【試合評】遥輝のバットに火を入れた! 球団新に貢献した田中和基8回好走塁~5/6○楽天3-2オリックス
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これぞ!鈴木大地だ!
心底、驚かされた!
プロ11年のキャリアでも年間最多15発である。二ケタ本塁打も3シーズンのみ。パンチ力は所持するものの、そうそう頻繁にホームランを打つタイプではない。
にもかかわらず、あの離れ業を演じてみせたわけだ!
場面は同点で迎えた9回1死走者なしだった。
鈴木大が敵軍の抑え・平野の初球を完璧に打ち砕いた。背走するライト頭上を高々と越えた1号ソロが、楽天球団史上初の8連勝をみちびいた。
FA4年契約の3年目の今シーズンは思わぬ不振。とくに真っ直ぐに刺されるケースが目立ち、ストレート打率.195と低迷。147キロ以上の球になると率はさらに下がり、18打数2単打1三振2四球の打率.111だったのだ。(下記表参照)
それなのに仕留めた球は、データ的には分が悪い148キロのストレートだった。
もっと言えば、昨年NPB復帰した平野が、レギュラーシーズンで左打者との対戦122打席目にして許した初の被本塁打になった。
一発を量産するタイプではない打者の貴重な虎の子の1本が、勝敗を左右する終盤の接戦で飛び出した! これこそベテランの成せる業なのかもしれない。
トレードマークの全試合出場はすでに途切れてしまったが、鈴木大にこれだけの力がまだあれば、シーズン終わるころには、打率.275、OPS.736といつもどおりの数字を残してくれるはずだ。
5月1割台のハルキに火を入れた、カズキの好走塁
開幕前、球団公式Youtubeが実施した「彼氏にしたい選手は誰?」企画。そこで寺岡から「鈴木大地さんですかね。笑顔も素敵だし、なにより性格がすごいいい人だなって思いますね」と推しを受けた32歳の劇弾も、遥輝の活躍があってこそだった。
1回表に浅村の2試合連発の6号ソロで1点先制したものの、直後に2失点。スコアは1-2のまま終盤8回まで進んでいた。イーグルスは二番手ビドルを攻め、2死3塁で1番・西川に託したわけだ。
ここでビドルとの6球勝負を制し、2-2からの129キロカーブをみごとに捉えて右中間後方へ飛ばした西川の一撃でゲームを振り出しに戻すことに成功!
まるで3/27○E6x-5M、1点を追った3回1死2,1塁、0-2と追い込まれた状況から佐々木朗のスライダーを右越えの2点ツーベースにしたあの打席を彷彿とさせるような一打だった。
そんな、やんちゃ魂が炸裂した遥輝の同点劇も、田中和の先導あってこそ。
この回、先頭で打席に立ってカーブを右足に受ける死球で出塁。無死1塁から二盗を決めると、辰己の左飛で果敢にタッチアップ。好走塁で3塁を陥れていた。
もちろん西川の当たりは三塁打だ。田中が1塁止まりでも良かったのかもしれない。そういう見方もあるだろうけど、個人的には田中和の盗塁・走塁が、5月に入って本戦3打席目まで16打数2安打の.125だった西川のバットに、火を入れるかたちになったと信じたい。
直近7年間でわずかに2例
その意味で、田中和の二盗は戦況を一変させる価値大のスチールだった。
負けている展開の終盤8回以降、ノーアウトから盗塁を決めた楽天走者の記録は、2016年以降の直近7年間では本戦の田中和を含めてわずかに2例だけ。
2018年8/8日本ハム戦、1点を追う8回無死1塁、1塁走者・島井がトンキン&鶴岡のバッテリーから決めた二盗と、この8回でみせた田中和の二盗だけなのだ。
それだけ、終盤のビハインドでのノーアウトでの盗塁は珍しい。もしアウトになったときのリスクを考えると、なかなか仕掛けることはできない。
マウンド上は新外国人左腕のビドルだった。1塁と正対するわけだから、なおさら走りにくい。外国人=クイック下手。そんなイメージがあるけど、あの場面は複数計測したところ1.15~1.20秒以内で、クイックの合格ラインだった。
また死球で出塁してから二盗を仕掛けるまで1度も牽制球はこなかった。牽制球を何度か受けていると、投手の癖や牽制のタイミング、間合いなどいろいろ情報収集もできるため、逆に走りやすくなる部分も生じる。しかし、この場面はそうではなかった。
それなのに、素晴らしいスタートを切った。
捕手は頓宮だった。この日は田嶋を好リード。楽天の攻撃がちょうど3巡目に突入した6回には、みごとな好配球で西川、小深田、浅村を三者連続三振に退けた。とくに浅村との対戦ではアウトロー変化球で空三振にとる直前、胸元へ厳しく2球連続でブラッシュボールぎみの布石球を田嶋に投げ切らせていた。
よくお互いの好投に触発されて両軍の先発投手が投手戦を演じることがある。それと同じで、捕手も相手捕手の好リードに刺激を受けて自らのインサイドワークも切れ味を増す瞬間はあるんじゃなかろうか。
直前の5回、楽天の炭谷が初回に同点タイムリーを打った吉田正との5球勝負で、瀧中にカーブ5連投の配球を出し、みごとに体勢崩させての右飛に打ち取っていた。このリードに刺激されての6回表の三者三振リードになったのでは?と思わされた。
しかし、この場面、25歳4年目の捕手は、若干、辰己はバントだろうと決めつけていたフシはあるかもしれない。2塁送球はベースカバーに入った紅林が軽く飛び跳ねて捕球するかたちになった。
左飛で2塁→3塁!
その直後、小深田の左飛で三進した好走塁も、闘志と必死さが伝わるナイスランになった。
たとえば、無死または1死、2塁または2,1塁の場面、左飛で2塁→3塁は年間どのくらいあるのだろう?
昨年の楽天の記録を調べてみると、たった2例なのだ。
6/10中日戦の3回無死2,1塁で島内左飛で三進した鈴木大、8/26オリックス戦の2回無死2,1塁で岡島左飛で3塁を奪った浅村、この2例だけになる。
それだけ滅多には発生しないイベントなのだ。
いくら吉田正の肩が実況パワフルプロ野球でF39の弱肩査定だったとしても、覚悟を決めて走らないと奪うことはできない。
実際、3塁送球との勝負になった。最初から狙う気持ちじゃなかったら、いくら田中和とはいえ、アウトになっていたかもしれない。
その意味で、西川の三塁打は本当に素晴らしかったのは間違いないところだけど、あの8回、僕の目は田中和の走りに釘付けになりました。ビドルを動揺させた好走塁になったと思います。【終】
・・・というようなデータなどをまじえた試合感想文やコラムを『Shibakawaの楽天イーグルス観戦記2022』で綴っています。