【戦評】 楽天を有利にしたオリ西村監督の継投ミス~4/21○楽天7-3オリックス
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負けの特異日で初勝利!
これまで4月21日は、楽天の「負けの特異日」だった。
球団創設以来、3試合以上の記録がある全ての日付で、唯一の勝率.000が当該日だった。
昨年も同じ仙台でのオリックス戦、西にマウンドを支配され1-3で惜敗。
4月21日の戦績は9戦9敗に悪化していた。
今年、その負のスパイラルを断ち切ったのが、先発・釜田の好投だ。
昨年6月の右肩・右肘手術から復活を遂げた赤茶グラブの闘球が655日ぶりの白星。
6回途中3失点の準クオリティスタートを記録すると、打線も嶋の先制2ランなど7得点と力強く援護。
投打かみ合い、7-3で新たな歴史を作っている。
ところで、最後は少し固唾を飲むかたちになった。
4点差の最終9回、締めのマウンドを任されたのはベテランの青山。
15周年の球団史の大半を共に歩んできた青山といえば、4月21日の成績がかんばしくないのだ。
下記表をご覧いただきたい。
◎青山浩二 4月21日の投手成績
通算38敗中、4月21日だけで3敗、防御率10.38だった。
4月21日に登板すると必ず失点し、2012年には松田に満塁弾を浴びていた(自責3なのは前の投手が残した走者が1人含まれているため)。
今回は4点差あるため、よもやの事態はほとんどないだろう。
しかし4/17西武戦(○E7-4L)のように、ピンチを招いて背番号1が引きずり出されることを危惧したが、何事もなくワンツースリーで任務終了、ホッとする瞬間になった。
これで通算勝利数は901へ。
球団創設時に因縁のあったオリックスと2005年以降の白星でちょうど並ぶ数字になった。
チーム成績は1位、19試合12勝6敗1分、貯金は今季最多の6に。
同じ開幕19試合で2013年8勝11敗、2017年15勝4敗。
ゲーム差は2位・ソフトバンクと1.5、3位・日本ハムと3.0、4位・西武とロッテ、6位・オリックスと4.5になっている。
両軍のスタメン
オリックス=1番・福田(二)、2番・小島(左)、3番・吉田正(指)、4番・メネセス(一)、5番・杉本(右)、6番・頓宮(三)、7番・大城(遊)、8番・若月(捕)、9番・西浦(中)、先発・松葉(左投)
楽天=1番・茂木(遊)、2番・オコエ(右)、3番・浅村(二)、4番・島内(左)、5番・ウィーラー(三)、6番・銀次(一)、7番・ブラッシュ(指)、8番・嶋(捕)、9番・田中(中)、先発・釜田(右投)
大きかったオリ西村監督の采配ミス
本戦の勝因、前述どおり釜田の好投、嶋をはじめ打線の援護が大きい。
投打のかみ合いこそ楽天側からみた最大勝因だと思うが、ここでは視点を変えて「敵軍・西村監督の采配」に迫ってみたい。
視点を敵軍側に移すと、オリックスの敗因は西村監督の采配ミスも大きかったことが見えてくる。
指揮官が楽天の弱点を突く采配を揮っていたら、イーグルスはもっと苦戦を余儀なくされていた。
オリックス先発は左腕の松葉。
その松葉は2回途中、6番・銀次への頭部死球で危険球退場になった。
この後、緊急登板でマウンドに向かったのが、新人右腕の荒西。
ここに西村監督の判断ミスがあった。
もしあの場面、先発経験を通算28試合もつサウスポーの山崎が来たら、もっとタフなゲーム展開になったはず。
結局、山崎は7回8回を投げたが、この時点で選択肢から外れたのは、前日2回投げたことが考慮されたのだろう。
本戦の山崎は2回1失点だったが、茂木の三塁打は経験不足のライト中川が拙守で単打を三塁打にしたもの。
あれがなければ失点は防げていたはずで、そう考えるとイヤな相手だった。
西村監督は今季のイヌワシ打線が対戦投手の左右で様相ガラリと変わることを把握していなかったのかもしれない。
◎楽天の左右投手別打撃成績〔前日まで〕
◎打者別の左投手打撃成績
上記表のとおり、右投手打率.265を記録するイヌワシ打線は、左投手だと.157の約1割減。
左投手からの長打は二塁打5本しかなく、OPSでは右投手.815に対し、左投手.468と極端すぎる明暗がそこにはあった。
打者別のサウスポー撃ち成績でも、上記表のとおり大半の面々がかんばしくない。
田中に至っては今季は左投手からヒットを1本も打っていない。
それは本戦でも更新され、遂に12打数ノーヒットである。
唯一孤軍奮闘しているのが茂木と、7打数3安打と気を吐く嶋ぐらいだった。
◎楽天の左右投手別打撃成績〔本戦〕
本戦のオリックスは先発・松葉のほか、四番手・海田、六番手・山崎と3人のサウスポーが登板している。
そこで本戦の左右投手別成績を出すと、
左投手・・・打率.176、OPS.616
右投手・・・打率.333、OPS1.183
楽天打線の成績は本戦でも明暗分かれたのだ。
2回の危険球退場シーン、どんな投手でも動揺隠せない難局だ。
そこでロングもできるプロ5年目サウスポーではなく、経験不足の新人右腕に任せた敵軍指揮官の投手起用に、楽天はけっこう救われた、楽になった部分はあったのだ。
JBの失態をリカバリーした嶋の先制2ラン!
