【戦評】 鷲の不動4番打者が作った「隠れた敗因」~7/2●楽天5-8ロッテ
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一矢報いた9回裏
梅雨の晴れ間に覆われた仙台地方、楽天生命パークのある仙台市宮城野区は昼過ぎに最高気温29.6度を計測する真夏日一歩手前の1日になった。
プレイボール時も気温は25度を下回らず、湿度も71%。
大変蒸し暑いなか行われた3時間30分の攻防は、イーグルスが5-8で敗戦している。
ゲームは2回から動いた。井上とロメロ、両軍主砲の2ランの応酬で開幕した同3回戦は、3回に清田に勝ち越し打を許してからは終始、敵軍ペースだった。
ロッテが継投作戦に入った6回以降、楽天は毎回得点圏のチャンス。しかし、6回無死2,1塁でロメロが6-4-3、7回1死3,1塁で鈴木も6-43と2度のゲッツーで逸機した。
それでも、5点差の9回、鴎の守護神・益田の前にあっさり凡退せず、2点取ったことは今後につながる。
先頭銀次が中前軽打で出塁。1死後に辰己による左中間・東京インテリア直撃のスリーベースで生還。
その後の1死3塁、主将・茂木の一ゴが、これまた良かった。
さすがに5点差をひっくり返すことはできない状況だ。そこで大切になるのは、3塁走者を生還させて5点目を入れること。
敵内野陣の守備体形を踏まえて、内角球に詰まっても抜かりなく一ゴを転がし、しっかり三走をホームに呼び込むことができた点は、キャプテンマークの仕事として評価できる。
これで直接対決は2勝1敗に。チーム成績は2位、8勝4敗の貯金4。
ゲーム差は1位・ロッテと1.0、3位・西武と1.0、4位・日本ハムと2.5、5位・ソフトバンクと3.5、6位・オリックスと5.0としている。
◎両軍のスタメン
ロッテ=1番・荻野(中)、2番・角中(指)、3番・清田(左)、4番・レアード(三)、5番・マーティン(右)、6番・中村(二)、7番・井上(一)、8番・柿沼(捕)、9番・藤岡(遊)、先発・岩下(右投)
楽天=1番・茂木(遊)、2番・鈴木(三)、3番・ブラッシュ(指)、4番・浅村(二)、5番・島内(左)、6番・ロメロ(右)、7番・銀次(一)、8番・太田(捕)、9番・辰己(中)、先発・塩見(左投)
◎試合展開
塩見、自己最悪の6四球
4.2回、打者23人、球数101、被安打6、被本塁打1、奪三振2、与四球6、失点6、自責点6。
僕らは珍しい光景を目撃した。
ここ2年間の与四球率はいずれも1個台。
今季開幕時点でキャリア通算2.01を誇る塩見である。
四球を滅多に出さない左腕が、2016年3/26ソフトバンク戦に並ぶ自己ワーストの1試合6四球。ストライク率も54.5%と、かなり低い値を記録していた。
これで今季成績は0勝2敗、9.1回、被安打13、被本塁打3、奪三振4、与四球6、11失点になった。
持病の腰痛がパフォーマンスを下げているのか、球威や切れに乏しい。
そのため投球回を超過する被安打を許し、簡単にボール球を見きわめられてしまうと思う。
前年9.1%から下落した空振り率5.8%も、球威・切れ下落の有力な証拠の1つ。前回6/25●E5-8Fは44球目まで空振りゼロ、2ストライク以降ファウルが16本と粘られたことも、それを裏付ける。
この日もマーティン以外の左打者には外のスライダーに手を出してもらえない場面も複数見受けられた。
1試合6四球の原因は前回の反省も大きい。
ファイターズに対し良い投球ができず「やはり(ストライクゾーンの中に)集まり過ぎていた」と悔しさをあらわにした自己分析を踏まえ、本戦では際どいところを狙いすぎた。
それでも、いつもの状態ならコースに投げ切ることができる。
それができないということは、コンディションは万全ではないのだろう。
失った生命線
対戦打者23人中、右打者は15人だった。
全体の65.2%を占めた右打者との対決で被出塁率.533を許したことも敗因の1つだ。
塩見vs右打者といえば、カギを握るのは、内角狙い投球である。
右打者の懐を突くクロスファイアの投球はルーキーイヤーから一環して塩見の有力武器、生命線を担ってきた。
たとえば、右打者対戦時、2018年は30.4%が、2019年は25.4%が内角狙いピッチになっている。
前回も右打者46球勝負の30.4%に当たる14球が内角狙い。
しかし要求されたインコースへ投げ切ることができず、外角・真ん中に到達する球が目立ち、そんな失投を大田と中田にホームランにされてしまった。本人も「内に投げ切れなかったところを修正したい」と口にしていた。
ところがだ。
本戦では右打者60球勝負中、内角狙いはたったの6球。
そのうち4球は四球を含むボールカウントになっており、内に投げ切れなかったし、それどころか、そもそも内に投げなかった。
これが本来の投球リズムを微妙に狂わせる素になったかもしれない。
右打者との対戦では慣れない外一辺倒になり、ピッチングに幅をもたせることができず、じりじりと自らの首を自ら締めるかたちになった。
足で揺さぶりをかけられた珍しい瞬間
自らの間合いで勝負できなかった象徴的シーンといえば、2-2の同点で迎えた3回1死1塁、角中の打席も指摘できる。
1塁走者は先頭打者四球で出した藤岡。
角中への2-1からの4球目の直前に1塁へ3球連続で牽制を入れたのだ。
この光景はかなりのレア。
2017~2019年の直近3年間、塩見が走者に3球立て続けに牽制を入れたケースはたったの1度、2018年5/27ソフトバンク戦の4回2死1塁で1塁走者・塚田に対してのものだけだからだ。
塩見といえば、高速クイックの持ち主。
その特技を活かし、例年走者の仕掛けを防いできた。
しかし、本戦では久しぶりに塁上のランナーに集中力を削がれるかたちになった。
この後、4球目でカウントを稼ぎ2-2とし、5球目にランエンドヒット。これはファウルになって事なきをえたが、6球目を中前に弾き返され、3,1塁とピンチ拡大。結局、藤岡は後続のタイムリーで本塁生還している。
不動の4番が作った「隠れた敗因」
最大の敗因は、5回途中6失点と試合を作れなかった先発・塩見にある。
しかし、敗因の3番目か4番目あたりに入ってきそうなのが、じつはセカンド浅村の守備だった。
塩見以下、楽天投手陣が許した8本のヒットのうち、3本のゴロ安打が浅村の持ち場に転がる当たりだった。
3回1死1塁、角中の中安
3回1死3,1塁、清田の右安(打点1)
7回先頭、中村の右安
3回角中の中安は2塁ベース右、セカンド左を突破したもの。打球を追った浅村の逆シングルで伸ばしたグラブのわずか下を抜けていった。
同じく清田による1,2塁間突破の右安も、追いかけた浅村のすぐ先。7回中村の当たりは追いつけそうなのに及ばず、足元付近を突破されている。
7回中村のヒットは点につながらずに済んだものの、3回の2本は相手の勝ち越し点につながっている。
連戦日程の疲労によるものか、この季節特有の蒸し暑さによる影響か、身体にキレがなく腰高に見えてしまう。
そう言えば、10連敗を喫した昨年6/23~7/8の時期も、セカンドの右に左にとゴロで射抜かれるケースが目立っていたことを思い出した。【終】
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