見出し画像

【2018総括】来季佳境を迎える嶋からの世代交代。鷲の捕手陣を振り返る〔守備・走塁編〕

前回の〔打撃編〕に続き、今回は〔守備編・走塁編〕をお送りします。

◎2014~2018年 楽天のチーム防御率

2014年 3.97 (3.60) 5位
2015年 3.82 (3.59) 6位
2016年 4.11 (3.65) 5位
2017年 3.33 (3.66) 2位
2018年 3.78 (3.90) 3位
※カッコ内はリーグ平均値

◎2018年 楽天捕手別の捕手防御率

嶋基宏:ギリギリの矜持を示した12年目シーズン

低迷したチーム防御率が好転に転じたのは、岸が加入した2017年以降。
昨年は三本柱の活躍と新戦力の台頭があり、リーグ2位の防御率は納得できるところだった。

しかし、今年の3位は正直、想像以上の健闘になった(※1)。

※1・・・投手本来の力量を示すFIPでもリーグ3位の好成績だった。

今年は則本や美馬、福山や松井など主戦級の不調が目立ち、GW最終日には早々に自力V消滅。
ともすればシーズン序盤で完全に瓦解する恐れのあるなか、チーム防御率6位の投手陣を必死に立て直し、8月中旬~下旬にかけて同1位まで巻き返したところは、投手陣の底力に加え、彼らを盛り立てた主将、正捕手・嶋の存在感を垣間見た思いがした。

全守備回の71.6%でマスクをかぶり、捕手防御率3.63は素晴らしい数字だ。

34歳を迎える今年は各所で精彩を欠く場面が目立ったものの、結果的に残した捕手防御率は「プロ12年目の長」を表明し、選手生命の晩年期で「ギリギリの矜持」を示した数字になったと感じる。

配球面では、内角要求割合の減少が挙げられる(※2)。
NPBが「打高新時代」に突入したことも影響したのか、2年前と比べると左打者26.9%→23.1%、右打者26.4%→18.4%に減った。

※2・・・嶋が打者の内角にミットを構えた割合。
「インコースは要求しないよ。何点取っても外角一辺倒のキャッチャー」。
嶋に対し、いまだにノムさんはボヤくが、決定的に違う。
嶋の内角要求割合は他捕手と比べて平均的なもの。
それを言うなら数年前のオリックス・若月のほうが判で押したように外角一辺倒だった。ただ、今年、内角要求割合が下がったのは事実。

一方、遅球を大胆に演出。
投手陣にカーブを4連投以上要求した回数が前年倍の24回に増えたのだ。

驚いたのは則本に6連投を要求したこと。
4月28日西武戦(●E3-7L)で外崎から栗山にかけてみごと三ゴ、空三振に退けた。
6月10日広島戦(●E0-3C)では得点圏に走者を背負った状況で、美馬に7連投させて松山、野間を連続アウトにした。

そして、盗塁阻止率だ。
4年連続3割未達の数字が今年3割半ばまでのV字回復に成功した。

2塁送球タイムは1.90秒台(※3)。
昨年来からの古久保バッテリーコーチとの練習が実を結び、スローイングの正確さが格段に向上。
捕ってからの動作を速くすることでタイムを縮め、正確な球を投げることでベースタッチの時間短縮を目指した。

※3・・・古田敦也さんの著書『フルタの方式』では「1.9秒以下だと一流クラス」、里崎智也さんの著書『高校球児に伝えたい!プロでも間違うバッテリーの基本』では「1.90~1.95秒以内が目安」とされている。
そのなか、嶋の1.90秒台は目安ライン。
4月25日ロッテ戦(●E3-7M)今季リーグ2位39盗塁の中村を刺した時は1.97秒。
4月26日ロッテ戦(●E0-1M)で韋駄天・荻野の二盗を阻止したときは1.93秒。
これを含めた嶋の名場面4シーンを以下の動画で確認できる。


昨年3個あった当該悪送球エラーは今年1個にとどまったことも送球の正確さを象徴する。
9者連続アウトの見せ場も作った(※4)。

※4・・・6月12日中日戦(○E5-1D)の7回大島二盗死を皮切りに、中日の平田、平田、DeNA・関根、日本ハム・杉谷、ロッテ・鈴木、藤岡、西武・秋山、ソフトバンク・上林の9者二盗を連続阻止した。

盗塁阻止の成績改善は、配球にも変化を、、、

※ここから後は有料エリアになります。本稿200円ですが、定期購読なら『Shibakawaの楽天イーグルス観戦記【2018後半戦】』がオススメです。

ここから先は

5,733字 / 6画像
この記事のみ ¥ 200

読者の皆さんにいただいたサポートで、さらなる良い記事作りができるよう、心がけていきます。