【試合感想文】 4/27楽天3-5ソフトバンク:可視化される置きにいった球の正体
4年ぶりに帰ってきた画期的サービス
今シーズンのソフトバンク主催中継の楽しみの1つは「1球ごとの回転数の表示」、ホームランなどのときの「打球速度、打球角度、飛距離の紹介」が帰ってきたこと。ここに尽きる。
このサービスは2019年に始まった。
しかし翌年からコロナ禍に見舞われてから実施されなくなってしまった。おそらく感染防止のため中継クルーの人員削減が行われた結果、そこまで手がまわらなかったと思われる。
コロナもようやく落ち着き、今年3/13からマスクの着用は個人の判断に委ねられ、いよいよ来月8日には5類移行となるなか、他球団に先駆けて先進的なサービスが復活したというわけなのだ。
4年ぶりに帰ってきた「1球ごとの回転数の表示」を観ながらやはり興味深かったのは、6回1死3,2塁から火消しに入った二番手・鈴木翔天のピッチングだった。
26歳左腕が投げた20球の詳細を下記表にしてみた。
可視化される置きにいった球の正体
球速は平均150.3キロ、スピン量は最大2608回転、平均2497回転を誇るストレートがとにかく魅力的だ。
比較するため、かつて楽天を大いに苦しめた菊池雄星の今季の4シームを確認してみると、153.5キロ、2340回転である。ほぼ同じ上背のサウスポーながらも、真っ直ぐの回転数だけで言えば「鈴木翔>菊池」と言える。
しかし、そんな自慢のスピードボールを、栗原陵矢に打たれてしまった。1死満塁、2-1からの真っ直ぐを右翼席へ放り込まれてしまった...
上記表に目を落としてみてほしい。興味深いことに気づく。
結果球は151キロで2480回転。
この日150キロを超えてきたストレート9球の中で(未表示だった1球を除けば)、栗原満塁弾の2480回転は最もスピン量の少ない球になっていた。最大2608回転から128回転減だった。
1死3,2塁でギータに四球を与えたことで塁が埋まり、思いきり腕を振って投げることができなくなり、ストライクゾーンに入れることを優先した結果、腕が振れずにスピンの量も落ちてしまった、ということなのだろう。
栗原との4球勝負、捕手・安田悠馬のミットは常にアウトコースにあった。にもかかわらず、上記表のコースのところを確認してほしい、真中低めに3球集まっているのは、外角を狙ってボールになりたくない心理が働いたからと思われる。
つまり、ボール先行2-1から151キロのストレートを置きに行ってしまったと言えるのだ。豊富なスピン量を誇る150キロ越えの真っ直ぐが、これでは台無しだ。
その後、増田に投げた真っ直ぐは球速も150キロを下まわり、回転数も2300回転に。
もうこの辺りになると、鈴木翔も戦意喪失して心あらずだったのだな、ということが回転数でも可視化されてくるわけで、今季のソフトバンク主催中継は俄然楽しくなってきた。次回は交流戦明けの6/28(水)、6/29(木)の2連戦になる。
近藤健介の技量。安田悠馬の配球
今季敗因の最大原因は、とにかく点がとれないことに尽きる。負けた試合の1試合平均得点は1.85なのだ。
そのことを前提にしつつ、前半戦はスコアレスの投手戦で進んだ本戦の明暗を分けたターニングポイントの1つと言えば、6回1死1塁、近藤健介の左翼線ツーベースだった。
6回は若鷹軍団の攻撃が1番・三森大貴から始まる好打順だった。しかも先発投手にとって踏ん張りが要求される3巡目の攻防だった。
1死後、2番・中村晃は遊安。ショート右・2塁ベース左を射抜こうかというヒット性に、山﨑剛が球際滑り込んで抑えたものの苦しい体勢から1回転しながら投げた1塁ワンバン送球が完全間に合わず内野安打になったもの。これは仕方のない出塁だったと思う。
問題はその後の近藤だった。
2-2と追い込んだ5球勝負だった。初球外角カーブが・・・(続く)
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