ゴロアウト率の推移で診断する、楽天の前半戦守備力
内外野天然芝に生まれ変わった本拠地koboスタ宮城で、守備にどのような変化が見られるのか?
アマチュア時代に本人ですら思い出せないほど遊撃守備の経験がなかった新人・茂木を開幕ショートスタメンに起用、正遊撃手に抜擢した首脳陣の慧眼と茂木の頑張り。このことがチーム全体の守備力にどのような影響を与えているのか?
今季前半戦、内野守備に関しては特にその2つに関心を払ってきた筆者なのだ。今回はこの疑問をゴロアウト率、内野守備陣が飛んできたゴロをどれだけアウトにしたか?の割合、その推移で確認してみたい。
もちろん、外野陣がゴロを処理してアウトにすることもある。今シーズンも4月13日ロッテ戦(●E4-5M)の9回1死2,1塁、高濱が左前に打ち返したフライヒット性が「左ゴ」になった。処理した左翼ウィーラーが3塁へ送球。スタートが遅れた2塁走者・デスパイネを封殺、外野ゴロ凡退が生まれた。この1本も含めている。
ただし、転がせばその大半がアウトになるバント打球は対象外とした。
ご確認頂く前に、当ブログは前半戦を下記の4期間に分けて考えている。このことを念頭に入れて頂いた上で、それではゴロアウト率をチェックしてみよう。
開幕13戦・・・球団史上最高の開幕ダッシュになった4月10日までの開幕13試合。2013年以来の単独1位にも。
暗黒35試合・・・その直後に訪れた交流戦前夜のドン底期。藤田、今江、岡島と立て続けに故障離脱。10年ぶり9連敗、昨年より約1カ月半早い自力V消滅。
交流戦・・・ルーキーや内田など新戦力の躍動などで11勝7敗と勝ち越し、チームが息を吹き返したセリーグとの対戦。
リーグ戦再開・・・交流戦明け~オールスターまでの前半戦ラストスパート。4位に滑り込んだ。リーグ戦最初のカードで茂木右手流血事件が発生。
◎2016年前半戦 楽天守備陣のゴロアウト率の期間別推移
当方調査によると、今シーズン、楽天守備陣のゴロアウト率は73.2%になった。
シンクタンクDELTAが無料公開するBatted Ballを見ると、打者側の数値になってしまうのだが(残念ながら投手側の数値は公開されていない)、リーグ平均のゴロアウト率は前半戦終了時で72.8%だと言う。
そのため、楽天のゴロアウト率73.2%は、リーグ平均レベルと言えそうだ。
ちなみに、楽天の過去と比べてみると、当方調査で2014年は73.2%、2015年72.2%だった。そのため、今季はここ数年と同程度の数値で、際立って高くも低くもない。
昨年は開幕81試合時でエラーがチーム全体58個と多かった。特にショート後藤による消耗を余儀なくされ、美馬を始め投手陣は足を引っ張られるケースが目立った。その昨年と比べると、今年は同時点でエラー46個と10個以上も少ないのに、どうして?と思われるかもしれないが、実際には前掲した数値になっている。
まさに神ってた!! 開幕13戦のゴロアウト率
この4期間、最高値を叩き出したのは開幕13戦だった。
相手打者が打ち返したゴロ打球の実に80.1%を、楽天守備陣はアウトに変換した。
特に際立ったのは遊撃・茂木だ。(本塁から見て向かって)2塁ベースの左側に飛んだゴロがそのまま中前へ抜けていくのを許したのは僅かに2度だけ。数多くのゴロをさばいた。三遊間への動きも良く、また、ピッチャー返しの打球が投手のグラブを弾いてマウンド後方、遊撃前方にバウンド変わった打球に対してのバックアップ処理も上々だった。
チーム全体で見ても開幕13戦で内野ゴロ処理時にまつわるエラーは僅かに2個。昨年は同時期で10個を記録していたことを考えると、その少なさが実感できる。
この神ってた好守備が味方投手陣を大いに助けた。開幕13戦のチーム防御率が3.32の良値で、先発投手のQS率が84.6%、HQS率も61.5%と好成績だった背景の1つには、バックを守る守備陣のゴロ処理能力の好調さがあった。
また、この出来過ぎな好守備の背景には、久米島キャンプから取り組んだチーム全体としての天然芝対策が実を結んだこと、選手個々の頑張りによる技量のレベルアップ。それらに加えて、昨日の記事でも指摘したようにホームゲーム&デーゲームが大半だった「恵まれた試合日程」の影響も当然あったのだろう。選手各々がコンディションを維持しやすい状況も、軽快なプレーを生み出す源の1つになったはずだ。
チームが大失速した暗黒期には、ゴロアウト率も80.1%から70.8%へ急落...
しかし、その神ってた時期も長くは続かなかった。直後に訪れた暗黒35試合で楽天は最下位に転落。梨田監督休養一歩手前まで追い詰められるというチーム状況だったが、この時期、守備陣のゴロアウト率も足並みを揃えるかのように、70.8%まで下がった。
※この後、4期間別で診る併殺完成率や、ゴロ率を茂木離脱前と離脱後で比較したり、koboスタ宮城と他球場の比較、捕手別での比較などを試みています。ゴロ率から見た嶋の凄さと足立の課題点なども。
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