見出し画像

【戦評】チームの危機を救う「1996年産の四重奏」~6/8○楽天2-1中日

3連敗を阻止した新人の活躍劇

本戦スタメンの平均年齢は26.9歳。
年齢を大きく押し下げたのは、大卒新人カルテットだった。

3週連続の6連戦日程の1週目、チームは深刻な状況に見舞われていた。

下半身の張りを訴えるJBが2戦連続で完全休場。
島内は左膝フェンス激突負傷から復帰後も13打数2安打とふるわず、本戦スタメン外れ。

球団史上初の生え抜き1,000安打に王手をかけた銀次も先発メンバーから外れる異常事態のなか、チームの危機を救ったのが、下記の1996年産の四重奏だった。

2番・渡辺佳(左)、6番・辰己(中)、7番・太田(捕)、8番・小郷(右)。

2-1の接戦勝利の2得点は、いずれも彼ら新人の活躍によるもの。

先制の2回は先頭・今江が四球で出た後、ウィーラー見三振。
1死後、辰己がチャンスを押し開く左安で得点圏を作ると、太田死球で満塁。
小郷が三走生還の内野ゴロを打ち、先制点をあげた。

1-1の同点7回にあげた決勝点も辰己が活路を切り開いた。
先頭打者ツーベースで無死2塁を作ると、後続の太田がきっちりバント。
1死3塁の重要局面で小郷がスクイズを成功させ、辰己がホームイン。

タイムリーは生まれなかったが、新人による鮮やかな連携が、先輩の主戦級選手の苦境を救った。

ヒーローインタビューに呼ばれた小郷が口にしたように、ぼくは切磋琢磨や相乗効果で生まれる活躍劇は絶対にあると確信している。

オフに年度成績を眺めたとき、それらの輝きは埋没してしまうのだろう。
セイバー好きの野球ファンには軽視されがちな部分かもしれない。

しかし、野球も感情のある人間がするチームスポーツ。
こういう他者との関連性で紡がれる素敵な物語は、絶対にあると信じている。

これで交流戦成績は9位(パ最下位)、5試合2勝3敗。

全体成績は3位、58試合31勝26敗1分の貯金5。
各種戦績は直近10試合6勝4敗、6月4勝3敗、ビジター16勝14敗1分、連戦日程の4戦目以降6勝7敗1分になった。

ゲーム差は1位・ソフトバンクと1.0、2位・日本ハムと0.5、4位・西武と1.5、5位・ロッテと3.5、6位・オリックスと7.0としている。

両軍のスタメン

楽天=1番・茂木(遊)、2番・渡辺佳(左)、3番・浅村(二)、4番・今江(一)、5番・ウィーラー(三)、6番・辰己(中)、7番・太田(捕)、8番・小郷(右)、9番・岸(右投)

中日=1番・京田(遊)、2番・亀澤(二)、3番・大島(左)、4番・高橋(左)、5番・ビシエド(右)、6番・藤井(左)、7番・井領(右)、8番・武山(捕)、9番・ロメロ(左投)

.


新人4人スタメンは球団史上6度目

楽天の新人4人スタメン起用は、2016年5/31、6/2、6/3、6/4、6/12に吉持、茂木、足立、オコエが起用されて以来、球団史上6試合目になった。

ここで2016年当時を少し振り返ってみよう。

交流戦直前の12試合、チームは1勝12敗。
順位を4位から一気に6位まで下げ、12球団最速30敗に到達。

当時の河北新報には「悪夢 10年ぶり9連敗」「どん底象徴3番ウィーラー尻もち三振」「下向くな」の見出しが躍る、まさにどん底の状況で交流戦を迎えていた。

本拠地で迎えた初戦の5/31阪神戦(○E9-1T)。
負ければこの日にも自力V消滅という瀬戸際。

梨田監督は空気刷新を図るべく、スタメンに「2番・吉持(二)、3番・茂木(遊)、8番・足立(捕)、9番・オコエ(中)」を起用。
ルーキー4人がスタメンに名を連ねるのはNPBの長い歴史の中でも珍しく48年ぶりの珍事になった。

この日、茂木は3安打、オコエと吉持は2安打、足立も犠飛で1打点。
その足立は6回1死までノーヒットノーラン投球でこの年初の完投勝利をあげた則本を好リードした。

新人4人起用された5試合でチームは4勝1敗と息を吹き返した。
交流戦直前12試合で1勝11敗のチームが、交流戦初戦以降の12試合は7勝5敗。
この年、結局、楽天は5位だったが、最下位を抜け出し一時は4位まで浮上するきっかけを、新人が作った。

辰己、渡辺佳、太田、小郷の新風も、3年前と同じくチームを救う存在になってほしい。

恐るべきポテンシャル

相手先発は左腕のロメロ。
平均150.6キロのファストボールが全体の70%近くを占める豪腕投手だった。

MLBでは153キロ異常のスピードボールは昨今チーズと呼ばれている。
そんな球を19球(全体の17.3%)も投げてくるパワーピッチャーで、これがまた荒れ球スタイルなのだ。

捕手の構えたミットに来るほうが珍しく、ゾーンに甘く入ることもしばしば。
それでも「球が速いは七難隠す」で球速と球威で押しきり、真っすぐだけで11個の空振りを奪取。
真っ直ぐを打たせてファウルで稼いだストライクも11個を記録し、楽天打者はロメロの速球の前に17打数3安打とタジタジだった。

同じ剛速球でも、打者の体感は右腕よりも左腕のほうが速く感じる。
球界で言われる定説が、本戦の楽天打者を苦しめたのだろう。

速球OPS.867と速球に強い浅村も、ロメロの150キロ超えの前に中飛、左飛、右飛と完全に封じられ、ウィーラーも3打席連続真っすぐで空三振に倒れてしまった。

そのなか、唯一の好対応をみせたのが、、、

※ここからは有料エリアでどうぞ!
今年も楽天の試合評/コラムをnoteに綴ります!
本稿単売もしていますが、noteマガジン『楽天ファンShibakawaの犬鷲観戦記【2019前半戦】』での定期購読のほうがお得です!
まぐまぐメルマガでも同内容を配信中

ここから先は

2,424字 / 1画像
この記事のみ ¥ 150

読者の皆さんにいただいたサポートで、さらなる良い記事作りができるよう、心がけていきます。