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ジビエ料理の褒めかた

2月14日の昼休みに、とある女性職員が飼育事務所でイノシシ肉のチャーシューとクマ肉の燻製を振る舞ってくれました。

(もちろん飼育個体のものではなく、付き合いのある猟師さんから譲り受けた野生個体の肉で作ったそうです。彼女は野生動物と狩猟や獣害の問題に関心を持って取り組んでおり、野生動物の肉を口にするのも面白半分や興味本位ではないことを申し添えておきます)


左がイノシシのチャーシュー、右がツキノワグマの燻製

バレンタインデーに職場で配るものとしてはなかなか粋なチョイスだと思います。

さて、そんなジビエ料理を口にした人々の感想は、

・思ったより臭みがない
・豚肉みたいで食べやすい
・噛み応えがある
・言うほど癖がない

出典:職員

などなどで、おおむね高評価でした。私もわりと美味しく頂きました。

だがしかしです。これらの感想を分析してみると、

・思ったより臭みがない・・・→少し臭みがある
・豚肉みたいで食べやすい・・・→食べやすくて食べ慣れた豚肉に近い味だ
・噛み応えがある・・・→硬い
・言うほど癖がない・・・→まあまあ癖がある、食べ慣れている味とは違う

出典:職員

という意味です。

「ジビエには『においと癖があり、硬い』という先入観があり、実際そうだったが先入観を上回るものではなかった」という、マイナスから出発した上でポジティブな言葉を選んだ感想です。

結局は、スーパーで売られている牛肉豚肉鶏肉の方が美味しくて口に合うのです。食べ慣れていますし、何よりそのように品種改良されているので当たり前です。

なのでジビエを、「それら流通している食肉にいかに近いか」という尺度で判断すると、ただの割高で労力のかかる割に比較的美味しくない肉という評価に落ち着いてしまいます。

そのような扱いをしているうちは、ジビエを特産品にして町おこし!や、ジビエで有害獣対策!や、ジビエの流通経路を確保して猟師の高齢化・減少に歯止めを!という行政施策はまず失敗するでしょう。

だって割高で比較的美味しくないんだもん。

物珍しさや目新しさから一度は口にするかもしれませんが、日常生活の中でリピートするかと言われたら「比較的美味しくない上に割高な肉」に生活費を割く人は多くないでしょう。

それでも買う!という人は、猟友会や害獣駆除に対して一定の関心と理解を持っており、それらの活動に課金・応援する意味で購入している、ごく一部の意識の高い人、というのが現状だと思われます。

かといって、ジビエを「どれだけ普段食べている肉に近いか」ではなく、「ジビエらしい独特の臭みや食感や癖を前面に出して真っ向勝負」しても、やはり一般に受入れられる商品開発は難しいでしょう。

結局、ジビエにはあまり脚光を浴びせて里山の救世主のように祭り上げることをせず、現状通り仲間内で地産地消する以外に道はないのだと思います。

取り組み方としては、年一回くらい小中学校の給食にジビエ料理を出して、里山や狩猟を取り巻く様々な問題を考えるきっかけにする、というレベルの活用は可能かもしれませんが、それも持続可能かは自治体のサイズにもよると思われます。

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