視点を楽天側に戻そう。
左ではなく右を出した敵軍指揮官の継投ミスという「追い風」はあったとはいえ、緊急登板の代わりばな、ブラッシュが荒西の前に見三振に倒れて2死1塁、もし嶋も凡退し3アウトになっていたら、その後はどうなっていたか分からない。
あの場面で飛び出した嶋の先制2号2ランは、本当に価値大だった。
復活を期す釜田に力を与える援護点になった。
楽天打線に火をつける攻撃開始の号砲を担った。
今年はスタメンを足立に譲るケースも多い嶋本人にとっても、内外に存在を誇示する景気づけの一発になった。
もっと言えば、ブラッシュの失態をリカバリーする一閃にもなった。
これが大きいと思うのだ。
敵軍の混乱状態を逃さずに畳みかけることこそ戦いの常道。
にもかかわらず、JBは絶好機で見三振を喫した。
それもボール先行3-0。
打者圧倒的有利の状況からスタートした6球勝負での凡退劇だった。
この場面、JBは3-0から打って応戦している。
ゾーン真中近辺に甘く入る144キロ速球に対しバットを振って出たが、打ち上げてのファウル。
JBは3回2死満塁の打席でも3-0から同様球をスイングしにいきファウルしていた。
もっと言えば、3/29ロッテ戦(●E4-5M)の4回2死3,1塁でも3-0から打って三ゴ。
4/12ソフトバンク戦(○E4-2H)の4回無死2,1塁でも3-0から打って出るもあえなく空振り。
今年のJBは3-0からバットを積極的に振っていくものの結果が伴わない場面だらけだった。
3-0から打っていくのは良いけど、だったら結果を出してくれよ。
絶対的有利のなか結果が全くでないのは、狙いを絞りきれずにバットを振っているからなのでは?
そんな嘆きが強くなったJBの見三振の後、JBが仕留めきれなかった荒西の速球を、嶋が完璧に料理した。
ここにこそ、嶋2ランの価値がある。
5.1回、打者24人、球数103、被安打5、被本塁打1、奪三振3、与四球1、与死球1、失点3、自責点3。
復帰釜田の光った変化球操縦術
今年の釜田は手術後初の登板になった3/12春季教育リーグで2回1失点、3/16BC武蔵との練習試合では3回5失点と格下相手に炎上。
不安を抱えてのスタートになったが、イースタン開幕後は2軍で好結果連発し、3戦連続QSを記録。
イースタンで19回を投げて防御率1.42を残し、1軍に合流してきた。
その好調を本戦でもいかんなく発揮したと言えそうだ。
テンポの良さもさることながら、最も光ったのは、変化球の操縦術だ。
そのじつに73.8%を低めゾーンに集め、全アウト16個中、低め変化球で9個を獲得した。
73.8%という数値は、下記表のとおり、今季の楽天先発投手の中では最高値だった。
◎2018年 楽天先発投手 変化球低めゾーン到達率 ランキング
敵軍の足を封じ、牽制ゼロ
次にあげられるのは、リーグ最多23盗塁のオリックスを相手に、盗塁を仕掛けられやすい走者1塁で、足の速い走者を1塁に出さなかったことにつきる。
マスクをかぶる嶋は今季、敵軍走者に14企図14盗塁、盗塁成功率100%と1度も走者を刺すことができていない。
足での揺さぶりをどのように封じるのかな?と思ってみていたが、1塁に出した走者の顔ぶれはメネセス、若月、伏見、吉田正と、のきなみ足の遅い面々だった。
6盗塁の福田、5盗塁の西浦といった俊足打者を封じた。
西浦にはヒット1本を許したが、塁が詰まった状況だったため、足で揺さぶりをかけられることはなかったのだ。
そのため、この試合、釜田は1度も牽制球を投げていない。
人間の集中力にはどうしても限りがある。
有限の資源だとすると、どこにそのリソースを割くかでゲームメイクの優劣が決まると思う。
その点でいえば、本戦の釜田は塁上走者にほぼほぼ気を取られることなく、打者との勝負に専念できた。
2点リードながらも3回2死3,2塁、一打同点のピンチで3番・吉田正に対し、一気にギアを上げて最速147キロを連発した場面など、高いレベルで打者との勝負に集中できた象徴シーンになった。【終】
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