激増する平石楽天ボール先行3-0からの超積極的・強攻作戦
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こんにちは。
信州上田在住の野球好き、郷里の英雄・真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドに見える楽天ファンの@eagleshibakawaです。
開幕19試合を終えて現在リーグ単独1位に立つ楽天イーグルス。
Wエース不在にもかかわらず、投打のかみ合いが素晴らしく、特に今季は力強い得点力が印象的です。
そんななか、気になることがありまして。
皆さんの中にもお気づきの方いるかもしれませんが、ボール先行3-0からのヒッティングが多いんです。
NPBの場合、通常なら打者は“ほぼほぼ”待球する場面。
ベンチから「待て」のサインが出ることも多いです。
サインが出ない場合でも、打者がベンチを忖度し1球は“ほぼほぼ”見逃すシーンになります。
ところが、今年の楽天、3-0から打ちにいくケースが多い。
2013年以降の直近7年、楽天打者が当該カウントからバットを振りにいき、ヒッティングを試みた回数を調べてみました。
2013年~2018年までの平均は11回。
最大でも2013年の19回です。
ところが、今年は開幕19試合を終えた時点ではやくも7回も。
そもそも、ボール先行3-0という機会そのものが多く、今年は開幕19試合で46回もありまして、これは単純計算で143試合換算で346回になる多さなんです。
敵軍投手が好調楽天打線を警戒するあまり、カウントを悪くするのでしょうし、また、浅村選手を迎え入れ、金森理論も装備した新生・楽天打線もクサい球を良く見きわめています。そのため、ボール先行3-0というカウントそのものが激増しているのでしょう。
さらに、機会に占めるヒッティング割合も15.2%と例年以上に突出。
ここに今年の楽天打線の特徴の一端を見ることができます。
さて、下記に3-0の46機会を一覧表にしました。
皆さん、これをしばし眺めてみて気づくことあるでしょうか?
◎2019年 楽天打者のボール先行3-0からの対応記録
上記表をもう少し加工してみたいと思います。
そうですね、走者有の場面を抽出してみましょう。
今回、ヒッティングしにいった記録は、わかりやすいように、黄色の網掛けを施してみました。
ここでお気づきの方もいるでしょう。
今年の楽天打線が3-0から打ちにいった7回のケース、全て走者有の場面なんです。
走者なし3-0の機会19回中、バットを振りにいったケースはゼロ。
19回中19回全て見逃し、そのうち9回が四球出塁でした。
走者がいないため、まずは出塁したい。
3-0は四球になる可能性が高いため、ならば1球は見ていこう。
そういうチームの統一された明確な意志を感じます。
一方、走者あり3-0の機会27回中、25.9%に当たる7回で打ちに行ってます。
3-0というカウントは、投手にとって最もストライクが欲しい場面。
投手はもはやボール球を投げることができないため、ゾーンの際どいところは投げにくくなり、必然、ストライクを取るべく甘く入る球も増えてきます。
打者から見れば、カウントに余裕があるため、狙いを絞りに絞ることができますし、積極果敢に自身のスイングをすることが可能になります。
そのため、0-0から3-2まで12通りあるカウントの中で、打率が最も高く、本塁打率(本塁打÷打数)も最も高いのが3-0になります。
少し古いですが、古田敦也さん著書『フルタの方程式』(朝日新聞出版)で紹介されているNPB2004年~2008年のカウント別打率で、3-0は打率.413、本塁打率.095、いずれも最高値でした。
打者の打率はストライクが増えれば増えるほど(※)下がりますから、走者ありで3-0から1球むざむざ待球し、ストライクを取られるのはもったいない。
それよりも積極的に打って応戦し、チャンス拡大やランナーを返す攻撃を標榜したい。
そんなチームの意図を感じるのです。
※・・・厳密に言えば、2ストライクに追い込まれたら。1ストライクを取られただけでは打率はそんなに低下しない。
今シーズン、走者ありで3-0から積極的に打ちにいったことで、楽天の負けが消えたゲームがありました。
4/7オリックス戦(△E5-5)です。
この試合、楽天は先発・藤平尚真投手が乱調。
平石監督は藤平投手を2回でお役御免にし、3回から早々に継投作戦に入りました。
ところが、ブルペンリレーが上手く機能せず、石橋良太投手、高梨雄平投手が相次いで失点。
4回終了時に0-5と大差をつけられてしまいました。
その後、楽天は2点返すものの最終9回は3点ビハインドの状況。
マウンドは敵軍の抑え、増井浩俊投手です。
先頭ブラッシュ選手が空三振に倒れて1アウト。
打席に8番・足立祐一選手を迎えたところで、その後の「捕手・銀次」誕生となる代打・藤田一也選手の起用という平石マジックが炸裂しました。
そこから3点奪取の奇跡の同点劇は、みなさんの記憶に新しいところだと思います。
藤田選手、辰己涼介選手の連打で1死3,1塁を作り、田中和基選手のタイムリー内野安打で1点を返した楽天。
しかし、2番・茂木栄五郎選手が落差大のフォークに空三振、2アウトに追い込まれてしまいます。
そして2点差の2死2,1塁で3番・浅村栄斗選手。
一発出れば逆転サヨナラ、二三塁打が出れば同点もというシーン。
百戦錬磨の増井投手もさすがに打者が昨季パリーグ打点王というだけあり、警戒し慎重になりすぎたのでしょう、カウントが3-0になります。
ここでした。
次なる4球目、3-0からストライクをとりにきた147キロ速球を浅村選手がセンター返し!
これがタイムリーになり、後続の4番・島内宏明選手の同点打をお膳立てしたのでした。
もしあの場面、浅村選手がバットを振らずに3-1になっていたら・・・
あの感動の同点劇と、その後に起きたキャプテンマーク執念のマスクはなかったことでしょう。
最後に、誰が最も多く3-0から打ちにいっているのか。
これがブラッシュ選手でして。
走者ありで3-0になったブラッシュ選手の6打席で、4回打ちにいってました。
でも、ご覧いただいたとおり、4回とも結果が伴わない。
三ゴ、空振り、ファウル、ファウルと1球も仕留めることができていない。
そんな象徴的すぎるシーンが昨日の4/21オリックス戦(○E7-3B)にありました。
相手先発・松葉貴大投手が危険球退場した直後のシーン。
2回1死1塁でルーキーの荒西祐大投手が緊急登板した場面です。
その最初の打者がJBでした。
まさかのアクシデントで急遽マウンドに向かった荒西投手。
動揺隠せずといった態でボール先行3-0になります。
この後、JBは4球目の甘い144キロ速球を狙ったもののあえなくファウル。
3-1になり、次なる外角低めいっぱいを見逃して3-2に。
結局、最後は高め変化球にバットが出ず、見三振に倒れてしまいました。
その失態をリカバリーし、JBが仕留め損なった荒西投手の真っすぐを一発回答で左翼席に運んだのが、ぼくらの嶋基宏選手でした!
というわけで、長くなりましたが、今季の楽天、打者のボール先行3-0からの対応に注目です!【終】
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