率.323はパリーグ規定打席29人中21位。
四球が少なく、安打以外の出塁率がリーグ平均.071を下まわる.058に終わったことが響き、出塁率が上がらなかった。

盗塁成功率77.8%は良い数字といえる。
しかし、44盗塁で最多盗塁に輝いた西川遥輝(日本ハム)は驚異の93.6%、34盗塁の源田壮亮(西武)も81.0%。
上には上がいるため、改善の余地は残されているはずだ。

これら2つの改善は必要だが、ここでは「別の視点」も指摘してみたい。

それは『盗塁企図の頻度を上げること』なのだ。

下記表をご参照いただきたい。

盗塁は3構造に分かれている。

まず、大枠の分母として『実際に盗塁企図できる機会』がある。

『実際に盗塁企図できる機会』とは、出塁しても盗塁企図できない状況を除いた「真に企図可能な状況」のことを指す。

出塁しても盗塁企図できない状況は、たとえば満塁など次塁が詰まっており、走りたくても走ることが超困難なケースだ。
ほかにも、次打者が送りバント作戦のとき。
2死1塁で次打者が初球打ちで結果が出た場合。
大量点差、とくに大量ビハインドのときは一塁手が1塁ベースに張り付かない場合もあり、そのとき盗塁は記録されない。

次に『実際に盗塁企図できる機会』の中から、盗塁を企図するか?企図しないか?の二択になり、企図が2番目の分母になる。
そして、企図の中から結果が盗塁と盗塁刺に分かれるというわけだ。

この構造で今シーズンの21盗塁をみると、下になる。

◎田中和基の21盗塁

盗塁成功率と同じく重視したい「企図率」

まず、表中の用語を説明したい。
「企図率」とは、『実際に盗塁企図できる機会』のうち何割企図できたか?仕掛けた比率を表している。

ぼくらは走者に対して出塁したら必ず走ってくるイメージを抱くことがある。
たとえば、西武時代の片岡易之、2011年盗塁王争いを演じた本多雄一(ソフトバンク)と我らが楽天の聖澤諒、今シーズンの西川などにあたる。

この企図率が50%以上を記録したとき、「この選手半端ないって!出したら必ず走られるよ・・・」という印象が強くなるのだと思う。

というのは、当方調査によると、2011年に60盗塁で最多盗塁だった本多の企図率は51.7%、52盗塁で2位の聖澤が61.0%を記録したからだ。

5月までの田中は、あの当時の本多や聖澤に匹敵するほどの高い企図率を誇っていた。
企図しても失敗なし、盗塁成功率も100%と絶好調だった。

6月は数字やや落ちたものの、それでも3~5月に準じた企図率・成功率を残している。

しかし、7月以降は企図率、成功率、いずれも激減している。

8月は盗塁成功率100%だったが、“仕掛ける頻度”はものすごく減り、企図率は21.7%どまり。
慎重にみきわめ、完全に盗めるときにだけ仕掛けたと思われる。
実際、敵軍捕手が慌てて投げた2塁送球が逸れたり、完全にモーションを盗んだことで「時すでに遅し」と2塁送球を諦めたり、8月の5盗塁は全て悠々セーフだった。

翌9月は企図率、成功率、超悪化した。
結果、トータルでみると、6月までと7月以降で明暗分かれるかたちになった。

6月まで・・・企図率44.8%、成功率84.6%
7月以降・・・企図率27.5%、成功率71.4%

7月以降の数値悪化には理由があると思う。

1つは体力不足だ。

1軍再昇格の5/23以降は全101試合プレー、100試合スタメンとフル出場で低迷するチームの希望の光になった。

月間打率が5月.360を頂点に、6月.326、7月.250、8月.286、9月.194、10月.200と尻すぼみの減少傾向を描いたのも、そして7月以降の盗塁成績が悪化したのも、1年間戦うスタミナ不足によるところが大きいと思う。

もう1つは、新人王の影響だ。

7月以降は田中に資格がギリギリ残っていることが広く報道され、新人王の有力候補と騒がれ始めた時期と重なる。
はっきり新人王を狙うなら、盗塁よりもインパクトのある数字を残したい。
盗塁よりも打率や本塁打だと思ったはずだ。

実際、終盤になるにつれ、新人王への抱負を訊かれた田中の口から飛び出した目標は「年間120安打を打ちたい。400打数で120安打を打てば、打率も3割になるので」「あと2本打って来年の目標を(20本より)さらに高くできるように」と打率、本塁打ばかりだった。

盗塁は野手との接触プレーも多くなる。]
瞬発的な動作を求められ、故障のリスクも生じる。
ペゲーロが昨年7/23オリックス戦で二盗を仕掛けたときに左足を痛め、この足の怪我が強打者を凡人に変えさせ、今季不振の引き金を引いた直近の事例もあった。

怪我をしてしまったら取れるものも取れなくなる。
田中も慎重になった可能性は高いと思う。

ところがだ。
トリプルスリーを狙う場合はそんなこと言ってられない。
盗塁も積極的に仕掛けて、最低30個は積み上げる必要がある。

そのためには「出塁率の向上」「盗塁成功率のアップ」と合わせて「盗塁企図の頻度を増やすこと」も不可欠になるはずだ。

あらためて下記の盗塁3構造を確認してみよう。

大元の分母を増やす対策は「出塁率の向上」になる。
今回指摘する「盗塁頻度の上昇」は2番目の分母を増やす対策になるわけだ。
「盗塁成功率のアップ」は最後3番目の部分。

これらの対策をバランスよく講じることができれば、30盗塁はクリアできるはずだ。

次に打率3割への処方箋について考えてみたい。


打率3割クリアのための課題点

再昇格から約1ヵ月後の6/24日本ハム戦(○E-F)。
終盤9回に決勝打を放ち、試合後お立ち台に登壇した田中は、今季最高打率.337を記録した。

9/18オリックス戦(●E3-5Bs)で自身初の規定打席に到達したときにも打率.281を記録。
依然として打率3割を狙うことのできる位置につけていた。
ところが、打率.265に終わったのは、好不調の波が大きすぎたからだ。

これについては指摘すべき3箇条がある。
そのうち1点は前述したとおりだ。

月間打率が再昇格の5月を頂点に月を追うごとに右肩下がりになった。
来季は勝負の夏、佳境の後半戦でも数字を作ることができるよう、オフの間に基礎体力のトレーニングに励んでほしい。

さらに、もう2点ある。

シーズン中に集計してきた田中の成績をいろいろ加工・集計してみると、ある期間や特定条件になると打率が悪化するという事例が判明した。

ここを安定させることができれば、打率3割も近づくと感じたので、この件について以下で指摘したい。

それは、、、

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